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リオハのワインって、サステナブルですか?(下)~わこさんのワイン片手の経済視点~

(第三十六回)DipWSET卒業式&ご褒美旅行記後半です

前回に続き、わこさん旅行記です

前回は、大型連休中にロンドンでDipWSET卒業式に出た後、リオハに行ってC.V.N.E.を訪問し、ワイナリーでフラッグシップのインペリアルとクネの違いなど、リオハという地域の中でいかに高品質のワインを作るのかという取り組みのお話をわこさんの勝手解釈でお伝えしました。

リオハワインのわこさん解釈をまとめたいです

今回はそれに続いてもう一つワイナリーを訪問したお話と、今回見た限りでのリオハワインに対する考え方をまとめてみたいと思います。正直、もっと取材が必要だし、これでリオハが分かったなんてとても言えませんが、楽しくお読みいただければありがたいです。今回もリオハのワインに興味を持ってもらえる人が増えるように、無料設定にしています。

Continoを訪問しました

C.V.N.E.を訪問した次の日、同じグループの生産者Continoを訪問しました。こちらは62ヘクタールの自社畑を持ち、そこで採れたブドウだけを使って(ほかの農家からブドウを買ったりせずに)ワインを作る、ボルドーのシャトーのようなエステート型のワイナリーです。リオハ地方の中心都市、ログローニョの隣町というロケーションで、車で15分くらいの距離ではあるのですが、ワイナリーまで畑の中の未舗装の道を通るような所になります。

スペインのブドウ畑は株仕立てが伝統的

で、そのブドウ畑なのですが、スペインでは多くの地域で伝統的に「株仕立て(ブッシュ・ヴァイン)」というブドウの樹の植え方が行われてきました。ブドウ畑というと、ワインの生産地ではブドウの樹を垣根のようにきれいに整列させて、横に張ったワイヤーに枝を沿わせてブドウを成らせていく「垣根仕立て」の姿を思い浮かべる人が多いかと思います。あるいは、ブドウ狩りをするブドウ園だと、ブドウ棚を作ってそこに枝を絡めて棚の下にブドウの房が成って垂れ下がってくる「棚仕立て」、というイメージを持つ方もいるでしょう。ところがスペインでは株仕立てが主流。

株仕立てのテンプラニーリョ。ブドウがどうやってなるのか想像しにくいですね

スペインが栽培面積世界一なのに生産量3位の理由

今回撮った写真を見ると、特に今年の枝が出てくる前ですから、切り株だかなんだか良くわからん木が並んでいるように見えて、とてもここからブドウが成るとは想像しにくいですよね。この仕立て方は、乾燥していたり暑くてブドウを密植することが適していないと考えられたりする地域などで採用されるものです。密植しないことや、栽培のコントロールがしにくいこと、機械による作業に適していないことなどから、ブドウの収量が垣根仕立てや棚仕立てに比べて落ちます。なので、スペインはワイン用ブドウの栽培面積では世界一なのですが、ワインの生産量では世界3位になるわけです。

リオハ初のエステート型ワイナリー

Continoに着いて、まずはワイナリーの説明を受けます。このワイナリー、1973年にC.V.N.E.が購入しましたが、その時から自社ブドウのみでこの土地の個性(テロワール)を活かしたワインを造りたい、というコンセプトで運営されています。スペインでは伝統的に小規模でブドウ栽培をする農家が多く、そこからブドウを買ってワインを製造する作り方が一般的です。

畑の個性をワインに表現することを目指して

リオハも例外ではないわけですが、Continoはそれに対してブドウ栽培からワイン造りまで自前で完結してワイナリーの目の前にある畑の個性をワインに表現しようという、伝統的なリオハワインの造り方と違う形を50年以上前から目指していた、ということです。

元々16世紀からワイン造りをしていた歴史ある建物

このContino、外側は古い石造りの建物です。この建物は16世紀からワイン造りに使われていました。そして、以前カトリック君主に仕える兵士を供出した将校をContinoと呼んでいたところからこのワイナリーの名前が付けられたということです。地下には、16世紀から使われていたとされるワイナリーの跡があり、現在はボトル詰めしたワインの熟成庫として使われています。歴史と新しいコンセプトが共存している、ストーリーのある素敵なワイナリーです。

建物の外観(中庭です)

畑にも入れてもらえました

ワイナリーのそばに自社のブドウ畑があるということで、畑にも入れていただきました。このContino、地中海に流れ込むエブロ川のほとりにあり、川が丁度湾曲したところに位置しています。それに合わせた形で3種類ほどの土壌の畑が層を成してます。川から離れたところが石灰岩質の粘土、川に少し近くなると石混じりの石灰岩質土壌、川に近い所が砂質土壌だそうです。

