【noteでBL】歴代クレイジーお題解放中! オジサン警備員✕オタク大学生
今月はお休みであるBL小説企画、noteでBL。
私は第7弾ことスポブラ回からの参加でしたが、1〜5弾もクレイジーでおもしれー企画。(なお第6弾は初回不穏回)
今回使用させて頂いたのは、記念すべき第1弾。
第1弾
「コミケ」「ビックリマンチョコ」「スマホ」
【登場人物】
熊谷勇 四十代バツ一警備員
松井孝 熊谷に片想い中の大学生
今回はラブコメに挑戦です。
いかついオジサンがくだけた柔らかい口調で話すの好きなのだけど、匙加減間違えるとオネェっぽくなると気付いた。
「今のコミケって二日間なの?」
とある地方都市の国立大学、その正門前にある警備員詰所にて。
「なんか他のイベントに女性向けが流れて住み分けが進んでるとか、通販主流のサークルも増えたとかで最盛期よりサークル数減ってるそうですよ。あと、コロナの時のなんだかんだが後引いてる的な」
「なんだかんだかー」
当時は酷いものだった、と遠い目を虚空に向けるのは、この大学の警備員である熊谷だ。特に酷い時期は休講やリモート授業が相次ぎ、にも関わらず職種柄出勤しない訳にもいかず、戦々恐々とした日々を過ごしたものだ。
「お前さんは高校生だったっけか」
「高校三年間がまんまコロナ禍でした」
「そんな子がもうインターンシップも終盤……?」
よその子の成長は早いなァとぼやく熊谷だが、彼自身は子持ちでもない男やもめである。
オジサンの若い頃は独身者の形見が狭くてねぇ、とは熊谷の談だが、実際、自身がゲイセクシャルであることを隠したまま異性と結婚する同性愛者も多かった。身を焦がすような煌めく恋は出来なくとも、愛し愛され許し合う家族にはなれる。
「ま、でっかい隠し事してる時点で許し合うもクソもないんだけどね」
墓場まで隠し通す筋の通った男もいれば、勝手に罪悪感で雁字搦めに陥る男、修羅場を乗り越え戦友に至る夫婦、乗り越えられず他人に戻る男女、様々だ。
今でこそ四十を超えた中年だが、高身長でバタ臭いハンサムラガーマンだった熊谷は友情恋愛男女問わずそこそこモテた。その為、その手の悲喜こもごもはよく知っている。
「勇さんはどうだったんすか」
「さてね。ほら、もう行った行った」
繰り返すが、ここは大学の正門。
通り過ぎる学生や学校関係者が、警備員と挨拶ついでにちょっとした立ち話をしていく事くらいあるが、それにしたって彼の場合は長過ぎる。
彼、松井孝は熊谷が勤める大学の生物資源学部の三年生。仮にも職場の話ながら、初めて耳にした時に「何する学科?」と聞き返してしまったのも既に数年前。「まぁ色々っすよ」と雑に返されたのも鮮明に覚えている。
「……うっす」
「サークル活動も頑張んなさいな、若人」
大学自体は冬季休講中だが、熱心なサークルや同好会は今日から活動開始だ。
ひらひらと武骨な手を振る熊谷に軽く会釈を返し、人通りもほとんど無いキャンパスを駆ける。
脂肪も筋肉も付き辛い、かろうじて背丈だけは平均より高い身体。「猫背止めなさいよ勿体ない」と背中を叩かれたのが入学試験の時だから、熊谷と出会ってもう三年。もう、「ほらまた」なんて猫背を叩かれる事も滅多にない。
「一年の頃はほとんど毎日だったのになぁ……」
寂し気な独り言にこもった湿度は、身を焦がすように燻る火種。いつの間にか宿った灯火を、手渡す勇気は未だにない。
🐱🐱🐱
「まっさんスマホ光ってるよー」
漫研の部室はサークル棟の一階角部屋にある。
歴代の部員達による「俺の推しを見ろ」という熱意によって厳選された神漫画や、卒業時に新居へ持って行くのは憚れるが捨てるのも嫌、というニッチでアレな作品が所狭しと並べられたカオス空間だ。
その、かろうじて設けられた人間用のスペース、いつから置いてあるかも不明な年代もののソファで、黙々と年末の祭典で手に入れたお宝を読み回していた仲間うちの一人が顔を上げた。先程、ままならない現実にスポ根よろしく走り出した勢いのまま、ちょっぴり切なくも圧倒的光に溢れる両片想い本で精神の回復を図っていたほのぼのNL派、松井孝である。
「あー、マナーモードになってたか解除〜……って……」
ピシリ、スマホをのぞき込んだ体制のまま固まる。スマホに付けたラバーストラップの揺れる音がやけに大きく響く。
届いたのはラインやDMではなくメール。登録外の同一アドレスから、三通届いている。
ここまでは良い。問題はそのアドレスだ。
kumagaya-〇〇〇〇@SoftBank.ne.jp
いや個人情報!
