【#noteでBL】親友の好きな人〜花の名前を〜
今回も参加させて頂きました、三度目まして!
【本文文字数】3005字
【テーマ】花、つめ切り、「大嫌い!でも好き❤️」
【登場人物】
遠山光:虎徹の親友。野球部ピッチャー。
高良虎徹:光の親友。野球部キャッチャー。
高良龍治:虎徹の兄。野球部コーチ。
四ノ宮桜:虎徹の彼女。文芸部。←new
今回は前前回の企画で書かせて頂いたお話の続編になります。が、前のお話は未読でも問題ありません。
【前回のあらすじ】光くんはコーチに片想い中【今回のあらすじ】虎徹くんに彼女が出来たよ!
「彼女に『恋人と別れる時は花の名前を教えてあげると良いよ』って言われたんだけど」
「ええ……」
話してみろ。と、ここ最近浮かない顔をしていた友人、高良虎徹を引きずるように押しかけた彼の自宅にて。
「違うよな? 単なる雑談のネタであって、別れ話ほのめかされてるとかじゃないよな??」
「そういう思わせぶりな事する子には見えないけど……」
幼馴染みでバッテリーの高良虎徹と遠山光が、揃って榊原学園高等部に入学して早2ヶ月。
入部した野球部でも新チームとして軌道に乗り初めた頃だが、この強豪校、基本的に毎週一度は休息日がある。
先のゴールデンウィークでも、飛び石だった事情もあってか昭和の日は休息日であった。授業もあるので丸ごと1日完全に休み、という日は貴重である。
『実は今日デートでさ』
どこか出かけるか、と誘った光に対して虎徹の返答がこれだ。それはもう、デレッデレのドヤ顔であった。
光は驚愕した。
『お前いつの間に彼女なんか創った…!?』
『人体錬成じゃねーから』
お相手は2人と同じクラスの四ノ宮桜。
虎徹とは隣の席で、今思えば入学式の日から既に親しげであった。
表情が乏しくて怖がられがちな光にも笑顔で挨拶してくれる、気さくな女子である。
「てゆーか、わざわざ教えなくても花の名前じゃん桜ちゃん。絶対春先になったら思い出すじゃん。忘れる気ないけど!」
桜いわく、『そうすれば、その花を見る度に思い出してくれるから』。
流石文芸部、ロマンチックな言い分だ。
問題はその真意だが。
「文芸部の作品の話とかじゃないのか?」
「でも主に書いてるの、ファンタジーものって言ってた。それも今はコメディ寄りだって」
「恋愛要素ないとは言い切れないけど、コメディで別れ話か……」
どう解釈しても切ない系王道ラブストーリーである。
「その場で問いかければ良かったのに」
「そんな余裕あると思うか?」
やんちゃな野球少年がそのまま高校生になったような男なのだ、女子の扱いなんざ慣れちゃいない。
「お前みたいに開き直って押しまくれる図太さは持ち合わせてないっての」
「は?」
とうとう頭を抱えてしまった虎徹だったが、図太い呼ばわりされた光も遺憾である。
「いや、図太いだろお前は」
「どこが」
「むしろどこが図太くないと?」
甚だ遺憾、と反論したい所だが、ピッチャーとしては図太い位でないと勝ち上がれないので何も言えない。判断基準そこで良いのか青少年。
「まさかとは思うが、虎への心配をだしに家まで来たとは考えてないだろうな?」
「あ、そういうこすい真似はやんないだろって思ってるから安心しろよ」
光くんっては俺の事大好きだもんな、と続ければ、途端に深まる眉間のシワ。照れ隠しだと分かっていなければ、ちょっと怖い。
光が反論しようとしたその時、不意にノックの音が響いた。
「はいはいーっと、うわ兄貴」
「うわとは何だこら」
「!!」
タイミングが良いのか悪いのか。麦茶とスナック菓子を乗せたお盆を手にやって来たのは、虎徹の兄龍治だった。
「お邪魔していますコーチ」
「いらっしゃい。部活じゃないんだからかしこまるなって」
附属大学に通う学生である龍治だが、野球部のコーチも務めている。
体育会系ならではの俊敏さで起立し挨拶、お盆受け取りと流れるように対応した光だったが、不意に右手を掴まれ、動きが止まる。
「コーチ?」
「光、お前さ」
ジロリ、と龍治の目付きが座る。凡フライを落とした時みたいな顔だな、とは腰も上げずに見上げていた虎徹の談。
「爪伸び過ぎ」
野球選手に爪の管理は不可欠だ。ピッチャーであれば、爪が欠けたり割れたりする事で指先の感覚が鈍り、回転やリリースの精度が落ちる原因にもなりかねない。
「人差し指と中指だけ切っとけばいいと思ってるだろ。そういう奴多いけど、他の指だって割れる時は割れるからな」
「う……スミマセン」
指導者の顔をしている時の龍治は圧が強い。
大声を上げたりはしないが、何せ目力が強い。普段は人当たりが良い三枚目キャラなので分かり辛いが、黙り込むと真顔が怖いタイプだ。
「虎徹、お前今爪切り持ってるか?」
「テコ型ならあるけどニッパータイプはないぞ」
「普通のでいいから貸して。あと俺の部屋にヤスリあるから取ってきてくんね」
「りょーかい」
お前まじか、とでも言いたげな光を残して部屋を出る。むしろファインプレーだと褒めてくれても良いのだが?