畑が川に向かって緩やかに下っています。足元は粘土質。奥の白っぽいところは土壌がもっと石混じりだそうです

エブロ川の湾曲に沿って微妙に異なる栽培環境

それぞれ、水捌けが違いますから、育ちやすいブドウの種類や同じブドウでも育ち方が違います。また、川との距離や角度、風向きの組み合わせによって、日当たりや風通しが微妙に違ってきます。そうした栽培環境と、毎年の実際の天候による影響を見極めながらブドウを栽培し、収穫し、個々のワインとして造っていくわけです。ワクワク。

粘土の土は雨上がりでネバネバ

畑に入れていただきました。前の日に雨が降ったので、粘土の畑はネバネバでした。靴を取られながらテンプラニーリョの樹まで行き、葉の見ると、裏側に細かい毛が生えています。これがこの品種の特徴とか、どこかで読んだ気はしますが、百聞は一見にしかず。

株仕立ての疑問をいろいろ聞きました

株仕立ては見慣れません。垣根とか棚とかが当たり前だと思ってると、枝が折れたりしないのか?ブドウがちゃんと成るのか?というのは当然出てくる疑問。聞いてみました。樹齢をある程度重ねると幹もしっかりしてその年の新梢を支えられるし、そこに成ってブドウがぶら下がっても折れないそうです。それにしても、樹勢のコントロールとか、日当たりの調整とか難しそうですね。

古木になると良さが出てくるのでシニア活用

ただ、株仕立てのまま植えて30年以上経って古木と言われるベテランの域に達すると、ブドウの木の年の功が発揮されるようになって、収量は減るのですが果実の風味が凝縮するようになってくるので、それを活用するようになっているのが現実です。シニアの時代です、ご同輩(笑)。

ワイナリーの設計は相当工夫されてます

畑を一回りして、ワイナリーに。外観は普通の倉庫ですが、内部は相当工夫がされてます。ブドウの搬入場所は倉庫の上の方にあり、そこで選果して醸造用の大型ステンレスタンクや樽に落とし込むようになってます。そこでアルコール発酵した後、ステンレスタンク下にコンクリートタンクがあり、そこに流し込んでマロラクティック転換(MLC)して、そこから樽詰め。極力重力の力だけで作業を進めよう(グラビティ・フローと言います)という考え方で設計されています。節電にも環境配慮にもなるので、こうした設計になっているワイナリーは増えているとされています。

醸造施設。ステンレスタンクの下にコンクリートタンク。奥には大樽の醸造樽

樽貯蔵庫でも様々なトライアル

その後は、樽貯蔵庫も見せてもらいましたが、標準的な木樽だけでなく、大樽や卵型コンクリートタンクなども熟成に使おうという、様々なトライアルをしているところも見せてもらいました。

樽熟成庫。奥には熟成用大樽
こちらも樽熟成庫(観光用?)

地下のカーヴは圧巻

圧巻だったのは、16世紀からワイン造りに使っていたという地下のカーヴ。今は醸造と樽熟成はこちらではやってなくて、瓶熟成庫ですが、ボトルをビッシリ並べて積み上げてあります。さらに、昔からのヴィンテージワインを貯めておく鍵のかかった一画もあります。歴史です。

地下カーヴの瓶熟成庫。地震のある日本じゃ絶対無理
年ごとのボトルを保管するセラー。さすがに鍵がかかってます

ワインたちとご対面

さて、昨年リニューアルしたという、テイスティングルームに上がってきました。Contino こだわりのワインたちとのご対面。全てのワインがこちらの畑のブドウで造られていますから、単一畑(シングルヴィンヤード)ワインとなり、エチケットにはキッチリとその旨記されております。

右から試飲しました。エチケットの上の真ん中にはそれぞれ’Single Vineyard'と記載されてます

次を見据えた取り組みが感じられた3種類

最初に出てきたのは3種類。いずれも、Continoとして次のトレンドを見据えた取り組みを示していると感じました。

ヴィウラの白ワイン、美味しいです

白1種類と赤2種類。白は、ヴィウラとガルナッチャ・ブランのブレンド。C.V.N.E.でもヴィウラは飲みましたが、美味しく造ると美味しくできる品種やんですね。川の側の畑でブドウが栽培されているとのことですが、キレイなミネラル感が全体を引き締め、熟した核果実の香りとともに、ナッツのような熟成香のヒントも感じられます。もっと熟成しそうなワインです。

リオハでガルナッチャ100%?親しみやすい一本

赤の一本目はガルナッチャ。リオハでこの品種100%のワインを飲むとは思わなかったです。実際、これは挑戦、というコメントも。赤果実主体のチャーミングな香りですが、大樽熟成とのことなので、余り酸化させたくないという意図がうまく表現できていると言えます。その一方でこの品種のややゲーミーでスパイシーな熟成香のヒントもありました。全体として親しみやすい印象のワインです。

サブ品種じゃねーよ、という主張のグラシアーノ

赤の二本目はなんとグラシアーノ100%。グラシアーノは通常テンプラニーリョに酸味やタンニンを加えるためのブレンド相手というサブ品種の位置づけですが、それを独り立ちさせようというワインです。黒果実主体で高い酸味のワインをしっかりと樽を使うことでうまくコントロールしたんだな、ということを感じさせてくれる出来栄えです。ミントなどのスパイシーさもあり、チョコレートやタバコ、皮革のような熟成感のヒントも出ている、今後何年かの熟成のポテンシャルを感じさせてくれるとっても素敵なワインです。

