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ミステリー長編『100人自主-裁けない国の物語-』第1章③


第1章 選択


                            第3話 不運:田所一也

文章は、最後まで読まなかった。


途中で、

「これなら終われるな」

と思ったからだ。


一也にとって、

刑務所は罰じゃなかった。

屋根があって、

三食あって、

理由を聞かれない場所だ。


事件は、適当に選んだ。

未解決で、

ニュースで何度か見たやつ。


殺人でも、

どうでもよかった。


どうせ、人生は終わっている。

重い罪でも、軽い罪でも、

先は同じだと思っていた。


募集文の条件も、

あまり気にしていない。


ただ、

「取り消せません」

という一文だけが、

やけに印象に残った。


――まあ、いいか。


出頭したときも、

後悔はなかった。


だが数か月後、

刑事が言った。


「真犯人が捕まった」


一也は、

その意味が分からなかった。


「じゃあ、お前は何だ?」


そう聞かれたとき、

初めて、

自分がどこにも属していないことに気づいた。


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