「自分から押してくのは平気でも、兄貴からガンガン来られるのは未だに慣れないんだもんなぁ」
いい加減慣れろ。出会ってから何年目だと思っている、9年だぞ9年。
兄弟の父が監督を務める少年野球のチームに、光が入部してきたのが9年前。
4歳年上の龍治も当時は選手側で、五年生ながら正ピッチャー。ピッチャー希望の光から見て憧れの先輩だったし、兄とバッテリーを組みたいとキャッチャーを目指していた虎徹にも自慢の兄だった。
今の感情も昔と同じか、と言われれば悩ましい。いっそ全く違うものに変異していれば分かりやすかったのに。
現役を退いた兄の部屋は、野球に関わるもので溢れている。勿論学生なので勉強道具やファッション誌などもあるが、“野球かそれ以外か”の比率は圧倒的でさえある。
「ふっ切れろとまでは言わないけどさ、少しは開き直っちまえば良いのに。端から見たら両想いだろあれ」
「いや、やっぱ駄目だわ。そういうとこやぞ兄貴」
「は?」
虎徹が自身の部屋に戻ると、龍治が光の爪を切ってやっていた。
まぁ、そこは良い。
たぶん切り方も指導したかったのだろう。光は雑な所もあるので、細かく少しずつ切るのは性に合わないかもしれない。
だが、何故足の間に座らせた。何故背中側から腕を回した。
それはもはやバックハグの体勢である。
背後の龍治からは伺えないだろうが、一周回って微動だにしない光はスペースキャット状態だ。
いや、よく見ると耳が赤い。ロボットのようにぎこちない動きで虎徹を捉えた視線が訴える。こういうとこやぞお前の兄貴。
「なぁこの人俺の気持ち知ってるよな? 気付いててこういう事平気でするんだよな? 思わせぶりも行き過ぎると地獄なんだが?」
「虎徹、ヤスリくれー」
「聞いてすらいない!」
普段ポーカーフェイスの奴が狼狽えてると哀れだな。遠い目をした虎徹は、そっと兄にヤスリを手渡した。いっそとどめを刺してもらえ。
「くそ虎、お前のそういう所大嫌い!でも好き❤️」
「そういうのは俺に言えよー」
「「は?」」
虎徹も光も冷静ではなかった。だが作業に集中していた龍治も、ほぼ条件反射でしかない無意識の言葉だった。
「俺まだ好きって言ってもらってない」
ーー後に光は、事あるごとに「好きです」と口にする条件反射告白マシーンと化すのだが、龍治の自業自得なのでこの際置いておこう。
「ぶっちゃけあの台詞直後の記憶がない」
「オーバーキルだったんだな……」
「あれ本当に自覚なし? 確信犯でも怖いけど、あんな事言っといて付き合う気はないとか鬼か」
「まんざらでもないのは確かだし、ぶっちゃけちょっと反応楽しんでる節はあるんじゃね」
「鬼か。小悪魔か」
深々とため息を付き、己の指先を目に留めて。浮かぶのは羞恥と恋心。
「花の名前どころか、自分の爪見ただけで思い出す身体にされたんだが」
「言い方ぁ」
更に後、爪の手入れがすっかり上達した光が「爪の扱いは好きな人に触れるように」と慈愛に満ちた笑顔で教えているのを見て、膝から崩れ落ちる龍治もいるのだが。
それもまたのお話。
ここまで目を通して頂き、ありがとうございました!
兄貴、大人としては一線越えない倫理観があって立派なのだけど、ラブストーリーの相手としてはとんだくそ野郎になってきたな……。
ついでにニューフェイスの桜ちゃんは「BLはファンタジー」と言うタイプです。そういう意味でのファンタジー書き。腐バレした暁には、光くんの恋の相談相手にもなるかもしれない。
