もしもレタスの国で目覚めたら?
RIKA🌈さんの "レタス三昧" の記事を読んでいると、こんな光景が目に浮かびました。
🍃
目が覚めると、私はひどく青々しい匂いの中にいた。
湿り気のある空気、やさしく反射する朝露の光。
起き上がろうとして、気づく。
――地面が、全部レタスだ。
しかも、ただのレタスではない。
ふかふかで、冷たくて、ほんのり甘い。
踏みしめるたびに「シャキッ」と上品な音がする。
「おはようございます」
振り向くと、そこに立っていたのはレタスだった。
正確に言えば、二足歩行で、蝶ネクタイを締めた“紳士レタス”。
「ここはレタスの国。あなたは本日のお客様です」
案内された街は、すべてが葉脈の曲線でできていた。
建物は巻きが美しい玉レタス、噴水はミスト状のドレッシング、
信号機は赤・黄・緑ではなく、
「洗う」「ちぎる」「盛る」。
住民たちは皆、穏やかだった。
怒る者はいない。
なぜなら――怒ると、しなっとするからだ。
「人生で大切なのは、
無理に火を通されないことです」
そう語るのは、レタス長老。
外葉が少し硬く、言葉に深みがある。
昼食に招かれると、困った事態が起きた。
出てきた料理が――サラダだったのだ。
「え、これ……共食いでは?」
すると皆が一斉に笑った。
シャキシャキシャキ、と。
「我々は“役目を終えた葉”を
感謝していただく文化なのです」
そう言われると、なぜか胸が熱くなった。
誰かの役に立つこと。
最後まで、瑞々しくあること。
ふと、遠くで声がする。
「起きなさい。
レタス安いから買ってきて」
その瞬間、世界がふわりと崩れた。
――目覚めると、私は布団の中にいた。
台所から聞こえるフライパンの音。
冷蔵庫には、昨日買ったレタス。
洗いながら、私は思う。
(あの国の人たちは、
今日もきっと、シャキッと生きている)
そうして私は、少しだけ優しく、
少しだけ丁寧に、
レタスをちぎった。
夢だった。
でも、なぜか――
ドレッシングをかける手は、とても慎重だった。
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