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そのアニマルウェルフェアってサステナブルですか? ~わこさんのワイン片手の経済視点~

(第三十回)鶏卵の価格上昇がエシカル消費喚起のチャンスだと思いませんか?

前回はワイン・コングロマリットの中でワイン事業撤退も起きているというお話

前回は、グローバルなワインの需給緩和がワイン・コングロマリットの事業構造を変えている、というお話をしました。個々の企業行動としては、収益出さなきゃいけないから当たり前ですよね。だけど、企業が需給調整してくれるわけじゃないし、ワインの供給過剰が調整されていく中で普及価格帯の生産地ではまだいろんなことが起こりそうです。

卵の値段が高い!!ってのはエシカル消費の追い風なのでは?

今回は、このところの食品価格の値上がりが、エシカル消費的な動きにとって追い風になってるんじゃないの?という話をしてみたいと思います。とっかかりになるのが卵のお値段。農水省によれば、2025年3月調査で10個入パックの小売価格は286円です。これは、昨年4月には244円でしたから、2割弱の上昇です。しかも、スーパーだとこのところ入荷が不安定な時もあります。

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/kouri/k_gyuniku/attach/pdf/index-44.pdf

「平飼い」卵との価格差が縮小している

そこで目につくのが、少しお高めの卵たち。その中に、「平飼い」とかうたっている卵があります。これが、モノによるんですが、スーパーで売ってる「平飼い」の中で安いものだと6個入りパックで270~280円くらい。一個当たりの価格比2倍を切るかな、というレベルになってきました。そして割高ではありますが(だからこそ?)棚にはある。このくらいだったら我慢できるかな、なんだか良さげなイメージあるし。という消費者が増えてきてもいいかもしれません。

「平飼い」ってなあに?

そもそも、「平飼い」って何のことか、知らない人は知りません。英語では「ケージフリー(cage free) 」とか「フリーレンジ(free range)」といわれ(細かい規定はいろいろあるみたいですが)、ニワトリさんをケージ(籠)の中ではなく広い空間で伸び伸びと、場合によってはエサなどにもこだわって健康に飼育して、生んでもらった卵をいただく、といったものです。

ケージ飼いに比べると手間がかかって値段は高く

エサにいろんな薬とか混ぜ物をしてないんじゃないかとか、空間に余裕をもって飼育するとか、とっても健康的なイメージがあります。ただ、外の世界との接触が多くなるので鳥インフルエンザなど伝染病が持ち込まれやすくなるんじゃないかとか、広いところに出るとニワトリさんの野生が目覚めてケンカしてケガしやすいんじゃないか、生んだ卵を探して集めるのが大変だとかいったマイナス面も指摘されています(推進派の方々のデータでは否定されてますが)。いずれにせよケージ飼いに比べて管理に手間がかかるというのも想像できるので、価格が高くなるのもしょうがないかな、というところは理解できます。

飼育動物の暮らしをよりよくすべき、という「アニマルウェルフェア」

こういった、家畜として、あるいは養鶏として飼育している動物にストレスをかけずに命を全うしていただきましょう、という考え方として、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」というものがあります。ここ、誤解を招くといろいろ大変なので少し説明させてください。動物愛護ともヴィーガンとも違う考え方です。

動物愛護ともヴィーガンとも違う考え方です

動物が可愛いから、賢いから大事にしましょう、人間の好き勝手に動物の生命をもてあそんじゃいけません、という人間側の理屈が動物愛護です。アニマルウェルフェアは、動物がそれぞれ(本能に従って)ストレスなく健康に暮らし、苦しむことなく一生を全うしていただきましょう、という動物目線のお話です。ただ、あとでも書きますが、その飼っている動物食べてもいいんです。あれ?

そして、動物愛護と重なるところがありますが、動物の生命を大切にしようといった考え方も含めて(別の理由もいろいろありますが)動物を食べるのをやめて菜食しよう、というのがヴィーガンです。ややこしいですか?

元々、家畜の飼育管理を改善すべきという考え方で、食肉を否定してはいない

このアニマルウェルフェアについて少し深掘りします。この考え方は、1960年代のイギリスで出てきたと言われています。家畜の劣悪な飼育管理を改善させ、飼育されている動物(家畜だけでなくペットや実験動物など人間が飼育している動物すべて)が健康でストレスの少ない状況で幸福に、環境とも調和しながら暮らすようにしよう、という考え方です。

アニマルウェルフェアの「5つの自由」

で、イギリスでは動物福祉法に「5つの自由」が示されていて、これがアニマルウェルフェアの基本方針になっています。
1.飢えや渇きからの自由(給餌・給水の確保)
2.不快からの自由(適切な飼育環境の供給)
3.痛み、損傷、疾病からの自由(予防・診断・治療の適用)
4.本来の行動を行う自由(適切な空間、刺激、仲間の存在)
5.恐怖および抑圧からの自由(適切な取扱い)

鶏のケージ飼いや豚の妊娠ストールがやり玉

にこの文脈でアニマルウェルフェアに反する具体例として挙げられるのが、鶏のケージ飼いや豚の妊娠ストール(妊娠した雌豚を1頭ずつ飼育する檻に入れて、体調管理などが行いやすいようにする)飼育といったことです。

普通の養鶏業者にとっては大変な話

こんなお話を国際獣疫事務局(OIE)って機関が進めていて、2020年(当初予定)の東京オリンピックに向けて、日本も国際基準に対応しなさい!!という話になってきたわけですが、これって日本の普通の養鶏業者にすると、大変なパラダイムシフトを要求されるようなものでした。

「物価の優等生」だった卵は「工業製品」だから

脱線します。日本で鶏卵が長きにわたって「物価の優等生」と言われてきたのは、鶏卵が「工業製品」だったからだと思ってます。装置産業で原材料を投入して効率を追求する生産管理をして、数量を確保することを優先してきたわけですから。最近は原材料価格の高騰で影響を吸収しきれなくなってきたのは他の工業製品と似た形です。

贈賄事件も起きたってご記憶ですか?

それを、生産装置のパーツであるニワトリさんのストレスをケアしなさい、とか言われると、生産のやり方自体を工業から転換するみたいな話になります。そうすると、「大臣、これで一つなんとかして下さい」、ということで鶏卵大手業者が農水大臣に贈賄するなんてことも2018年に起きたわけです。

アニマルウェルフェア、結局は生命をいただくんです

アニマルウェルフェアに戻ります。ここまで読んで、「なんか胡散臭くない?」と思った方もいると思います。さっきも書きましたが、家畜が生きている間ストレスなく育つように、というのがアニマルウェルフェアなんですが、最後は食べるためなのか実験のためなのかはともかく、人間の都合で生命をいただくわけです。罪深いですね。屠殺の方法についても、家畜にできるだけショックを与えない方法(詳しくは書きません)でやりましょう、とかガイドラインもあるんですが、でも結局生命をいただくわけです。

アニマルウェルフェアが肉食バリューチェーンの付加価値を生むか、がポイント

で、わこさんとしてはそれを生業にしている人がいる以上、その生業がアニマルウェルフェアによってよりサステナブルになるか、より付加価値を生むものになるかどうかかどうかを考えたいと思ってます。かわいそうだからやめるべきだ、とかいうナイーブな(英語本来の意味です)ご意見は、市街地に迷い込んだ熊を駆除せずに山に返せ!!と言っているのとドングリコロコロの背比べです。言うのであれば、肉食のバリューチェーン上で働く人や企業の受け皿まで考えないと無責任ですよね。

品質改善と値段の見合い、ということでエシカル消費と論点は同じに

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