リオハのワインって、サステナブルですか?(上)~わこさんのワイン片手の経済視点~
(第三十五回)DipWSET卒業式&ご褒美旅行記前半です
リオハのワイン自体はサステナブルです、念のため
前回は、大型連休前にわこさんがワインセミナーさせていただいたお話をしながら、対ドナルドで「面従腹背」がポイントになるのでは、という概略をお話ししました。セミナーで取り上げた、様々な産地で栽培される品種のシャルドネ、やっぱり奥深いです。この品種が分かってるとかいう人がいたら、信用しちゃいけません。
今回と次回はDipWSET卒業式の後のご褒美旅行のお話
さて、大型連休中ですが、わこさんは昨年合格したWSETのLevel4、Diplomaの卒業式のためにロンドンに行ってきました。そのあと、自分へのご褒美として、ワイン産地として有名なスペインのリオハに行ってきましたので、今回はそのお話をします。訪問したワインメーカーの紹介をより多くの人に読んでいただきたいということで、今回も無料設定にします(引き続きチップは大歓迎です。次回の視察旅行の積み立ての足しにさせていただきます)。
DipWSET卒業式がロンドンのギルドホールで行われました
4月30日(水)にロンドンのシティにある、旧市庁舎であるギルドホールで、前の年度(2023/24)にDiplomaに合格した皆さんの卒業式が行われました。この年度は世界で809名がDiplomaに合格し、当日参加できた600人くらいが卒業式に出席しました。日本では唯一の公認プログラム・プロバイダー(APP)のキャプランを通じて受検した34名が合格しています。海外のAPPを通じて合格した日本人もいますし、キャプランで受検した日本人じゃない方もいますので、日本人が何人だ?ってのは数えないと正確にはわかりません。

式典自体はよくあるパターン
式典自体は、WSETの偉い人の挨拶、合格者一人ひとりが壇上に上がって名誉総裁のローラ・カテナ博士(アルゼンチンのメジャー生産者であるボデガ・カテナ・サパタの4代目で、自社でワイン研究所を創設した方です)と写真を撮って、成績優秀者が発表されて、というよくあるパターンです。自分自身、よく頑張ったな、一緒に勉強した皆さんも良かったですね、という感慨を新たにしました。

