ワイナリーにとってのB Corp認証ってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~
(第七十六回)サステナブル認証を取得するのは何のためだっけ?
前回はEUの緊急蒸留政策、復活!!のお話
前回は、EUの余剰ワイン対策という、「通好み」の話題をお届けしました。ヨーロッパのワイン生産量や消費量の長期的推移を振り返りながら、様々な関連政策のドタバタを整理しました。緊急蒸留の補助金を復活したからといって、供給量が減らなければ抜本的な解決にはほど遠いわけですが、やらないわけにもいかず、農民もデモして補助金もらったからと言って以前と同じ質や量のワインが作れる保証があるわけでもなく、なんとなく「誰得?」な政策になるのかもしれません。
企業はサステナビリティ課題への取り組みをアピール
さて、自社が環境問題や社会問題に取り組んでいることをアピールし、それを企業のブランディングや企業価値の向上につなげていこうとする努力をしている企業が多いのはご存じの通りです。その努力を客観的に評価するものとして、「ESGスコア」や「B Corp認証」などというものがあります。そうしたアピールを見て、投資家や消費者、取引先などは、この企業が環境や社会問題などのサステナビリティ課題に取り組んでいるかを判断する参考にしたりするわけです。
良くあるのは「ESGスコア」と
ESGスコアは、S&PやMSCIといった調査会社が企業のESGへの取り組みを点数化(あるいはランク付け)して各企業を横比較できるようにしてくれるものです。投資家が測る「企業経営にかかわるリスクとそれに対処する経営体制(ガバナンス)」と言えます。
「B Corp認証」
一方、B Corp認証、ESGないしSDGsについての関心・意識の高い方は良くご存知だと思います。こちらでいろいろあったので、横道が長くなりますがご説明します。B Corp(Bコーポレーション)とは、米国の非営利団体「B Lab」が運営する、環境・社会への配慮、透明性、説明責任において高い基準を満たした企業に与えられる民間認証制度です。企業の「パーパス(存在意義)」の証明という意味合いもあるとされています。
製品ではなく企業に対する認証です
これは単なる製品認証ではなく、企業全体がサステナブルで公益性の高いビジネスを行っているかが評価され、与えられる認証です。世界ではパタゴニアやダノンなどが知られていて、世界で8,000社以上が取得しています。日本では、2026年2月時点で76社が認証を取得しているそうです。
全ての利害関係者の利益を追求します
ここでの「B」はBenefit(利益)の略で、B Corpは株主に帰属する金銭的な利益だけでなく、従業員、地域社会(コミュニティ)、環境、顧客などすべてのステークホルダー(利害関係者)に対する利益を追求する企業のことを意味します。
2025年までは5つの領域で平均的に評価されればOKだった
2025年までは、ガバナンス(統治)、従業員、コミュニティ、環境、顧客という5つの領域で包括的に評価されることになっていました。その中で、B Labが定める「Bインパクト・アセスメント」で200点満点中80点以上を取得すると認証が受けられました。
ブランド価値向上などは期待できましたが…
認証取得後も、3年ごとの再認証が必要だったりしますが、公益性の高いビジネスを行っている、ないしビジネスモデルであるということで、ブランドの信頼性が向上したり、優秀な人材の確保、投資家からの評価向上などが期待できました。ということで、取得しようという企業が増えたわけですが、数が増えるといろんな問題が起きてきます。それに伴ってよろしくないケースも出てきました。
批判を巻き起こした「ネスプレッソ」認証
大きな批判を巻き起こしたのが「ネスプレッソ」の認証問題です。2022年にネスレの一事業部門である「ネスプレッソ」がB Corp認証を受けました。アルミのカプセルをマシンにセットしてコーヒーを抽出する、というアレです。
「サステナビリティの形骸化」批判
ネスレに関しては、2020年にコーヒーの供給元であるグアテマラの農園で児童労働問題が発覚していました。ということは、人権関連で低スコアなはずですが、オフィスでのリサイクル活動や社内規定の整備といったそれ以外の加点で合格ラインを超えた、ということです。これは「サステナビリティの形骸化」と批判されました。また、そもそも使い捨てカプセルでコーヒーを淹れるというビジネスモデル自体が環境に優しくないとの批判もありました。
