【episode1】 新シリーズ『足と靴のいい関係』
靴屋の店員 30年の経験から、
お話します。
見つけてくれてありがとうございます✨
靴店の店員30年そのうち10年はシューフィッターとして働いていたRueです。
以前⬆のような記事を書きました。
読んでいただけるなら、
”知りたい”と思ってもらえるものを書きたい、けれど―――
足と靴の関係について、
どんなことを知りたいかな?
どんなことを書けば届くかな?
色々と考えてみたんですが、
うまく絞りきれませんでした💧
足の悩みも靴の選び方も、人それぞれ違いますし、伝えたい相手の年齢も様々です。
若い方にオススメしたいスニーカーと、シルバー世代に寄り添うスニーカーでは、選ぶポイントもまったく違ってきます。
だからこそ、足と靴の関係について、
私が語れることを、
ひとつひとつ
紐解いていこうと思います。
⋆˳˙ ୨୧…………………………………୨୧˙˳⋆
では!前置きはこのへんにして――
足と靴の物語を一緒に歩いていきましょう。
『足と靴のいい関係』シリーズ、
スタートです!!!
『足と靴のいい関係』
一回目となる今回は、
TVCMでよく目にする靴についてのお話。
CMを見る度に、
「これなぁ⋯」
と、思うところがありまして⋯
まずはそのことから書いてみようと思いました。
さて、思い浮かんだ靴はありますか?

【手を使わずにサッと履ける靴】
数年前のある日の話―――
「いらっしゃいませ 何かお探しですか?」
店内をキョロキョロ見回し 何かを探しているようなお客様に声をかけました。
「あ、最近テレビとかで見る靴探してるんですけど⋯」
3、4年ほど前、こう言って来店するお客様が現れ始めました。
それは、当時テレビCMなどメディアで取り上げられることが増え始めた、あるシューズブランドの
『手を使わず立ったままでも、サッと履けるシューズ』
でした。
このタイプの靴、普段ばきのカジュアルスニーカーとして、売り出されてから数年経ちますが、今でも新作を出す人気モデルのようですね。
今冬はブーツタイプも出ていますね。
話題の靴だったので、実際に店舗で目にしたり、購入した方もいらっしゃるでしょう。
「おーっ!」「足入れやすい!」って
驚いた方もいるのでは?
発売当初は、このブランドが子供から若者の支持率が高いブランドということもあってか、
「子供を抱っこしたままでも、荷物を置かなくてもそのまま履ける」
という売り文句で どちらかといえば子育て世代のママさん達がメインターゲットでした。
ところが実際は、屈んで靴を履くのが 億劫になり始めているシルバー世代が、興味をもちそこから人気が広がっていったのです。
その後、
感じたことの無い 足入れの良さと足あたりの良さが、当初のターゲットである主婦層や、脱ぎ履きの多い職業に方にも受け入れられ、今では、年齢問わず人気があります。
そのあと、ほかの靴メーカーも似たようなタイプを出し始めました。
立ったまま履ける靴は、両手がふさがっていてもサッと履けるという点で、とても便利です。
ただその便利さは”諸刃の剣”でもあって―――
この靴の構造をきちんと理解していないと、かえって足を痛めてしまうこともあるんですよ。
ここから先は、シューフィッターとして歩んできた経験からの解説とアドバイスです。
『サッぱき』を正しく理解して⋯
まず、この『手を使わずサッと履ける靴』
―――略して『サッぱき』
⋯どの商品名とも被らないようにここだけの呼び名ね(*´艸`)
さて、まずは、
サッぱきの構造について少しご説明を。
☆構造
なぜ立ったままで”するん” と滑るように
足が靴の中に入るか―――
それは、かかとの部分に、固い”靴べら”のようなパーツが仕込まれているからなんです。
これが一般的な靴との最大の違いです。
普通は、手を使わずそのまま足を入れようとすると、かかとを踏んでしまったりして靴をいためたり、折れて癖ついたりします。
このパーツが、足のかかとの「道」となって、足をスムーズに靴の中に 導いてくれるんですね。
その次に特徴的なのは、甲部分の深さです。