グランレゼルバも出していただきました。奥深さを感じます

これで終わりかと思ったら、その後でグランレゼルバをヴィンテージ違いで出してくれました。2017年と2018年です。いずれもテンプラニーリョが8割程度、グラシアーノ10%、あとはマズエロとガルナッチャというブレンド比率ですが、2017年は気温が低めで難しかった年、2018年は普通の年だったとのことです。ただ、いずれもとても素晴らしいワインでした。果実味は凝縮しているのですが、それが出過ぎず、優しくまとまっています。ただ、うま味というか深みというか奥深さを感じさせる味わいが広がりました。こういうのをいただくと、ワインの造り手ってすごいな、と改めて感じます。

全体としてフルーティ&エレガント。これがシングルヴィンヤードの良さということでしょうか

全体として、Continoのワイン、フルーティ&エレガントです。アルコール度数も、四捨五入でギリ14%くらいの、ボリューム感を前面に出さない造りです。結果として畑の個性とも言える、うま味とか深みとかが感じられやすいんだろうなと改めて整理した次第です。それがシングルヴィンヤードの良さなんでしょうね。

わこさんの問題意識の答え合わせ

前回、リオハに訪れるにあたってのわこさんの問題意識として、①素人目に見たときのスペインワインの格付けと品質のギャップが感じられてしまうことをどう考えているのか、②地域としてワインを生産するリオハの中で単一畑の個性を活かす動きは高まっているのか、③赤ワイン、特にテンプラニーリョへの依存が高いことに対してどういった対応をしているのか(いないのか)、を挙げました。①について、前回C.V.N.E.としてのスタンスを垣間見させてもらいました。

Continoとしての答えを聞かせていただいたと思います

②について、少なくともContinoはこの動きを体現しているということでしょう。マーケティング的に追い風と感じているか、と聞いてみたところ、間違いなくプラスになってる、という答えでした。そして、③についても、Continoとして様々なトライアルをしていることは十分に感じられました。

リオハのイメージを変えていこうという努力はポジティブ

特に、白ワインについては、前日のC.V.N.E.もそうでしたが、ヴィウラの美味しさに驚きました。もちろん、生産量として9割が黒ブドウでそのうち9割がテンプラニーリョという偏った構造は重たいです。さらに言うと株仕立てが多くて栽培品種の転換には時間がかかるんじゃないか、と考えられます。テンプラニーリョ依存構造がすぐに変わるとは思えませんが、リオハのイメージを固定化(陳腐化)させないための努力が行われていることはとてもポジティブだと思います。

C.V.N.E.グループのブランドポートフォリオとしても興味深い

それから、グループとしてのC.V.N.E.を一歩引いて考えると、グループ内にリオハ全体を見渡した時にリオハとして最高のワイン(インペリアル)を作ろう、というブランドと、単一畑として最高のワインを作っていこうというContinoのブランドを持っている、というのがブランドポートフォリオとしてとても興味深いです。

ペンフォールズとヘンチキが同じグループ内にいる?

誤解やお叱りを承知で極端な言い方をすると、ブランドポートフォリオの内にペンフォールズとヘンチキを持っているようなイメージですね。ご存じの方にはいうまでもないのですが、オーストラリアの大手ワインメーカー、ペンフォールズのグランジは、同社が保有している南西オーストラリア全体から最上のブドウを集めて毎年作っているのに対して、バロッサバレーにあるヘンチキは単一畑にこだわって、ヒルオブグレースというトップキュベを作っています。

わこさんの問題意識とC.V.N.E.の意図が近かった?改めて感謝です

今回、C.V.N.E.の方からContino訪問のアポイントを入れていただいたのは、同社として(あるいはリオハとして)のこういった動きを知ってほしいという意図もあったんだろうな、と改めて関係の皆様に感謝しています。特にContinoは昨年テイスティングルームを改装したとのことで、非常に雰囲気の良い、景色も良いテイスティングルームでワインを楽しめます。日本からはなかなか行きにくいですが、ワイン好きなら行く価値はあります。

リオハのワイン、飲みつくせないことだけははっきりしました

今回は大手生産者の取り組みご紹介、という形になってしまいましたが、新興の生産者とかもいろいろ出てきている、という話だけは聞いています。そちらの方とか、他の伝統ある生産者のお話とかも聞きたかったのですが、残念ながら難しかったのが心残りではあります。ただ、リオハのワイン、まだまだ飲みつくせないことだけははっきりしました。

次回はなんとか俗世に戻りたいと思います

しばらくワイン関係のお話が続いてしまいました。次回はなんとかして俗世に戻りたいと思います。

一緒に行ったツイヂラボDipWSET夫妻と3人で撮ってもらいました。ありがとうございました。

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