"赤ちゃん"にだって、『イヤ』と『スキ』がある
生後8ヶ月の息子が、おかゆを全力で拒否するようになった。
スプーンを近づけると、口を大きく開けてくれる。
でも、"それ"と気づいた途端、
いやああああぁぁぁあああぁ!!!!!!!!!
口におかゆを含んだまま、眉間にぎゅっとシワを寄せ、大声でのけぞる。
こうなるともう手が付けられない。
膝のうえで暴れる彼を逃すまいと、頭部を支える左腕に余計な力が入り、私の大してない前腕筋が悲鳴をあげた。

つい最近まで、私にとって息子は"赤ちゃん"でした。
泣いて、飲んで、寝る。
ぷにぷにほっぺの愛くるしい生きもの。
もちろん、0歳8ヶ月の彼は今でも紛れもない赤ちゃんです。
でも最近は、ただ泣くのとはワケが違う、小さな体ぜんぶを使った全力の『イヤ』をするようになりました。
息子の『イヤ』なもの
5ヶ月から離乳食をスタートした息子は、何でもよく食べる子でした。
そんな息子を私は、好き嫌いがなくていい子だねぇと親バカ全開で褒めちぎっていました。
ところが、7ヶ月の終わり頃からおかゆの食いつきが悪くなり、8ヶ月になった今では「あ、嫌いなのね」と確信するように。
たぶん、それまで"なんとなく"食べていたものが、成長とともに味覚が発達して、好みがハッキリしてきたのでしょう。
「味がないからイヤなのか?」と考えた私は、おかゆにだし汁を入れたり、野菜を混ぜこんだりとあれこれ試しましたがいずれも玉砕。
観念して、おかゆはしばらくお休みです。
ここまでは、"味の『イヤ』"の話です。
息子にはもうひとつ、"されるのが『イヤ』"があります。
息子には、お着替えと全身を保湿する時間が朝夕で2回あります。
彼の定期イベントのひとつなのですが、これがまあ大変。
袖に腕を通そう、顔に保湿クリームをつけようものなら、のけぞるわ脱走するわで大騒ぎ。
"味が気に入らない"とはまた違う、"自分がされること"にはっきり「イヤ」と訴えかけてくる。
これはもう、好き嫌いを超えた立派な自己主張です。
『スキ』を見つけたとき
『イヤ』と同じくらい、『スキ』もはっきりしてきました。
「ずりばい」をマスターして、晴れて自由の身となった息子。
新しい"ターゲット"を見つけたときの反応も変わりました。
これまでは、なんでもかんでも口に入れる。
それが今は、まず手を伸ばして「これはなんだ?」と吟味するように。
おもちゃを掴むときもそう。
手元のものをとりあえず握っていたのが、今では目をつけたひとつを(道中のほかのおもちゃには目もくれず)、わざわざ遠くまで取りに行きます。
さらには、絵本が入ったラックをガザゴソとひっかきまわして、気に入った一冊をドヤ顔で引っ張り出すようにもなりました。
気になるものは自分の手で確かめ、『スキ』とときめいたものには自分の足で向かう。
今日も『スキ』に一生懸命な息子の後ろ姿は、とても楽しそうです。
『スキ』が広がる先に
彼の『スキ』は、ついに大人の世界にまで広がってきました。
おむつ、おしりふき、保湿クリームといったベビーグッズにはじまり、最近はロボット掃除機、空気清浄機といった大人の課金グッズにまで。
ちなみに、保湿クリームを"塗られる"ことは嫌なのに、その"ボトル"には異様に執着しており、目を輝かせて掴みにいきます。
塗られるのは『イヤ』、でもボトルは『スキ』。
ムズカシイ。
決して安くはない家電製品が、容赦なくバシバシ叩かれるのはさすがにいただけない。
「あかんよ」と、おもちゃやベビーグッズで釣ろうとしても、息子は新しい"おもちゃ"に夢中になっている。
いよいよ目が離せなくなってきた。
これまでは、おもちゃが散らかったプレイマットのうえこそが息子の世界でした。
親が用意した、子どものための安全な領域。
それが今では、抱っこからマットにおりるなり猛スピードのずりばいで(しかもとびきりの笑顔で)、大人の世界を侵食しようとする。
親としては、そんな息子の成長を喜ばしいと思う反面、「おいおい、ちょっと待っておくれよ。早すぎないかい」とストップをかけたくもなる。
ふと、今よりもふっくらとしていた頃の息子を思い出す。
仰向けのまま泣くことしかできなかったあの頃。
『イヤ』なものと『スキ』なもの。
好き嫌いを知り、自由に動けるようになった息子の世界は、少しずつ広がりはじめたんだと思います。
そしてそこは、絶えず彼の好奇心をくすぐってくる、なんとも魅力的な場所なのでしょう。
保護者として目が離せないのはもちろんですが、そんな場所にいる息子が少しうらやましい。
そういえば、毎日一緒に見ている『アンパンマン』には興味がないらしい。
これから『スキ』になるのだろうか。
一緒に見るうちに、すっかり「ドキンちゃん」推しとなった私。
👩🏻 「『アンパンマン』のなかでだれがすき?
やっぱり、つよくてやさしいアンパンマン?
でもね、ドキンちゃんってわかる?ほら、『ドキンちゃんもいまーす』って、ばいきんまんといっしょにでてくるあの子。あの子ね、とってもチャーミングな子なんだよ。」
👦🏻 「ちゃあみんぐ?」
こんな風に、"推しキャラ"について楽しくお話できる日が待ち遠しい。
その日までに、彼の『スキ』はいくつ増えているんだろう。
願わくは、私の想像なんて追い越して、『スキ』を自分で見つけられる人になってほしい。
息子はまだ、赤ちゃんです。
でも、まだなんにもできない"赤ちゃん"だと思っていた息子は、ちゃんと成長していました。
その小さな成長を取りこぼさないように、今日も全力で『スキ』を追いかける彼の小さな背中を、見守っていきたいと思います。
▼息子に『スキ』ができたということは、「行きたい場所」ができたということでした。
うれしいはずなのに、その「行きたい」を扉で閉ざしてしまった日の話も書きました。
▼こんなエッセイを書く時間をくれたのは、"AI部下"たちです。
名前の『AIと書く』の種明かしはこちら(前編・中編は無料です)。

