【創作の挿話/映画評】「市長たちは、ある映画の上映会を催した。」
〜【創作】「あさってイエロー、
まっさかピンク」挿話〜
この記事は、セピデ・ファルシ監督のドキュメンタリー映画『手に魂を込め、歩いてみれば』に触発され、というか心を揺さぶられながら、現在書いている自創作「あさってイエロー、まっさかピンク」の実際のエピソードとして組み込むべく、書く、というものです。
なお、この物語はフィクションです。
実在の自治体・学校・人物とは、一切関係がありません。
ユナイテッドピープル様
本創作の文中に、映画公式HP掲載の劇中写真を5点、使用させてください。
埼玉県幸手市の市長、雨里亜奈。
彼女はあるオフの日、東京の大塚にある映画館で、一本の映画を観た。

イスラエルによるガザ攻撃が続いていた2024 年、イラン出⾝の映画監督セピデ・ファルシは、緊急に現地の⼈々の声を届ける必要性を感じていた。しかし、ガザは封鎖されており⾏くことは出来ない。そこ で、知り合ったガザ北部に暮らす24歳のパレスチナ⼈フォトジャーナリスト、ファトマ・ハッスーナと のビデオ通話を中⼼とした映画の制作を決意する。
以後、イランからフランスに亡命したため祖国に戻れない監督と、監督の娘と同じ年齢で、ガザから出られないファトマとのビデオ通話が毎⽇のように続けられた。そして、ファトマは監督にとってガザを知る⽬となり、監督はファトマが外の世界とつながる 架け橋となり、絆を築いていく。
「STORY」前半部を引用


彼女は幸手に戻ると、すぐ行動を開始した。
市長であるとは明かさず、いち個人雨里亜奈として、配給会社からフィルムを借り受けた。料金は自分の口座から支払った。
彼女がそうすることを選んだのは、
「予算が通り事業化されていないから、市として行うことはできない」
に尽きる。
事業化のためにも、心ある人たちに観ておいてもらうことが大事だった。
……いや、それは二の次だった。
とにかく「観てほしい」、それが行動のすべてだった。
幸手市の公営施設に自力でWEB申込みをして、上映スペースを押さえることも考えたけれど、その過程で名前などから市長と間違いなくバレることが予想された。
(で、所管部署の部長からスマホに連絡があり、職員の応援派遣の申し出を受けるところまでセットで想像された。)
そして、せっかくならいい音響で観てほしいと雨里亜奈は思った。
そこで、市内の映画館「シネルネックス幸手」に、空いているスクリーンがないか(名を伏せて)問い合わせると、ちょうど借受期間の夕方、空き時間があった。
ダメ元で運営会社の担当者さんに、企画意図と貸出可否を聞いてみると、詳細をメールで送ってほしい、通常は受けていないが内部で確認します、と言ってくれた。
(※注意:この部分は、本当に架空設定です。念のため、実在の映画館にご迷惑掛からないよう、映画館名も実在名から架空名にします)
雨里は許可を得ると、貯金を切り崩し、思い切って、土日2日間の2時間枠で借りることにした。
「広報さって」の告知欄に、
「映画上映会 開催のお知らせ」
として、その映画の上映告知の掲載を申し込んだ。

市役所内では、「市長が何かやるっぽい」と、情報が口コミで広がった。
市内の、市立幸の手高校の子たちに観にきて欲しかったので、雨里は私的なテイで校長先生を訪ね、チラシの配布を依頼した。
(……でもやはり市長の地位にあると、この街ではどこへいっても市長でしかない。校長の反応も、市長対応として
「おおせつかりました、しっかり告知しますので!」
になってしまった。)
ともあれ、映画上映会の当日を迎えた。
一般の方は、500円取らせてもらった(窓口での集金など、友人たちが手伝ってくれた)。
「11歳から22歳の、幸手に在住、在勤、在学の人」は、無料に設定。
セキュリティはともあれ、年齢コードに関しては受付であまりチェックが働かなかったようだけど、おおむねそのくらいの年恰好であるならば、もうあまりうるさく問わないと決めた。
「ぜんぜん、誰も、きてくれなかったらどうしようか……」、
と心配だった雨里だったが、蓋を開けたらとても多くの人が連れ立って、あるいは一人で、来てくれた。
(土日とも、ほぼ満員御礼だった)。





観た若者の一人は、のち、市が行った「ユースさって市長選挙」で、当選した。
そして、後に、ユースさって市長として、この映画の上映会を催した。



上映会を企画した人も、観た人も。
映画を観た後には、同じような思いを持って生きることになった。
(彼女のことを、忘れないでいよう。
自分は、今、ここでできることを、やって生きよう。
もちろんここにも、自分の中にも、不満も悩みもある。
けれど、少なくとも生きて、思うように、動くことができるではないか。
あなたは言う、
「通りに出るときは いつも 手に魂を込めて 歩いてる」
今いるここで、私にも、何かできないか。
できることを探す。手に魂を込めて。)
(挿話・終わり)
ぼくは先週夜、大塚駅近くの映画館、「シネマハウス大塚」で観てきました。

この映画を「絶対に観なければ」と思うきっかけになった、Takashi Hashiwakiさんの記事に、この記事を捧げます。
多くは言いません。
もし、お近くで、この映画の上映があるなら、ぜひ観ていただきたいなと思います。
実際の、配給会社による「上映会のお知らせ」記事にも触発されました。
どこか近くで企画されたら、再見もしたい。
(本記事タイトル画像は、配給会社ユナイテッドピープルの映画ホームページ内より切り出して使わせていただきました。)
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