【稼ぐ力】高齢者向けプロダクトの「ヒアリング相手」が見つからない。街で声をかける前にやる3つのこと
「ITが苦手な高齢者向けに、音声AIでスマホ利用を支援するプロダクトを作りたい。でも、ヒアリング先に困っています。若者ならSNSでDMできますが、高齢者の方に街中で声をかけるのは迷惑では…」
事業アイデアの検証について、こんな相談をいただきました。
起業の世界では「商品を作る前に、まず買い手を見つけよ」とよく言われます。作ってから売り先を探すのではなく、困りごとと支払う人を先に確認する。この順番は鉄則です。
とはいえ、高齢者へのヒアリングは確かに接点づくりが難しい。今日は、街頭で声をかけずに検証を進める3つの方法を整理します。
街中で声をかける必要はない
まず結論から。知らない高齢者に街頭で声をかけるのは、相手にとっても自分にとっても負担が大きく、得られる情報の質も高くありません。警戒された状態のヒアリングでは、本音の困りごとは出てこないからです。
幸い、その必要はまったくありません。接点は、もっと自然な形で作れます。
①一番リアルな一次情報は、身近にある
最初のヒアリング相手は、自分の親・祖父母・親戚・ご近所さんです。
身近な高齢者は、遠慮のない本音をくれる最高の一次情報源です。「スマホで困ったこと、最近あった?」と聞くだけで、検索の仕方が分からない、文字が小さい、詐欺メールが怖い、といった生の声が集まります。
さらに、自分の周りだけでは偏るので、SNSやオンラインコミュニティで**「高齢の親御さんがスマホで困っていること、教えてください」と子ども世代に聞く**のも有効です。
高齢者本人に届かなくても、日々サポートしている家族は困りごとを驚くほど具体的に知っています。
ポイントは、この段階では「売り込み」を一切しないこと。アイデアを説明して感想を聞くのではなく、相手の困りごとの事実だけを集める。これがヒアリングの基本です。
②「手伝う側」として現場に入る
次の一手は、高齢者が集まる場所に**「支援する側」として入る**ことです。
実は、この分野には公的な受け皿がすでにあります。
総務省は2021年度から「デジタル活用支援推進事業」として、全国の携帯ショップや公民館などで高齢者向けのスマホ講習会を無料で開催しています。
自治体独自のスマホ教室や相談会を実施している地域も多く、講師や運営を支える人材は地域の社会活動をしている人や学生なども担っています。
自治体・公民館のスマホ教室のボランティアやサポートスタッフ
地域のデジタル相談会の手伝い
社会福祉協議会などが募集する高齢者支援のボランティア
こうした場に手伝いとして入れば、売り込みではなく支援なので誰にも迷惑がかからず、それでいて「高齢者がスマホのどこで、どうつまずくか」を目の前で観察できます。アンケートでは絶対に取れない、行動レベルの一次情報です。
ちなみに総務省は事業開始当時、スマホを使えない高齢者を約2,000万人と推計していました(2021年時点)。
それだけ課題が大きく、国が予算をつけて取り組む市場だということです。個人の年収も事業の売上も「どの市場で戦うか」に大きく左右される、という話は以前この記事で書きました。
③お金を払うのは、本人ではなく家族かもしれない
そして、この種のプロダクトで最も大事な視点がこれです。
利用者(高齢者本人)と、購入者(お金を払う人)は、別人であるケースが多い。
高齢者向けの見守りサービスやサポートサービスでは、「離れて暮らす親が心配な子ども世代」が契約者になる構図がよくあります。
本人は「今のままで困っていない」と言うのに、家族は「電話のたびに同じ操作を教えるのが大変」「詐欺に遭わないか不安」と、お金を払ってでも解決したい悩みを抱えている。
「買い手を見つけよ」の観点で言えば、ヒアリング対象は高齢者本人だけでなく、その家族(子ども世代)も含めるべきです。むしろ支払意思の検証は、家族側の方が本丸かもしれません。
支払意思を測るときは、「いくらなら払いますか?」と聞くより、その人がすでに毎月何にいくら払っているかを見る方が正確だと言われます。相場観をつかむには、まず自分のサブスクを棚卸ししてみるのが手っ取り早い方法です。管理アプリで一覧にすると、「月2,450円のサービス」が生活の中でどれほどの重みを持つか、値付けの感覚が体感できます。
実践メモ:ヒアリングで使える質問テクニック
方法論だけでなく、現場でそのまま使える技術を置いておきます。
ヒアリングの質は、質問の形でほぼ決まります。
1. 「過去の事実」を聞く。未来の意見は聞かない
NG:「こういうアプリがあったら使いますか?」→ ほぼ全員が社交辞令で「使う」と答えます
OK:「最近、スマホで困ったのはいつ、どんな場面でしたか?」→ 実際に起きた事実だけが集まります
2. 自分のアイデアは最後まで見せない
アイデアを見せた瞬間、相手は「否定したら悪いかな」というモードに入ります。困りごとを聞き切ってから、必要なら最後に軽く見せる。
順番を逆にしないことです。
3. 「今どうやってしのいでいるか」を必ず聞く
「その時どうしましたか?」の答えが、①子どもに電話した、②諦めた、③店に持って行った、のどれかで深刻度が分かります。
何の対処もしていない困りごとは、実はお金を払うほど困っていない可能性が高いのです。
4. 記録は5項目のテンプレで統一する
困りごと/起きた頻度/現在の回避策/一番困っているのは誰か/すでに払っているコスト(お金・時間)——この5つをヒアリングのたびに同じ形式でメモすると、3人目あたりから共通パターンが浮かび上がります。
5. 今日やることを1つだけ決める
完璧な準備より、今日親に電話して「最近スマホで困ったことあった?」と1つ聞く方が、検証は確実に前に進みます。
まとめ:作る前に、買い手を見つける
街頭で声をかける必要はない。負担が大きいわりに、警戒された状態では本音が出ない
①身近な高齢者+子ども世代への質問が最初の一次情報源。売り込まず、困りごとの事実だけを集める
②スマホ教室や相談会に「手伝う側」として入る。支援だから迷惑にならず、行動レベルの観察ができる
③利用者と購入者は別人かもしれない。支払うのは子ども世代というケースを想定し、家族もヒアリング対象に
ヒアリングは過去の事実を聞く。未来の意見と社交辞令は判断材料にならない
順番はいつも同じ。作ってから売るのではなく、買い手を見つけてから作る
ヒアリングの入口で悩めているのは、順番が正しい証拠です。
その丁寧さは、プロダクトの形になったとき、必ず品質に表れます。
※本記事は一般的な情報の整理であり、特定の事業の成功を保証するものではありません。事業に関する最終的な判断はご自身で行ってください。
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