[映画]『ワーキングマン (デヴィッド・エアー監督/2025)』

データ
原題: A Working Man
監督: David Ayer
製作年度: 2025
製作国: アメリカ=イギリス
アスペクト比: 1:2.39f
時間: 1h56
公開日: 2026/01/02
鑑賞日: 2026/01/10
配給: クロックワークス
はじめに
2026年の映画館初めは昨年同様にジェイソン・ステーサム主演映画。ステーサムからの福袋的な気分でウキウキしながら観に行った。10日ということで既に正月気分は消えているが、3連休の初日ということで映画館は賑わっていた。
概要
ステーサム扮するレヴォン・ケイドはシカゴで建設現場の現場監督として働いている。レヴォンは英国海兵隊の特殊部隊に所属していたが、出兵中に妻が自殺したことがきっかけで兵役を退き、いまの建設会社に職を得た。一人娘のメアリー(アイラ・ジー)は義父のジョーダン・ロス(リチャード・ヒープ)に引き取られている。レヴォンは平和主義の義父に嫌われていてメアリーとは週に一度しか逢うことができない。
レヴォンが所属する会社はジョー(マイケル・ペーニャ)と妻カーラ(ノエミ・ゴンザレス)、娘ジェニー(アリアーナ・リヴァス)による家族経営で、レヴォンは彼等と家族付き合いをしている。レヴォンは職場で部下に慕われる優秀な現場監督だった。
そんなある日、ジェニーが友人たちと出かけた酒場で行方不明になる。警察には届けたがあてにできないと考えたジョーはレヴォンにかつての特殊部隊時代の経歴を見込んで娘を捜してほしい、と頼む。娘のためにも軍隊生活を忘れたいレヴォンは一度は断るが、戦争中に失明しいまは田舎で隠遁生活を送るかつての戦友ガニー・レファティ(デヴィッド・ハーパー)に相談する。そしてガルシア一家のために再び銃をとることを決心する。
レヴォンはジェニーが消息を絶ったバーに向バーに向かいドラッグの売買をしているバーテンダーのジョニー(デヴィッド・ウィッツ)に目をつけ、自宅まで尾行する。そしてジョニーを尋問するが、そこへ仲間二人が合流して銃撃戦になり、ジョニー含む三名は死亡する。
レヴォンはジョニー宅そばで車の中から見張っていると、ダーニャ(グレッグ・コルパクチ)とヴァンコ(ピオトル・ヴィトコフスキー)に連れられてウォロディミル・コリスニク(ジェイソン・フレミング)がやってくる。そしてレヴォンはウォロディミルの屋敷まで尾行する。
レヴォンはウォロディミルの屋敷に入り屋内プールで尋問をする。ウォロディミルはロシアのマフィア組織"プラトヴァ"の幹部だったが、レヴォンの目的が計り知れず困惑する。しかしレヴォンが失踪した女性を捜していることを知ると合点がいったのか、激昂しロシア語で喚きたてる。レヴォンはこれ以上の情報は引き出せないと判断し、椅子に縛り付けたままプールに突き落とし溺死させる。
レヴォンは録音していたウォロディミルの話を翻訳し"ディミ"が犯人であることを知る。
一方、ジョニーやウォロディミルの死を知った組織のトップ、シモン・ハルチェンコ(アンドレイ・カミンスキ)は、息子のダーニャとヴァンコに犯人の殺害を命じる。
レヴォンはDEAにいるかつての戦友ギャレット(ウェイン・ゴードン)から"ディミ"の情報を入手する。"ディミ"はウォロディミルの息子で組織のはみ出し者ディミトリ(マクシミリアン・オシンスキ)のことだった。レヴォンは接触する方法を聴くと、とあるバーを知らされる。
レヴォンはバイカーが屯するバーへ向かう。ここでダッチ(チディ・アジュフォ)がロシアの組織と組んでドラッグ取引を仕切っていた。レヴォンはドラッグディーラーの振りをしてダッチに接近する。レヴォンは信用されなかったが、軍歴のおかげで元陸軍空挺部隊員のダッチの信頼を得る。
ダッチはレヴォンにヴァイパー(エメット・J・スキャンラン)とアルテミス(イヴ・マウロ)の指示に従うように命じる。ヴァイパーとアルテミスは実はジェニーの誘拐犯でもあった。
