企業のその人権対応って、サステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~
(第三十八回)「ビジネスと人権」の話、後ろ向きに囚われるか前向きに捉えるかで全然違う
前回は企業が東証からの要請に疲れた?というお話でした
前回は、東証の上場企業に対するアンケート調査結果をご紹介しながら、この二年間の東証からの企業価値向上要請に企業が疲れてきたかもしれない、といったお話をさせていただきました。実際には、企業価値向上を求める社内外の要請がなくなることはないわけですから、単なる株主還元だけではなくサステナブルな成長戦略を策定して実行する「ネバー・エンディング・ジャーニー」を続けるわけですが、経営トップのそのあたりの肚落ちがどうなのかな、と考えちゃうところもありました。
今回も企業経営にかかわるお話です
しばらくワインに振り切ったお話だったので、今回も企業経営にかかわるお話をしたいと思います。これまで書いたことを振り返って、企業のサステナビリティ(あるいはESG)に関わる話として、人権の話ってあまりしてなかったかもしれません。シャンパーニュの労働条件改善の話とかは書きましたけど(その後どうなったのか話は伝わってこないのですが)。
わこさんの考え方をお話していなかった「ビジネスと人権」について
なので、今回は「ビジネスと人権」について、そもそものところから何でこうなったのかのわこさんなりの解釈を整理したいと思います。まずもって、なぜ企業が人権対応しなきゃいけないのか。わこさん解釈は、国連が国への働きかけに限界をみて企業に狙いを定めているからです。
国を動かせない国連が企業を動かした
国連としては、世界中の誰もが安全で健康で自由に暮らせるように加盟各国に働きかけを行います。建前はそうでも、一歩間違えれば内政干渉です。独裁的な君主のいる国や全体主義的な国では言論の自由もありません。じゃあ、どうするか?ということで企業を使うんです。グローバルにバリューチェーン(サプライチェーン)を持っている企業にバリューチェーン上の人権リスクを減らすように働きかけをすれば、状況が改善するんじゃない?ということで制定されたのが2011年のラギー原則だと思います。
ラギー原則で企業を人権対応に巻き込んだ
「ビジネスと人権」を語るときに念仏のように出てくるこの原則には柱が3本あります。①国家には人権を保護する義務がある。②企業には人権を尊重する責任がある。③人権侵害への救済のアクセスは国および企業が提供する必要がある。ということなんですが、ここのキモが②です。人権尊重の枠組みの中に企業を取り込んじゃってるわけです。企業を取り込むと、その企業に、人権侵害のリスクがあると評判悪くなるよ、なんてプレッシャーをかけることができるようになったりするわけです。
イギリスの現代奴隷法で動きが強まっていた
国連は各国にビジネスと人権に関する行動計画を策定することを求め、2013年のオランダを皮切りに制定に動く国が増えました。この流れを強めたのが2015年に制定されたイギリスの現代奴隷法です。これは、イギリスで何らかのビジネスに関わってる企業全てを巻き込む(条件はありますが)ものなので、実質的にグローバル企業はバリューチェーンにかかわる人権問題に対応しなきゃいけないということになりました。
株主資本主義への反省も流れに拍車
その上に2019年のアメリカの財界ロビー団体のビジネス・ラウンドテーブルが株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換をぶち上げました。
グローバルなバリューチェーンを考えたときに、生産コストの抑制のために児童労働とか労働搾取とかいった人権侵害が起きていることが指摘され、利益を上げることを優先しすぎる株主資本主義に対する反省が背景になっています。
ということで企業に関わる様々なステークホルダーのことを考慮して、身綺麗に利益を上げていきましょう、というステークホルダー資本主義が意識されるようになったわけです。美しい流れですね。
そもそも政府が外部不経済への対処ができないのはなぜ?
脱線しますが、企業活動などによって生じた、あるいは増幅された、社会や経済に対するネガティブな副産物(難しい言葉が好きな人は外部不経済って言います)を企業によって軽減させようという動きって、気候変動対策とも通じるところがあると思ってます。経済学的には外部不経済は市場の失敗なので対処は政府の役割なんですが、それだけ各国政府がダメダメ(というか優先順位をつけた政策運営ができない)ということでしょうか。なんででしょう?偉い人に教えて欲しい。
日本の対応は2020年ごろからやっと本格化
戻ります。こうやって、日本企業への包囲網がジワジワ狭まってきたわけですが、国連からの要請を受けた日本政府の対応はごゆっくりでした。2020年10月にやっと日本政府としての行動計画を制定しました。それを踏まえて、外務省と経済産業省が共同で上場企業にサーベイを行い2021年11月には「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」なんてのも発表しました(suppiychain_chosa.pdf(このリンク先の表記自体が恥ずかしい間違い探し状態…))。
最初の人権取り組みのサーベイは残念な結果
この結果は、ちょっと残念なものでした。まず回答率が全上場企業(当時2786社)の27%(760社)。そのうち人権デューデリジェンスを実施しているのが約半分、さらに間接仕入れ先(直接の仕入れ先のさらに仕入れ先ということですね)まで実施しているのが4分の1。回答していない会社が、積極的に人権デューデリジェンスしているとは思えないので、状況はお寒い限り、ということでした。
これを皮切りに動きを強めるのかな?と期待したのですが…
ただこの時は、これだけやってないという結果を出したということでむしろこの後やる気を出して企業の取り組みが加速するのかな、と思いました。少なくとも、毎年サーベイして進捗の確認をするのかな、を期待していました。ところが残念ながら、今のところ(3年半たってますが)このサーベイはこれっきり。え〜ッ?
企業の人権対応の中心は人権方針策定とデューデリジェンス実施
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