【122】 楚蟹と鱈場蟹
(*写真は十脚目ヤドカリ下目タラバガニ科タラバガニ属タラバガニ)
ズワイとは、細い木の枝の大和言葉「楚」の転訛とされる。タラバはタラの漁場近くで獲れるから鱈場。
ズワイガニは十脚目ケセンガニ科ズワイガニ属ズワイガニで、生物学名だが、雄雌、地方により呼称が異なる。
雄:
芳蟹(庄内)
越前蟹(越前)
間人蟹(京丹後)
松葉蟹(山陰)
雌:
香箱蟹(越前)
勢子蟹(京丹後・山陰)
房総や九州でのマツバガニは、十脚目オウギガニ科マツバガニ属マツバガニ。生物学名ではズワイガニとマツバガニは別種である。
オウギガニ科のスベスベマンジュウガニは、フグと同じ猛毒のテトロドトキシンを持つ。
タラバガニは、十脚目ヤドカリ下目タラバガニ科タラバガニ属タラバガニ。第5脚が小さくて見えにくい、雌の腹が左右非対称ゆえ、ヤドカリの仲間とされている。
和名・チャイナ名・英名では、
ズワイガニ・ 雪蟹・Snow crab / Queen crab
タラバガニ・堪察加擬石蟹・Red king crab / Kamchatka crab
英 Crabby:カニっぽい=イライラしている。
ズワイガニ、タラバガニを勝手に巨蟹と分類する。世界では巨蟹を食べる文化はなかった。日本でもつい最近である。巨蟹は水深200m以上の海底で、水温2度以下、塩分濃度が10%以上(一般的には3.5%)のコールドプールと呼ばれる海底塩水湖(Brine Pool)に好んで棲む。
この海域で漁が出来るようになったのは大正時代以降、底引網漁の技術が確立した後だ。そして巨蟹=祝いごとのご馳走、になったのは昭和40年代以降であり、日本食文化としては新参物である。
西洋では巨蟹はタコ同様、悪魔的なイメージがあり食文化はほとんどない。あるのはロブスターやオマール(ウミザリガニ)である。
ベーリング海、オホーツク海の巨蟹漁は日本への輸出産業である。日本市場の巨蟹の半分以上はロシア、アメリカ、ノルウェーからの輸入品であり、北海道で茹でたり解体されたりしたら、それらが北海道産を名乗るだけ。日本での産地表記は最終加工地だから、に過ぎない。北海道で獲れる量はごく僅かだ。
西洋の中でも比較的、魚介を何でも食べるギリシャですらカニ食文化はない。化け物の巨蟹座のせいか。また西洋ではカニは有毒、ウィルス、寄生虫などのイメージが強い。ズワイガニの甲羅にはカニビルが卵を産み付け、見た目にもキモい。
南欧のイタリア、フランス、スペインではわずかにカニ食文化があるが、それは巨蟹ではなくイチョウガニのような中型である。フレンチのビスクは、カニの身ではなく出汁がメインだ。
なおカニミソを食べる文化は世界でも日本くらいしかない。チャイナでも上海蟹(チュウゴクモクズガニ)の食文化はごく限定された地域である。かつての和名はシナモクズガニ(支那藻屑蟹)であったが、1970年代に言葉狩りにより改名させられた。このカニは、欧米では侵略的外来種の筆頭とされるほど警戒されている。