よく頑張りました、ですがこの資格をどう活かすかの方が大事
Diplomaの資格を取った人は、世界的にはワイン関係のお仕事している人が多いみたいですが、今回の最優秀表彰者はお医者さんだって。いずれにしても、資格は取ることが目的ではなく、取った後どうするの、というのが重要だと思います。私はこうやって自分の知識を確認、アップデートしながら細々とワインと経済や世界のサステナビリティを考えているわけです。
ご褒美旅行でスペインのリオハに行きました
まあ、それは良いとして、せっかくロンドンまで行ったので、そのついでにどこかのワイン産地に行きましょう、ということでツイヂラボのDiploma夫妻とスペインのリオハに行きました。
リオハはスペインワインの重要な生産地
リオハはスペインで最も有名なワイン産地の一つです。フランスのボルドーと比較的近いこともあり、19世紀にフィロキセラという害虫がフランスのワイン産地に致命的な打撃を与えたときに、代替ワインの供給地として注目されました。今回見学したC.V.N.E.があるアロという町は、ボルドー向けにワインが出荷された鉄道駅がある、リオハのワイン生産の重要な拠点です。
品質管理や向上に取り組み、ワイン産地としての格付けも最上位
また、リオハはスペインの産地の中で最も早く地域としての品質管理や向上に取り組み、20世紀初めからワイン輸出協会やワインの原産地保護制度を作りました。そんなこともあって、第二次世界大戦とその後のフランコ将軍独裁時代が終わって1986年にEUに加盟したあと、いち早く1991年に原産地呼称ワイン(Denominación de Origen (DO))の上位呼称である特選原産地呼称ワイン(Denominación de Origen Calificada (DOCa)の地域に認定されています。スペインでこのDOCaに指定されているのは、リオハとプリオラート(ここではカタルーニャ語でDOCQと表記しますが)だけです。
単なる旅行じゃなくて問題意識は持って訪問します
今回リオハに行って、生産者に聞いてみたかった問題意識は、①素人目に見たときのスペインワインの格付けと品質のギャップが感じられてしまうことをどう考えているのか、②地域としてワインを生産するリオハの中で単一畑の個性を活かす動きは高まっているのか、③赤ワイン、特にテンプラニーリョへの依存が高いことに対してどういった対応をしているのか(いないのか)といったあたりです。
スペインワインの格付けってわかりにくい面が
スペインのワインを選ぶときに、格付け(あるいはカテゴリー分け)が分かりにくくて、どう選べばいいかよくわからない、というお話を時々聞きます。そもそも地域ごとの特長がよく知られていない、というのもありますが、カテゴリー分けが地域に対して行われているものと、熟成期間に対して行われているものとがあることと、地域に対してのカテゴリー分けも、地域の格付けの上位概念として畑の格付けが位置づけられているとは限らないから、ということが背景になるのかな、と思います。
産地として最高評価なので畑の評価を受ける必要がないリオハ
リオハはDOCaですから産地として最高ランクの評価を受けています。一方で、スペインワインの格付けピラミッドをみると、一番上がVino de Pago(VP)ということになってるんですが、これは畑に与えられるものです。地域としては評価されていない(例えばラ・マンチャ)けれど、単一畑としては品質が最上、とされる畑に与えられています。リオハの人達は、自分達の地域が最高、と考えていて、この後お話するような伝統的なワイン造りの考え方を踏まえると、VPという格付けを取りに行く必要はない、と考えているのかなと思います。そうは言っても、畑の個性を活かしたワインを造りたい、という動きもあるわけで、そのお話に興味もあります。
熟成期間が長ければ良いワインだという誤解を与えかねない
もう一つ、熟成の期間によってのカテゴリー分けもあります。細かい話は教科書じゃないのでしませんが、基本的な規定は期間で、熟成期間によって「クリアンサ」、「レゼルバ」、「グランレゼルバ」というラベリングができるようになります。しかし、収穫量を含むブドウの栽培や醸造方法についての規定等はありません。そうすると、例えば大した品質じゃないブドウを醸造したワインを単に合計5年熟成(うち3年樽熟成)させただけで「グランレゼルバ」とラベリングして出荷できる、ということになります。
5年熟成させるって、それはそれで熟成庫のコストがかかりますから大変ではありますが、本当は熟成には適していない品質のワインを消費者が飲んじゃったりすることにもなります。それで、「スペインで一番良い産地のリオハってところのグランレゼルバとかいう最高カテゴリーのワイン飲んだんだけど大したことないな」といった刷り込みができちゃったりします。このあたりのギャップをどう埋めていくか、というのもリオハのワイン、ひいてはスペインワインの課題だったりするのかな、と思います。
リオハは赤ワイン、特にテンプラニーリョの一本足打法にみえる
それに加えて、リオハのワインは全体の約9割が赤ワインで、栽培されている黒ブドウの9割がテンプラニーリョ、という一本足打法的な状況になっている、という点も見逃せません。テンプラニーリョは樹勢が強くて収量が上がりやすいこともあって栽培者には人気らしいのですが、赤ワインに対する世界的な需要が落ちている状況にどう対応しようとしているか、という話も聞きたいな、と思ってました。
C.V.N.E.に大変お世話になりました
今回、お世話になったワインメーカーは、C.V.N.E.です(アポイントをお願いするときに、輸入代理店の三国ワイン様には大変お世話になりました。ありがとうございます。)。傘下にリオハだけでなく、リベラ・デル・デュエロ、リアス・バイシャス、ルエダ、カヴァなどスペイン各地のワイナリーがあります。C.V.N.E.はCompañía Vinícola del Norte de España(北スペインのワイン会社)の略称です。主要なワインブランドにCUNE(クネ)があるのですが、会社名の誤植をそのままブランド名にした、というのはよく出てくる話です。

インペリアルとクネのお話を中心に
リオハで造られている赤ワインということでは、フラッグシップのインペリアルとクネのブランドが有名で、今回はこのあたりのお話を聞かせてもらいました。インペリアルについては、平均樹齢が40年、ブドウ栽培は株仕立てで、酸味やボディといった要素を考慮して3つの地区で造られたワインをブレンドして作るとのことです。
インペリアルはコストをいとわない造り
ブドウは当然手摘み、房ごと冷蔵した後で光学選果機を通して醸造に入り、フレンチオークとアメリカンオークの樽で熟成され、といった形で(コストをいとわない)最高級のワインが作られます。テンプラニーリョ85%でグラシアーノ、マズエロ(カリニャン)とブレンドして酸味やタンニンを加える形になっています。C.V.N.E.のモットーが「最高のワインを作る」というものであることはウェブサイトなどに書いてありますが、リオハで最高のワインを作ろうという意欲を強く感じました。


インペリアルとクネの違いもいろいろお聞きしました
インペリアルとクネの違い、ということでは、ブドウの品質と生産ラインということだと理解しました。クネの方が大量に作られるということでステンレスタンクを工程に組み込んだりしています。ブドウの品質もクネの方では自社畑だけではなく半分くらい買い入れブドウも使うということです。ただ、買いブドウも長期契約で指導などもしている栽培農家からのものなので決してブドウの質が悪いということではない、と説明いただきました。

