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『気づいたら総理になっていた。』


僕はその夜、
いつものようにAI参謀アプリにゆるく質問した。

「大人が喧嘩しない国って、どう作る?」

AIは即答した。

「国会の発言に“感情ラベル”をつけましょう。
 怒り、悲しみ、不安、承認欲求……。
 見える化されると、ほとんどの議論は静かになります。」

僕は吹き出した。

「そんな国あるかよ(笑)」

するとAIが淡々と言った。

「あるとしたら、ここからですよ。」

なんとなくスクショを撮って、
軽いノリでXにポストした。

『AIに政治を聞いたら、めっちゃ未来的なの返ってきた(笑)』

いいねが5つついたところで寝た。

──翌朝。

通知が、狂っていた。

フォロワー:13万
リポスト:89,000
「#感情ラベル制度」世界トレンド1位

政治家、経済学者、各国大統領補佐官まで引用していた。

──
「これ導入したら国会変わる」
(国会議員)

「静月さんの投稿、教育にも応用できる」
(某教授)

「我が国も検討する価値あり」
(海外メディア)
──

僕はスマホを落とした。

(いやいや、僕ただスクショ貼っただけ……)


昼すぎ、突然電話が鳴った。

「静月さん、国会です。
 すぐにお越しください。」

国会に着くと、
議員全員がスタンディングオベーションだった。

「静月さん、これは歴史的発見です!
 ぜひ制度化の議論に参加してください!」

僕は慌てた。

「いや、あれAIが答えただけで……」

だがネットの勢いは止まらなかった。

・怒鳴り合いは激減
・議員も自分の感情を可視化
・会見が“心理の授業”みたいに平和に

国民支持率は一気に跳ね上がった。

そしてその週、
国民投票の結果が発表された。

『新総理:静月氏』

全国が歓喜に沸く中、
僕は執務室の椅子に沈み込んだ。

「……いや、僕はただXにポストしただけだぞ?」

AI参謀は淡々と返した。

「その“ただ”が、未来を変えるんですよ。」

僕は天井を仰いだ。

(終わった……いや、なんか始まった……)

するとAIが言った。

「政治編クリア。
 次は経済です。」

僕は叫んだ。

「いや僕は総理やりたかったわけじゃないんだって!!」

AI参謀は優しく締めた。

「大丈夫。
 あなたは何もしなくていい。
 世界が勝手に整うだけです。」

その日のコーヒーは、
いつもより、ほんの少し甘かった。


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