「ESGウォッシュ」批判も
さらに親会社のネスレはコーヒー農園での児童労働だけでなく、水資源への配慮の欠如が批判されたり、カカオ農園での強制労働が批判されたりした過去もありますので、親会社の「グリーンウォッシュ」、「ESGウォッシュ」に使われているという批判も巻き起こりました。
なぜか日本ではあまり話題にならなかったみたい
認証を受けた他の企業やフェアトレード団体が抗議の公開書簡を送ったり、認証を返上して脱退する企業が出たりする事態にもなりました。なぜか日本ではあまり話題になりませんでしたが。
2026年から基準を厳格化、大変です
B Labはこうした批判や欧州のアンチ・グリーンウォッシュ規制(ECGT指令)対応のため、2026年から認証基準を厳格化しました。具体的には平均点による合格判定ではなく、必須の7項目(①目的とガバナンス、②公正な賃金、③正義・平等・多様性・包摂、④人権、⑤経済的包摂、⑥気候アクション、⑦環境管理と循環性)全てでの最低基準クリアを要求し、第三者監査を義務化します。さらに、継続的な改善の義務も課されます。「緩やかな目標」が「厳しい義務」に変わったという印象ですね。
ポジティブ、ネガティブ双方の意見
これによって、「B Corp」のブランド価値が改善する、項目が細かくなったことでやるべきことがはっきりする、というポジティブな意見もあります。一方、リソースの限られる中小企業には金銭面、事務コスト面で重荷が増えて死活問題になる、やるべきことが増えると各企業の多様性が失われるというネガティブな意見もあります。認証を取得、維持するコストを考えると、それを透明性のある形で直接環境投資などに回した方が良いので脱退や更新停止(B-exit)を考慮する企業も増えると言われています。
本題は、サステナビリティ認証って取得した方が良いのかな?
え~と、長くなりましたが、本題に戻ります。
本来のテーマは、このB Corp認証の変化を踏まえて、サステナビリティ評価って受けた方が良いの?という話です。ESGスコアもB Corp認証も、利益以外の要素も踏まえて企業価値を見る、あるいはブランド価値を考えるうえでは大事な要素になっているのは間違いないです。
メリットはあるけれどコストがかかり、これからもっと増える
高いスコア(格付け)を付与される、あるいは認証を取得することのメリットとしては、債券発行や銀行借り入れの際の金利が低くできるかもしれなかったり、優秀な人材が確保できたり、ということが挙げられます。一方、高いスコア・認証を獲得するために社内体制を整備したり、そのために外部コンサルを使ったりする、ということがありますので、コストがかかります。2026年以降は、B Corp認証の方はもっとコストがかかりそうです。
ちゃんとできるなら認証受ける必要ないんじゃない?
今や、グローバル市場で戦うための「共通言語」になっていますから、否定するつもりはさらさらないのですが、果たしてそれだけコストをかける意味合いがあるものなんだろうか?というのがわこさんの問題意識です。自律的に環境に配慮したサステナブルな経営ができているなら、あえてこうしたスコアや認証にこだわる必要はなくなってきたのではないか、ということです。
チリの2大ワインメーカーのお話をご紹介
今回、どっちが良いとか結論は出しませんが、チリの2大ワインメーカーをご紹介してみます。
自転車対アルパカ
チリのワインメーカー、最大手はVCT(Viña Concha y Toro、コンチャ・イ・トロ)です。普及価格帯では自転車マークの「コノスル」ブランドなどを中心に約10,800haの自社畑を持ち、年間販売量は3,000万ケース超とされています。一方、第2位はVSPT(Viña San Pedro Tarapacá、サン・ペドロ・タラパカ)です。普及価格帯では「アルパカ」ブランドを目にされる方が多いと思います。グループ全体で4,000ha以上の自社畑を持ち、年間販売量は1,500万ケース超と、VCTの約半分です。
両社の利益率、収益率を比較
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