世界の雇用制度は、大きく分けると次のようなタイプがあります。


① ジョブ型
「仕事に人を付ける」制度
* 仕事内容が採用前から決まっている。
* 専門性を高めやすい。
* 職務記述書(ジョブディスクリプション)が重視される。
* 職務が変わる場合は、契約を見直すことが多い。
向いている業種
* IT
* エンジニア
* 医療
* 研究開発
* 会計
* 法務
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② 契約・成果主義型
「成果を出した人が評価される」制度
* 契約期間内の成果が重要。
* 転職で給与アップを目指す人が多い。
* 市場価値が給与に反映されやすい。
* 成果が出なければ契約更新されない場合もある。
向いている業種
* 営業
* IT
* 外資系企業
* スタートアップ
* 金融
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③ メンバーシップ型
「会社に人を採用する」制度
* 新卒一括採用が中心。
* 入社後に配属が決まることが多い。
* 異動や転勤が比較的多い。
* 長期雇用を前提に育成する。
* 幅広い業務を経験することが期待される。
向いている業種
* 日本の大企業
* 製造業
* 鉄道
* 電力・ガス
* 官公庁
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3つの制度を一言で表すと
* ジョブ型:「仕事で採用する」
* 契約・成果主義型:「成果で評価する」
* メンバーシップ型:「会社の一員として採用する」
現在の世界の流れ
近年は、どの国でも1つの制度だけを採用するケースは少なくなっています。
* 欧米では、ジョブ型を基本に成果主義を組み合わせる企業が多い。
* 中国や東南アジアでは、契約型に成果主義を組み合わせる企業が多い。
* 日本では、メンバーシップ型を基本にジョブ型や成果主義の要素を取り入れる企業が増えています。
つまり、現実の企業では制度を組み合わせるケースが多いものの、「職務を中心に考えるか」「成果を中心に考えるか」「会社の一員として育てることを中心に考えるか」が、それぞれの制度の最も大きな違いです。
高度成長期前の日本は、どうだったのか
高度経済成長期(1955年頃~1973年)より前の日本は、現在の日本型雇用とはかなり違っていました。実は、終身雇用・年功序列が全国に広く定着したのは戦後であり、それ以前はもっと流動的な雇用でした。
明治~戦前(1868~1945年)
雇用形態としては、現在でいう契約型とメンバーシップ型の中間のような形でした。
特徴は次のとおりです。
* 転職は珍しくなかった。
* 季節労働者や日雇い労働者が多かった。
* 建設業や港湾、鉱山では仕事ごとに人を雇うことが一般的だった。
* 中小企業では解雇も現在より多かった。
* 終身雇用は一部の大企業や官庁に限られていた。
つまり、多くの人は「会社に一生勤める」というより、「仕事があれば働く」という働き方をしていました。
戦後復興期(1945~1955年頃)
戦争直後は人手不足と復興需要があり、企業は熟練労働者を確保したいと考えるようになります。
その結果、
* 長く働いてもらう
* 教育して育てる
* 会社への忠誠心を重視する
という考え方が強まりました。
高度経済成長期(1955~1973年)
この時代になると、
* 終身雇用
* 年功序列
* 新卒一括採用
* 企業別労働組合
という「日本型雇用」が大企業を中心に完成していきます。
当時は経済が毎年大きく成長していたため、企業も「社員を長く雇って育てたほうが得」と考えることができました。
世界と比べると
戦前の日本は、現在の欧米や東南アジアほどジョブ型ではありませんでしたが、今の日本よりは雇用の流動性が高かったと言えます。
大まかに整理すると、
* 戦前:契約型・流動的な雇用が多い(一部大企業は長期雇用)
* 戦後~高度経済成長期:終身雇用・年功序列が急速に普及
* 現在:終身雇用が弱まり、ジョブ型や成果主義を取り入れる企業が増加
という流れです。
つまり、「日本は昔から終身雇用の国だった」というイメージは必ずしも正確ではなく、現在知られている日本型雇用は、戦後の高度経済成長を背景に発展した制度だと考えると理解しやすいでしょう。
メンバーシップ型は、世界では少ない
はい、現在の日本で典型的なメンバーシップ型雇用は、世界的には少数派と考えられています。
メンバーシップ型の特徴は、
* 新卒一括採用
* 長期雇用・終身雇用を前提
* 配属後に仕事が決まる
* 幅広い職務や異動を受け入れる