伏せ字にしたけど4桁の数字、おそらく誕生日!
好きな人の誕生日(推定)を知れたのは普通に嬉しいけど、身バレを警戒するオタクの立場からすると、ちょっとこういうのどうなんだろう。
「いやいや問題はそこじゃねぇ、そこじゃ」
仕事用のメルアドかもしれないし。というか、多分そう。絶対そう。
のらりくらりと躱され続けた弊害か、松井の恋愛観は卑屈であった。プライベート? 知る訳ないでしょ、あっちは仕事の一環で子どもあやしてる感覚ですよ。どうせ期待させておいてこのメールも事務手続きとかそういうやつ。泣いていいか。
周囲も一次的発狂からの奇声や奇行には慣れっこなので、突然ひれ伏した程度では突っ込みすらされない。唯一背中をさすってくれた友人も、浮かべるのは心配ではなく愉悦の微笑みであった。
「推しでも死んだ? うんうん、辛いよね。悲しいよね。ところでメリバって興味ない?」
「やめろ縁起でもない、隙あらば性癖の扉を開けようとするな」
そんな哀れな自己防衛で予防線を張ってから、震える指先でメールを開く。
『ちょっと何よコレ(笑)』
「……うん?」
思ってたんと違うな?
少しばかり浮上した恋心が疑問に塗り変わる。
添付もないたった一言に首を傾げつつ、二通目のメール。
『いやまぁ、この作品まだ好きだって言いましたよ。覚えててくれたのはうれしいよ。未だに同人活動してる同志がいたのもね。
でもこんなの笑うでしょ!変な声出ちゃったじゃないの!』
より詳細を伝える本文と、1枚の添付画像。若干ブレた画像に写っているのは、先程ビッグサイト土産にと手渡した代物だ。
二十年近く前に発売された、関ヶ原の戦いを舞台にしたDS用合戦アドベンチャーゲーム。の、ビックリマンチョコ風の絵柄にアレンジされたキャラクター達によるドタバタコメディ二次創作本。
元から思い切ったキャラクターデザインの作風であったが、それが更に際立った絵柄になっている。
よっしゃ、受けた。
正統派プレイヤー兼真っ当なオタク、良かれと思って布教した成果が出るのは嬉しいものだ。
「へーあの警備員さん、多趣味とは聞いてたけどこっちの理解もあるんだ」
「なんだかんだゲームもアニメも当たり前に育った世代だもんなぁ」
ガッツポーズまで出た浮かれ気分で、三通目。
『てかね、駄目でしょうがこんなオジサンにメルアド渡しちゃ』
冷たい水を全身に掛けられた感覚がした。
お土産に紛れて渡した、“良かったら感想下さい”と付けたメモ。
そこにあった期待と下心に恥じるつもりは毛頭無いが、やっぱり止めておけば良かったと涙腺が緩みそうになった時、友人の気の抜けた声が聞こえた。
「これ、まだ続きあるよ」
「へ?」
横から出てきた指先がスクロールを滑らせる。
『悪用しちゃっても良いの?(^^)』
「ヒョワッ」
紛うことなき奇声が出た。
悪用? 何する気ですか? 闇バイト? あとその顔文字、超絶久々に見ました。
混乱を他所に、四通目のメールを告げる着信音。
「やめてくださいしんでしまいます」
「がんばれがんばれ、ほいポチ〜」
無慈悲な友人の死刑宣告に背中を押され、絞首台に登る心境でスマホに目を向ける。
『オジサン本気にさせたら面倒くさいんだから、覚悟しなさいね』
ーーなんてことはない。
『おはよう』とか『お休み』とか、『今日の学食の日替わり竜田揚げだって(/・ω・)/』なんてメールがひっきりなしに届くようになるのだが、この時点で既にキャパオーバーした松井には知る由もない。
「えー何コレ、どういう宣言…………し、死んでる……」
以上、本文3035字。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
久しぶりにアオハルっぽいの書いた気がします。
ちなみに作中のゲームは2008年発売。無双シリーズのような爽快アクションは少なく、対話と戦略がメインになるゲーム。
私はこれで現在の推し武将に転がり落ちました。今年の大河にも出場確定しているので、頑張って視聴したい(←連続ドラマが最後まで見れない奴)。
