『ふわっと空へ』~前編。
※昨年末に配信した作品を、創作大賞用に
加工してお届け致します。
(あらすじ)
この物語は、私が若い頃に体験した出来事を
もとにしています。
もちろん、小説です。
登場人物も設定も創作です。
けれど、その根っこには、今でも説明の
つかない一つの体験があります。
人は極限状態になると、普段とは違う
意識状態になることがあると言われています。
断食。
睡眠不足。
強いストレス。
あるいは深い瞑想。
世界中には、そのような状態の中で、不思議な
体験をしたという記録が数多く残されています。
私は科学を否定するつもりはありません。
むしろ、説明できることは説明したい人間です。
だからこそ、この体験についても、本を読み、
調べ、考え続けました。
しかし結局のところ、今でも答えは
分かりません。
あれは夢だったのか。
幻覚だったのか。
それとも、本当に何か別の現象だったのか。
本作『ふわっと空へ』は、その答えを提示する
物語ではありません。
むしろ逆です。
答えのない問いを抱えたまま、生きていく
人間の物語です。
もし、読み終えた後に少しだけ空を見上げ
たくなったら。
もし、自分が信じていた現実の輪郭が少しだけ
揺らいだなら。
作者として、これ以上うれしいことは
ありません。
断食の中で、意識が宇宙空間に飛び出した、
その様子をリアルタイムに描きました。
信じるか、信じないかは、あなたに委ねます。
ーーーー本編ですーーーー
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前編|地面の上で、息が詰まる夜
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サラリーマンの山田和也(仮名)は、
27歳だった。
特別に不幸なわけでもない。
特別に幸せなわけでもない。
毎日、同じ時間に起きて、
同じ電車に乗って、
同じような仕事をする。
「このままで、ええんやろか…。」
そう思いながらも、
何かを変えるほどの理由もない。
休みの日は、
朝からパチンコに行くだけ…。
好物はラーメン、チャーハン、餃子。
夜は、ポテチとコーラ…。
身体は、少しずつ重くなり、
気持ちも、同じように重くなっていった。
彼女はいない。
趣味もない。
仕事は、正直つまらない。
息苦しい、という言葉が、
一番しっくり来た。
「なんとかせな、あかんなぁ……。」
そう思う日だけが、
ただ、ただ増えていった。
ある日、
時間を潰すつもりで入った本屋で、
一冊の本が目に止まった。
『身体は、断食で良くなる。』
そんな類の本だったと思う。
「どうせ暇やし、
この連休でやってみるかぁ…。」
軽い気持ちで、
夏休みの大型連休に合わせて、
断食を始めた。
最初の3日間は、地獄だった。
腹が減る。
コーラが飲みたい。
頭がぼーっとする。
それでも、
なぜかやめなかった。
5日目あたりから、
不思議と、つらさは消えた。
そして、
起きているのか、
寝ているのか、
分からない時間が増えていった。
そのとき、だった……。
身体が、ふわっと突然浮いた。
なんじゃ、これっ…。
次の瞬間、
天井を通り抜け、
屋根も、すーっと抜けていった。
「はぁ?、、、はあ?、、、何?」
ずーっと下の方には、
自分の家があると感じられた。
「……なんやねん、
これっていったい……。」
そこで、
意識は、闇夜の宇宙空間へ切り替わった。
眼下には、
地球がありました……。
見え方の
方向でいうと、右斜め下側に地球が見える。
上方向でも、正面でも無い。
右斜め下側に、地球はあった。
テレビや写真で見る地球とは、
まったく違っていた。
青い、というより、
静かに白く輝いていた。
写真を夢で見た、という感じではなく
まさに今、肉眼で見ている。
「なんなんだ、いったい……。 」
回っているはずなのに、
どっしりとしている。
巨大なのに、圧迫感がない。
そして
なぜか、神々しい。(こうごうしい)
宇宙は、
暗いはずなのに、怖くはなかった。
何もないのに、
何かに包まれている感覚があった。
そのとき、
急に、ふっと思った。
このまま、
ここにいたら、
地球に、自分の身体に戻られへん……。
理由はない。
説明もできない。
でも、
それは確信している。
怖い、というより、
越えてはいけない線を越えると、マジで
「やばい。」
人間が元々備わっている直観なのか。
恐怖を通り越して、
身体より先に、
意識がブレーキを踏んでいる。
「絶対に、帰らなあかん」
その一言が、
頭の中に、
はっきりと浮かんだ……。
次に覚えているのは、
重さ。
浮いていた時は、紙切れくらいの軽さ。
あくまでも、比喩です。
重さなどは、まったく感じない。
それが一気に、
重さも戻ってきた。
空気。
身体。
自分という存在が。
全部が、
ずしっと、戻ってきた。
「あぁ、良かった。戻れた…………身体に……。」
💖ここまでです。
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