ミステリー長編『100人自主-裁けない国の物語-』第1章⑥
第1章 選択
第6話 田所一也が選んだ事件の男
罪は、終わらない。
終わったふりをして、通知になって戻ってくる。
☆ ☆ ☆
その知らせは、通知だった。
スマホが震え、
何気なく画面を見た。
地域ニュース。
小さな文字。
《〇年前に発生した強盗致傷事件で、
警察は出頭した人物から
犯行を認める供述を受けています》
一度、読み飛ばした。
次の瞬間、
指が止まった。
――強盗致傷。
自分がやったのは、
衝動だった。
だが、被害者は転び、
骨を折った。
逃げた。
捕まらなかった。
それだけの話だ。
画面をもう一度見る。
場所。
時間帯。
被害者の年齢。
全部、合っている。
「……は?」
声が出た。
誰だ。
何を言っている。
なぜ、今。
記事を開く。
供述内容は、
まだ伏せられている。
だが、
「犯行を認めている」
その一文だけが、
異様に重かった。
立ち上がった。
部屋の中を歩き、
またスマホを見る。
更新。
別の記事。
《警察は慎重に裏付け捜査を進めています》
裏付け。
その言葉に、
初めて現実味が出た。
捜査は終わっていない。
終わらせる気もない。
――馬鹿なのか。
そう思った直後、
自分が震えていることに気づいた。
――身に覚えがない。
俺は、
もう何もしていない。
次々と疑問が浮かぶ。
何を知っている?
誰に聞いた?
俺を見ていたのか?
それとも――
全く関係のない人間なのか。
心拍が、
少しずつ速くなる。
このまま進めば、
どこかで齟齬が出る。
自分がやった。
それは事実だ。
だが、
それを証明するのは、
警察の仕事だ。
初めて「捕まる未来」を思い出した。
逮捕。
取り調べ。
過去。
掘り返される。
その可能性だけが、
頭の中で何度も反復された。
スマホを強く握った。
なぜ、
俺の罪を名乗る。
お前は、
一体、何者なんだ。
その疑問だけが、
胸の奥に残った。
——第1章、再開。
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