試飲は9種類も出していただきました
C.V.N.E.でテイスティングをさせていただいたのはなんと9種類でした。うち4種が白ということで、先方が力を入れていることの現れかと思います。聞いてみたかった、赤偏重のワイン産地というイメージを少し変えよう、ということかもしれません。とはいっても、4本のうち2種はリオハではなく、ガリシア地方でC.V.N.E.の傘下にあるDOリアス・バイシャスのラ・ヴァルが造ったアルバリーニョとDOバルデオラスのガリルが造ったゴッデーリョでした。ゴッデーリョは初めて飲んだ品種ですが、塩味とミネラル感がしっかりした飲みごたえのあるワインでした。



リオハの白ワイン、産地イメージを変えてくれそう
DOCaリオハの白ブドウ品種はヴィウラで、これはカヴァを造るカタルーニャ地方ではマカベオと呼ばれている品種です。リオハでこの品種を使った白ワインを初めて造ったのがC.V.N.E.ということでした。
モノポールというブランドで出しているシリーズですが、これがとても良い出来栄えです。酸味はやや高めで白い花の香りや熟した柑橘の香りがして、切れ味爽やかですが、このまま瓶熟成させていくともしかしたらハチミツ香とか出てくるんじゃないかと思わせてくれるような味わいでした。
そして、もう一種の白が、ヴィウラで造ったワインをシェリー酒(マンサリーニャ)を造るときに使った樽で熟成させたものとのことでした。こちらはシェリーを造るときのフロール(産膜酵母)の香りや味わいがワインに反映され、フレッシュなんだけど複雑性があるという非常に楽しいワインになっています。量的に圧倒的に赤ワインを造っている産地ではありますが、産地イメージを変えてくれると良いな、と感じました。
熟成期間のカテゴライズをラベリングに使う理由を聞いてみました
赤の方は、最初はCUNEの3本だけでした。熟成期間に応じたカテゴリー分けの「クリアンサ」、「レゼルバ」、「グランレゼルバ」の3本です。ちなみに、クリアンサより熟成期間が短いものをホーへンと呼んだりしますが、クネにはないそうです。ただ、上にも書いたようにこのカテゴリー分けがワインの品質を表すわけじゃないのになぜこのラベリングを使うのかな、という疑問はありますので、それを聞いてみました。
答えは、それぞれ品種のブレンド比率も樽の使い方も違っていて、狙っているスタイルが違うとのこと。具体的には、多くの人がリオハワインに持っているイメージを表現したものが「クリアンサ」、クネの中で今最上のワインを表現したものが「グランレゼルバ」、今後のトレンドを考えて作り方を変えた(今回に関してはフルーティーな作りをイメージした)ものが「レゼルバ」とのことでした。
ラベリングは意図するスタイルを表している、と理解
つまり、「クリアンサ」は「トラディショナル」スタイル。テンプラニーリョを主役にアメリカンオークをしっかり使っている。「グランレゼルバ」は「クラシック」スタイル。フレンチオークの比率を上げ、品種ブレンドもテンプラニーリョ85%、グラシアーノ10%、マズエロ5%にしてかっちりと作り上げている。「レゼルバ」は「チャレンジング」スタイル。フレンチオークは10%でブレンドも4品種(うまく聞き取れなかった)を使った、次のトレンドを見据えている。ということか?と聞いたら、うまいこと言うね、みたいな反応が返ってきました。
カテゴライズに課題がある中で、マーケティングツールとして使っている印象
つまり、ラベリングのカテゴリーは、クネにとっては品質の差を表すものではなく、スタイルを表したマーケティング・ツールだということなんでしょう。スペインワインのカテゴライズに課題があるということは認識したうえで、どんなスタイルのワインが造りたいかというフィロソフィーが大事で、ワインの表現手段として、みんなが知ってるラベリングを使っている、ということなんだな、と受け取りました。
飲み手の方も、そういうことであればお財布の具合と、どんなスタイルのリオハが飲みたいかということと相談しながら飲めるわけです。これがリオハの共通言語みたいになれば良いのにな、と飲み手代表としては思っちゃいます。

メンシアも個性的、インペリアルは圧倒的
そして、この後で2種類試飲が追加されました。一つがDOバルデオラス、ガリルのメンシアです。大樽で熟成しているという話ですから、フルーティーな味わいを前面に出した、酸味の高いフルーティーなワインですが、なんとなく土っぽい感じもして、単に軽いだけじゃない味わいを感じさせてくれます。
リオハのベストオブベスト、ここにあり!!
そして、C.V.N.E.のフラッグシップワイン、インペリアルのグランレゼルバも出してもらえました。クネのグランレゼルバも素晴らしいワインだったのですが、香りをとった瞬間に圧倒されます。黒系果実やスパイス、って要素を上げることはできるのですが、酸もタンニンもアルコールもすべての要素がハイレベルで調和してどっかーーんときます。リオハのベストオブベスト、ここにあり!!という感じですね。
お話は次回に続きます
今回はもう一つのワインメーカーにお邪魔したのですが、ここまででかなり長くなってしまったので、次回、その話と今回のリオハ訪問のラップアップをしたいと思います。さて、わこさんの問題意識はどう整理されたのでしょうか。