画像の靴を見てもらうと、お分かりになると思いますが、アッパーの履き口の所が足首辺りまであります。
分かりやすいように、特に深めの形を選びましたが、たいていのサッぱきは深めのものが多い。
なぜかというと、深めだとかかとと同じように、甲の「道」となって、スルッと足を靴の中に誘導するんです。
そして、少しだけ硬いです。
「浅くすれば?」と思いますか?
浅いと足は入りやすいですが、
・ 女性的なデザインに感じられる
・ 抜けやすくなってしまう
こんな理由から、歩きやすさも重視すると、浅くできないんです。
そしてタン(ベロ)が一体化のものが多い。
これは、足を入れる時にタンの巻き込みを防止するためです。
スニーカーのように紐があるデザインのものも、縫い付けてあったり、中で繋がっていたりします。
普通のスニーカーだと、履く時にタンが中に入らないように、手で引っ張って直したりするでしょう?
それをしなくていいようにですね。
以上から、
『手を触れずとも履ける』ようにするためには
・かかとを固くする
・履き口を深くする
・タンを固定する
する必要があり、そのように工夫されています。
それが『サッと履ける靴』の構造上の特徴です。
この構造のおかげで、足入れがいいわけですが、これは、先にも言ったように
”諸刃の剣”です。
足のタイプによっては、次にあげるようなことになる場合があります。
・ かかとが固い→かかとが滑って抜ける。
・ 履き口を深くする・タンを固定する→
”甲高・幅広足” だと、入りづらい
”幅狭・甲が薄い足” だと、中で動く
そう、サッぱきは
『入りづらく、靴の中で滑りやすい』
のです。
矛盾しているようでしょう?
これは『足のタイプによっては』であって、みんながみんな こうなる訳では無いです。
でも、試着した・購入してくださった、お客様の中で『合わない』方もいたのは事実です。
どうしても、このタイプが合わない人もいます。
でも、上手く靴のデザイン、サイズ選びをすれば、この上ない履き心地で気に入ってもらえることの方が多いです。
言うまでもなく、構造上は申し分なく”足入れ”がいいんです。