* 年功的な賃金・昇進の要素がある
* 「会社のメンバー」として採用される
というものです。
一方、多くの国では、
* 「経理担当」
* 「営業担当」
* 「ソフトウェアエンジニア」
のように、職務(ジョブ)を明確に定めて、その仕事をする人を採用するジョブ型が主流です。
大まかに世界を見ると、
* 北米・西欧:ジョブ型が中心
* 東南アジア・南アジア:契約型・成果主義型が中心
* 中東:契約型が中心
* 日本:メンバーシップ型が伝統的に中心(近年はジョブ型を導入する企業も増加)
* 韓国:以前は日本に近かったものの、成果主義・ジョブ型への移行が進んでいる
という傾向があります。
ただし、「世界に日本しかない」というわけではありません。例えば、大企業の新卒育成や社内異動を重視する企業は海外にもあります。しかし、それらは雇用制度全体ではなく、あくまで一部の企業や業種に見られる仕組みです。
そのため、日本のように社会全体でメンバーシップ型が広く根付いた国は、世界的にはかなり珍しい存在と言えます。近年は日本でも、人材の流動化や専門人材の確保を目的として、ジョブ型の要素を取り入れる企業が増えています。
メンバーシップ型の特徴
メンバーシップ型雇用とは、「仕事」ではなく「人」を採用する雇用制度です。日本の伝統的な大企業や官公庁で発達しました。
主な特徴は次のとおりです。
1. 新卒一括採用
* 毎年同じ時期に新卒をまとめて採用する。
* 入社時点では職種が決まっていないことも多い。
2. 配属後に仕事が決まる
* 入社後に会社が配属を決める。
* 営業、経理、総務、工場などへ異動する可能性がある。
3. 職務内容が曖昧
* 「この仕事だけ」という範囲が比較的狭く決まっていない。
* 必要に応じてさまざまな業務を担当することが期待される。
4. 人事異動・転勤が多い
* 部署異動や職種変更、転勤が比較的多い。
* 場合によっては専門外の仕事を担当することもある。
5. 長期雇用が前提
* 会社は社員を育てながら長く雇うことを前提とする。
* 終身雇用の考え方と結び付きやすい。
6. 年功的な昇給・昇進
* 勤続年数や経験が評価に反映されやすい。
* 最近は成果主義を取り入れる企業も増えています。
7. OJT(職場での教育)が中心
* 入社後に仕事を覚えていく。
* 即戦力よりも育成を重視する傾向がある。
8. 会社への帰属意識を重視
* 「会社の一員」として行動することが期待される。
* チームワークや協調性が重視される。
9. 職務より会社への忠誠心を重視
* 専門職としてのキャリアよりも、会社全体への貢献が評価されやすい。
メリット
* 雇用が比較的安定する。
* 未経験者でも採用・育成されやすい。
* 社内で幅広い経験を積める。
* 長期的な人材育成がしやすい。
デメリット
* 職務範囲が曖昧になりやすい。
* 異動や転勤が多い。
* 転職時に専門性をアピールしにくい場合がある。
* 年齢や勤続年数が評価に影響しやすい。
* 新卒一括採用が中心になりやすく、中途採用や再挑戦が難しくなることがある。
採用国
🇯🇵 日本
★★★★★
新卒一括採用・終身雇用・年功序列が伝統的に根付いている。
🇰🇷 韓国
★★☆☆☆
以前は日本に近かったが、近年はジョブ型・成果主義への移行が進んでいる。
🇹🇼 台湾
★★☆☆☆
日本の影響を受けた企業では長期雇用や社内育成が見られるが、ジョブ型・成果主義も広がっている。
ジョブ型の特徴
ジョブ型とは、「仕事(職務)に人を採用する」雇用制度です。欧米を中心に多くの国で採用されています。
1. 職務内容が明確
* 採用前に仕事内容が決まっている。
* 職務記述書(ジョブディスクリプション)に業務内容や責任範囲が記載される。
2. 専門性を重視
* 特定の分野の知識やスキルが評価される。
* 専門職としてキャリアを積みやすい。
3. 職務ごとに採用する
* 「営業職」
* 「経理職」
* 「システムエンジニア」
* 「機械設計」
など、職種ごとに募集・採用される。
4. 異動が少ない
* 本人の同意なく別の職種へ異動することは比較的少ない。
* 異動する場合は新しい職務に応じた契約になることが多い。
5. 転勤が少ない
* 全国転勤を前提としないケースが多い。
* 勤務地も採用時に決まっていることが多い。
6. 成果や職務で評価される
* 年齢よりも職務の難易度や成果が重視される。
* 職務や責任が大きくなると給与も上がりやすい。
7. 転職が一般的
* より良い条件やキャリアアップのために転職することが一般的。
* 同じ専門分野で経験を積みながら市場価値を高める。
8. 中途採用が多い
* 即戦力を採用するケースが多い。