レヴォンはヴァイパーとアルテミスからドラッグを受け取り、ダッチにさらに取引量を増やしたいと伝える。こうしてレヴォンはようやくディミトリと対面し、取引を行う。
一方、ジェニーは売春組織売春組織へ連れていかれード(ケネス・コラード)のもとに送られる。組織はジョニーやヴァイパーがバーで隠し撮りをした写真を見て気に入った顧客の注文を受け、ヴァイパーとアルテミスが拉致して送り届けるという仕組みだった。しかし勝気なジェニーはブロワードの頬を噛み切る。ヴァイパーとアルテミスはジェニーを連れ戻し、組織の指示で殺害することとする。
が、ジェニーは隙をついて車から逃げ出し森を逃走する。二人をまいたところでやってきたパトカーにジェニーは助けを求める。しかし乗っていた警官フォン・トラスク(ムキ・ズベス)とデトワイヤ(アレクサンダー・バラク)は買収されており、ジェニーはヴァイパーとアルテミスのもとへ連れ戻される。そして二人がジェニーを殺そうとしたタイミングでブロワードから連絡が入り、再度、連れていくことになる。
一方でレヴォンはダッチのバーを車の中で見張るが、その様子は監視カメラで捉えられており、レヴォンに気づいたアルテミスの連絡でダーニャとヴァンコが駆け付ける。レヴォンは車を捨てバイカーのバイクを奪って逃走し、森の中でのカーチェイスとなる。
そしてバイクが転倒しレヴォンは二人に捕まり、ヴァンに詰め込まれる。が、移動中に反撃し、ダーニャとヴァンコを殺害し逃亡することに成功する。
息子たちを殺されたシモンは他の組織のボスを招集し会議を行う。シモンは組織からネスター(リッキー・チャンプ)とカープ(マックス・クロス)の二人の殺し屋を借り受け、レヴォン殺害の指示を出す。ネスターとカープはディミトリのもとを訪れ、命が狙われていることを警告する。ディミトリはドラッグ契約を結ぶ際に撮影したレヴォンの免許証をもとに、レヴォンの個人情報を入手する。
レヴォンのもとに娘メアリーから連絡が入り、学校に迎えに来るはずの祖父ジョーダンが来ないと聞き、メアリーを連れて向かうとジョーダンの屋敷は火に包まれていた。レヴォンは炎の中、屋敷に入り、手足を縛られていたジョーダンを見つけ救い出す。
ジョーダンから組織がレヴォンを捜していたという話を聞くと、レヴォンはガーニーと妻ジョイス(ジョアンナ・デレーン)にメアリーを預け、ガーニーから武器を提供を受ける。
レヴォンはディミトリを痛めつけジェニーが連れていかれた郊外の屋敷に案内させた後に射殺する。そして屋敷に侵入する。武装した警備員たちを次々と殺していくレヴォン。ダッチ率いるバイカー軍団もレヴォンに襲い掛かるがレヴォンに倒されていく。そしてダッチも殺したレヴォンはメアリーのいる部屋へ。部屋にいた"顧客"ブロワードとヴァイパーはレヴォン、そしてアルテミスはジェニーの逆襲を受けて命を落とす。
たった一人に部下を殺されたシモンが茫然と立ちすくむ中、レヴォンはジェニーを連れてバイクで去っていく。シモンは組織に復讐のための協力を求めるが、レヴォンを"悪魔"として怯えていた組織はこれ以上の波及を恐れ、シモンにレヴォンへの手出しを禁じ、言うことを聞かない場合はシモンが組織によって殺される、と警告される。
レヴォンはガルシア家にジェニーを連れ帰り、そしてガーニーのもとへ娘メアリーを迎えに行く。
感想
『ビー・キーパー (2024)』同様に監督がデヴィッド・エアーだが、今回はかなり雑に感じた。
チャック・ディクソンの小説「Levon Cade」シリーズの第一弾「Levon's Trade」が原作とのこと。DCコミックスを始め、各コミックでの原作者として知られているが、2014年から同シリーズに着手し始めた。解説を読む限り、身分を隠して一般市民として生きていた男が犯罪に対峙しその隠れた能力を発揮する、というオーソドックスな設定らしい。ただ成人指定となっており、かなり過激な描写があるのだろう。既に12作目「Levon's Scourge (2024)」が出版されており、大人気シリーズとなっている模様。