☆注意が必要な方 3選
1 お年寄り
ここでは、足の形ではなく「足の力」に注目しました。
「親にプレゼントしたい」
と手に取る方が多くいました。
「足腰が弱くなって靴を履くのが大変そうだから」
「サンダルばかり履いているから」
「自分が履いていて良かったから親にもすすめたい」
――そんな優しい気持ちで選ばれるのです。
ですが、
この靴は足腰が弱くなった方にはおすすめしにくいのです。
理由は『履くときに力がいるから』
サッぱきは”踏む力”と”ねじ込むような力”が必要な靴です。
これは先に書いた”構造”の問題が大きいと思います。
多くの方には問題にならない「固さ」と「履き口の狭さ」がネックになります。
40〜60代の方が「親に」と探しに来られることが多いですが、
その親世代は70代以上。
とくに80代以上になると、足の入れにくさを感じる方が多くなります。
もちろん元気な方も多いです。
でも、加齢で足の力が弱まると、
踏み込む力が弱かったり、
足をコントロールできないこともあります。
さらに「立ったまま履けない方」にも注意が必要です。
”立って履きやすい”サッぱきは
”座って履く”と足が入りにくいのです。
立って踏み込むように力を入れると、
かかとの「道」を滑るように足が入ります。
それが、座って足を前に押し出すように力を入れて履こうとすると、その「道」が邪魔になってしまうのです。
靴べらも座ったままだと使いづらいですよね。
それと同じです。
「親にプレゼント」はとても素敵なことです。
でも、履けない靴を贈るのはもったいない。
ぜひ一緒に靴屋に行って、
サイズだけでなく
『スムーズに足を入れられるか』を
試してみてください。
余談ですが、
靴屋のアドバイスでよく聞くセリフなのですが―――
「ひとつ大きいサイズにしますか?」
これ、要注意です。
サッぱきだけではなく、他のタイプの靴でも、
『お年寄りの靴のサイズアップ』は、
なるべく避けてください。
つま先の余裕がありすぎると、
”つまずきやすく”なってしまうからです。
「ゆったり履けた方がいいよね?」
「大きい方が足入れやすいよね?」
そんな考えは、とても危険です。
ちょうどいいサイズでも、
足入れのいい靴はあります。
『サッぱき』じゃなくてもね。
お年寄りに、おすすめできる靴については、
また、別の機会にお話しますね。
2 幅が細い・甲が薄い足の方
ある時、
「足がスルッと入った!履きやすい!」
と喜んで購入されたお客様がいました。
ところが数日後、
「旅行で履いたら爪が黒くなった」
と怒って来られたのです。
原因は、
甲が薄くて靴の中で足が滑り、つま先が靴の先にぶつかっていたからです。
サイズは、ちゃんとあっていました。
つま先の余裕も適度にありました。
試着で少し歩いただけでは、ただただ”履きやすかった”のでしょう。
実際すごく気に入っていただいて購入に至ったわけです。
ただ、紐靴ではないので固定できていなかった。
なので、旅行のような、たくさん歩く状況になって、はじめて気づいたのです。
『足が滑って、爪がぶつかる』ことに
この出来事は、まだこのシューズに対する理解度が低かった私たちにとっても、良い学びとなりました―――
このサッぱきで、一番有名なブランドは、
名前は出しませんがCMでよく見ます。
あのブランドのサッぱきは、とってもよく考えられて作られています。
インソールがまた秀逸で、独自開発の低反発ウレタンフォームが入っています。
複数種類があるのですが、人気のあったモデルに入っていたインソールを例にすると⋯
そのインソールは、
足裏に合わせて沈み込み、圧力を分散することで、
・クッション性を高める
・足あたりを柔らかくする
・靴の中で足が滑るのを防ぐ
といった効果があります。
特に「滑りにくさ」は、足裏に沿って沈むことで土踏まずの部分が沈まずに残り、
その盛り上がりが隙間を埋めるように支えてくれるために生まれるのです。
足を包み込むように支えてくれるのが、好まれる特徴でもあります。
これは、代表的なブランドのサッぱきの『良いところ』のひとつです。
先程のお客様が購入したものにも、入っていました。
そんな優れたインソールが入っていても、
足が細かったり、扁平足だったり⋯
足のタイプによっては滑ってしまい、
結果として足を痛めることもあるんです。
『足入れが良い』=『足を痛めない』
ではない、ということですね。

結局のところ、幅が細い・甲が薄い方には、
やっぱり靴紐で甲をしっかり固定するのが一番安心しておすすめできます。
本来「靴紐がなくても歩きやすい靴」を目指していたサッぱきです。
でも、実際にはこういう事例が少なくなかったのでしょう。
最近のモデルには靴紐付きが増えてきました。
――私の感想はというと、
『やっぱりそうなるよね』です。
3 幅広・甲高の方
快適に履けるサッぱきですが、
選びにくいのは幅広甲高の方です。
そもそも「入らないことが多い」からですね。
紐がなく、タンが固定されているので、
履き口が狭くて伸びにくく、広がらないのです。
ただ、このタイプの方はサイズアップで対応できます。
足が入りさえすれば、甲の高さでカバーできるからです。
サイズ選びだけ気をつければ、
幅が細い・甲が薄い方よりも快適に履き続けられると思います。