* 新卒だけでなく経験者採用も活発。
9. 履歴書・職務経歴書が書きやすい
* 担当してきた職務が明確なので、経験や実績を整理しやすい。
* 転職時に専門性をアピールしやすい。
メリット
* 専門性を高めやすい。
* 職務内容が明確で役割が分かりやすい。
* 転職でキャリアアップしやすい。
* 成果や能力が給与に反映されやすい。
* 中途採用の機会が多い。
デメリット
* 専門分野の知識やスキルが常に求められる。
* 職務がなくなると配置転換ではなく、別の職を探す必要が生じる場合がある。
* 転職市場で競争する機会が多い。
* 未経験分野へ転職する難易度が高いこともある。
主な採用国
* 🇺🇸 アメリカ
* 🇨🇦 カナダ
* 🇬🇧 イギリス
* 🇩🇪 ドイツ
* 🇫🇷 フランス
* 🇳🇱 オランダ
* 🇦🇺 オーストラリア
* 🇸🇬 シンガポール
一言で表すと
ジョブ型は「人に仕事を与える」のではなく、「仕事に合う人を採用する」雇用制度です。そのため、専門性を活かしてキャリアを築きたい人に向いている制度と言えます。
契約・成果主義型の特徴
契約・成果主義型とは、「契約内容」と「仕事の成果」を重視する雇用制度です。中国やインド、東南アジアの多くの国で広く見られます。
1. 契約期間が明確
* 雇用契約で勤務条件や契約期間を定める。
* 契約更新の有無は会社や本人の状況によって決まる。
2. 成果を重視
* 年齢や勤続年数よりも、仕事の成果や実績が評価される。
* 売上、利益、生産性、プロジェクトの成果などが重視される。
3. 転職が一般的
* より良い給与や待遇を求めて転職する人が多い。
* 数年ごとに転職してキャリアアップすることも珍しくない。
4. 市場価値が給与に反映されやすい
* スキルや経験が高く評価されれば、大幅な昇給や好条件で転職できることがある。
5. 即戦力を重視
* 入社後すぐに成果を出せる人材が求められる。
* 未経験者より経験者が有利になる場合が多い。
6. 中途採用が多い
* 必要な人材を必要な時に採用する傾向がある。
* 経験や実績が採用の重要な判断材料となる。
7. 専門性も重視される
* IT、営業、製造、金融など、それぞれの分野で実績を持つ人材が評価されやすい。
メリット
* 実力や成果が給与に反映されやすい。
* 転職で年収アップを目指しやすい。
* 能力のある人は昇進・昇給が早い。
* 労働市場の流動性が高い。
デメリット
* 成果が出ないと評価が下がることがある。
* 景気や企業業績の影響を受けやすい。
* 雇用が不安定になる場合がある。
* 競争が激しい職場も多い。
主な国
* 🇨🇳 中国
* 🇮🇳 インド
* 🇻🇳 ベトナム
* 🇹🇭 タイ
* 🇮🇩 インドネシア
* 🇲🇾 マレーシア
* 🇵🇭 フィリピン
* 中東の一部の国
日本を外国と同じようにジョブ型や成果主義•契約型を受け入れると危険
挙げられた点は、日本でジョブ型や成果主義を広げる際に議論される重要な課題です。ただし、「危険」と言い切るよりも、制度全体を整えずに雇用制度だけを変えると、期待した効果が出にくい可能性があると考えるのが適切です。
例えば、次のような課題は実際によく指摘されています。
* 雇用保険や学び直し(リスキリング)の支援
* 転職を前提とするなら、失業中や在職中にスキルを身につけられる環境が重要です。
* 支援は拡充されつつありますが、利用しやすさや規模には改善の余地があるという意見があります。
* 転職・再就職支援
* ジョブ型では転職市場が重要になります。
* キャリア相談、職業訓練、求人とのマッチングなどが十分に機能しないと、転職の負担が大きくなる可能性があります。
* 企業の採用慣行
* 日本では新卒一括採用や長期雇用を重視する企業が今も多くあります。
* 一方で、中途採用や職種別採用を拡大する企業も増えており、変化は進んでいます。
* AI・IT分野への学び直し
* リスキリングの機会があっても、それが実際の採用や賃金向上につながる仕組みが十分でなければ、効果は限定的になります。
* 社会制度とのつながり
* 日本では住宅ローン、社会保障、企業内福利厚生などが長期雇用を前提に設計されてきた面があります。
* 雇用制度を変えるなら、こうした制度も合わせて見直す必要があるという考え方があります。
政策だけでは形骸化する可能性
そのため、ジョブ型や成果主義を導入する場合は、
1. 雇用保険・セーフティネットの充実
2. リスキリング支援の強化
3. 中途採用・職種別採用の拡大
4. 転職市場や職業紹介機能の充実
5. 社会保障や税制など関連制度との整合
を並行して進めることが重要だと考えられています。