この小説の映画化権を取得したのがシルヴェスター・スタローン。当初テレビシリーズを検討していたが映画用にリライトし、ジェイソン・ステイサムに声をかけ、さらにステイサムに合わせて脚本を直したとか。そしてステイサムはエアーに声をかけて映画化となった。
雑だと感じたのは、例えば、同じ展開を繰り返すあたり。冒頭のバーテンダーのジョニーを尾行して家に行き尋問しようとするがやってきた仲間含め3人とも片付けてしまう。その後、今度はボスのウォロディミルがやってきて、また尾行して、尋問して、殺して…という平坦な流れは小説の通りなのか、スタローンのシナリオなのか。
『エクスペンダブルズ (The Expendables)』三部作もスタローンはシナリオを担当しているが、起伏のあまりないズルズルした展開で、この設定ならもう少し面白くしろよ…と言いたくなるような不満を持った。
敵側も部下がやられたらまた次の部下を出し、やられると次を出し…と言った単純な繰り返しで途中で若干、飽きてきた。
DEAの扱いもその場限りとなり、娘メアリーに再会まで持っていろと言っていたイギリス国旗の切れ端も再会時には現れなかったり。
『ビーキーパー』の時はRPG的な単純構成が功を奏したが、『ワーキングマン』は原作構成に引きずられたか、途中の麻薬組織との関りなど回りくどく、また"プラトヴァ"の組織もスケールや風格があまり感じられなかった。
ちなみに"ブラトバ (bratva)"はロシア語で"同胞"や"兄弟"の意味だが、ソ連崩壊後に現れたマフィアの総称らしい。ただその名を冠した組織もあるらしく、大丈夫か?と心配になった。
一方でアクションシーンとなると生き生きするのはステイサムならではだし、そこはエアー監督の技量なのだろう。安心して観ることができた。ジェニー役のアリアーナ・リヴァスが言うように、この映画はジェイソン・ステイサム、というジャンルの映画なのだろう。
アリアーナ・リヴァスも誘拐されてメソメソメソメソしているだけではなくいて逃げ出そうとしたり、売春客に思いきり噛みついたり、そして最後のアルテミスとの対決など、アクションシーンの切れ味の良さに感心させられた。相当に訓練を積んだらしい。
現場をなめるな
近頃では非常に秀逸な惹句だったが、映画でステイサムが現場監督をやっているシーンは数少ない。映画を観る前は工事現場を舞台にしたアクション映画かと思っていたが、途中でその設定は意味を成さなくなり、そういう意味では正当な"ステイサム映画"なのだろう。要は"現場監督"という設定はただ物語のきっかけのためにだけ存在し、物語が動き出したらもはや必要としなくなる。
その意味では若干、配給会社は狙いすぎでは…と思った笑
こういう設定はその昔のセガールの『沈黙の戦艦 (Under Siege/1990)』から顕著になってきたように感じる。戦艦ミズーリのコック長は実はネイビーシールの元指揮官だった、という驚愕の設定は、セガールが暴れ出してからはあまり必要を成さなくなっていたと思う。
そう言えば、我が国にも小料理屋の料理人の別の顔は凄腕の殺し屋だった…という名作もあった。
タイトルの"A Working Man"は単なる労働者よりも肉体労働者の意味合いが強いらしい。原作では過去のキャリア(特殊部隊)を隠して密かに生きている…という設定だが、二作目以降は他の現場に移るか、他の業種に変わるのだろうか。
さいごに
とはいえ…あまり細部を気にせずに2時間、頭を空っぽにして楽しむのが正解だろう。また来年もステイサムからのお年賀を期待したい。
追記 (26/01/12)
ロシアンマフィアが英語を喋る違和感がちょっとだけ気になった。主な市場が"字幕を読みたくない"アメリカなので仕方がないのかもしれないが、せめてマフィア同士の会話の部分だけでもロシア語で通して欲しかった。大した話ではないのだが、こんな小さな積み重ねが実は大事なことなんです。