☆注意すべきところ
ここからは、”足”の問題ではなくて、
”靴”自体の注意点です。
気をつけてほしいのは、
CMでよく見る有名ブランドではなく、
「後に続け」とばかりに発売された、比較的安価なメーカーのサッぱきです。
”足入れ”だけを重視しているものが多く、
アッパーの甲部分を高く設計しているため、
幅広甲高でもスルッと履けてしまいます。
でも、これが曲者。
これを知らず、平均的な足幅の方や細い足の方が「スルッと足入る!」と購入し、しばらく履いていると、カパカパ脱げやすくなった
・足が靴の中で安定しない―――
そんなことが少なくありません。
それから、耐久性の問題。
アッパーの型くずれ、靴底の減りが早いのです。
靴の値段は、開発・設計・素材・パーツ・製造縫製―――
すべての要素によって決まります。
安価なものは、何かを諦めることでコストを抑えている、ということなのです―――
でも、
きちんと試し履きをして、サイズを選び、
傷みだしたら短期間でも買い換える―――
そのことを、念頭に置いていれば『日常履き』としては良いと思います。
失敗しないためには
靴屋でサッぱきを選ぶ時に、覚えていて欲しいことです。
1 足入れに騙されない
これは、最初に書いたように
「足入れやすい!」に感動して、即購入を決めてしまう方が多かった、ということからです。
そこに驚いてほしい、ですが、
これで購入を決めてはいけません。
ぜひ歩いみて
・かかとはズレないか
・靴の中で滑らないか
・足は甲部分で抑えられているか
・指先はぶつかっていないか
・かかとと足の側面に隙間はないか
この5点を確認してください。
2 複数のかたちを試す。
見た目で選びたいところですよね。
でも、候補を数点選んで、履き比べてください。
有名ブランドのものは、一点一点少しずつ つくりが違うので、
「これ履きやすいからほかのも大丈夫でしょ?」
は、間違っています。
3 店員さんの言葉は鵜呑みにしない
店員さんが接客に着いた場合、
サイズアップ、サイズダウンの提案は、ほとんどあると思います。
試してみるのはもちろん良いことです、
”サイズを変えて、ベストになる”
―――その方が多いのも事実です。
でも⋯
大きくすりゃあ入るに決まってる!
⋯失礼しました。
サイズアップは
”入るか入らないか”の問題ではありません。
サイズダウンも
”大きかったんだから小さくしたらいい”という単純な話でもありません。
これも、よく聞く接客トークですが――
「履いていると馴染んで伸びますよ」
これ、素材によりますし『横』には伸びますけど『縦』には伸びません!
縦に伸びてはいけないんです。
縦に伸びる靴は ”良くない靴”です。
”良くない”理由はまたの機会に――
万が一、幅の細い足の方が、幅に合わせてサイズダウンし、指先の余裕が少ない状態で
このセリフを言われたら⋯⋯
疑ってください。

大切なのは、しっかり履いたうえでの”履き心地”を考慮することです。
そして、最終的に決めるのは自分自身です。
☆まとめ☆
サッぱきについては、構造・注意点を、覚えておいてもらえれば、選ぶ時に失敗しにくいと思います。
メディアに取り上げられると、一度は履いてみたいと思いますよね?
そして、あのCMのように「サッと履ける」と期待しますよね?
総合的に見れば、
有名ブランドも安価なメーカーの物も、
手軽に履けるという意味では、
とても都合のいい『日常履き』です。
私も実際に持っています。
普段”ちょっと履く”には本当に便利ですからね。
ぜひ、
”足入れだけを重視しない”
ことに気をつけて、試してみてください。
⋆˳˙ ୨୧…………………………………୨୧˙˳⋆
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
思っていた以上に、脱線しそうになりましたが、伝えたいことは伝わったかなぁ💧
このように、シューフィッター時代の経験談を回想録として、シリーズで続けていきます。
次回は、
この季節になると必ず浮かんでくる問題――
『防水ブーツ・撥水ブーツ・防寒ブーツの違い』
について取り上げたいと思います。
どうぞ、楽しみにしていてください。
今回の話が、みなさんの靴選びの参考になれば嬉しいです。
また、お会いできるのを楽しみにしています。

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