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自社支援はそんなに甘くない。──委託費の話では終わらへん現場の実感

自社支援ってほんまに“得”なんですかね?
最近この自社支援切替の話をよう聞きます。

「委託費のコストが下がる」
「登録支援機関を使わんでも自社で見たほうが早い」
「管理システムを入れたら回せる」

……うん、気持ちは分かります。
今日はそこにちょっとだけ現場の話を差し込みたいと思います。

僕は自社支援を単にコストを安くする方法だけとして入ると正直危ないと思っています。いや、もちろんコストの話はめっちゃ大事です。
企業やったら当たり前です。
でも自社支援の本質って年間委託費の比較表には出てきません。

本質は支援を経営機能として持てるかどうかです。

なんで今、自社支援が売れやすいのか

まず今の空気感を見たほうがええと思っています。

外国人雇用の市場そのものが大きくなっています。
厚生労働省の資料では外国人労働者数は2025年で257万人、外国人を雇用する事業所数は約37.1万所でどちらも過去最多です。
登録支援機関は2026年4月時点で11,324件まで増えています。こちらもだいぶ多いですね。(きちんと稼働している実数は置いといて…)
市場が広がればその周辺で管理システム、行政書士、コンサル、教育、外国人紹介などの商流が伸びるのは、ある意味当然です。

やから自社支援が注目されるのは割と自然なことなんです。
管理システムの開発会社も営業をかける。
行政書士事務所も切替を提案する。
コンサル会社も委託費の見直しを入口にする。
それはそこに市場があるからです。

実際、自社支援を推奨する解説を見ても、
「月々20,000〜30,000円の委託費を削減できる」
「年間で24万〜36万円の削減になる」
とコスト削減メリットが分かりやすく打ち出されています。

自社支援っていう入口は商品としてめちゃくちゃ売りやすいんやと思うんですよ。ここで僕がずっと引っかかっていることがあります。

それはその自社支援切替を勧めている側がほんまに自分たちで支援を回してきたのかという点です。

紹介や数字上の管理の話だけやなくて人材の選定、入国前から入社後、生活支援、面談、定着まで含めて、どこまで実務をやってきた上で「自社で回せますよ」と言っているのか。

そこが見えへんまま経験のない会社が机上の設計だけで「管理できます・内製化できます」と語っているケースも正直あるように見えてしまいます。

もちろん全部がそうやとは言いません。
僕は誰がその話をしているのかはとっても大事やと思っています。

支援って制度の知識だけで回るもんやないんです。
現場で起きること、生活で起きること、感情の揺れ、企業との温度差、
そういう“書ききれへんところ”まで含めて初めて支援やと思っています。

僕が言いたいのは売れる話と回る話は別やということなんです。

外注を切る話やなくて実務負荷を自社で引き受ける話

ここはかなり大事なポイントです。

自社支援ってつい登録支援機関を外すみたいに見えがちなんですけど、実際に起きることはそんなに単純やありません。

そもそも特定技能1号には義務的支援10項目があります。
事前ガイダンス、送迎、住居確保、生活オリエンテーション、公的手続き同行、日本語学習の機会提供、相談対応、日本人との交流促進、転職支援、定期面談と通報。これを継続して回すのが前提です。

しかも登録支援機関に委託しても受入れ企業の責任がゼロになるわけではありません。企業の義務はそのまま残る。
自社支援に切り替えるというのは支援実務の一次受けも日々の判断も運用の負荷も全てを自社で引き受けるということなんです。
ここをコスト比較だけで判断すると後でかなりしんどくなります。

しかも制度の運用方法はその都度変わります。
2025年4月の運用改善では特定技能の定期届出は四半期ごとから年1回へ変わりました。一見すると楽になったように見えます。
実務では1年分をちゃんと管理してまとめる力が要るし、必要な書類の収集や様式変更への対応、受入れ困難に係る届出の対象も見直されています。
こういう制度変更にも正しい情報にスピーディーに追いつけるかどうかも自社支援では問われます。

たまに足音なく制度って変わるんですよね。
ほんで足音ないやつほど後で効いてきます。
わりと怖いタイプです。

最初からうまくいったわけやない

じつは私たちも最初からうまくいったわけやありません。
私たちクリエは2019年から現場でずっと考え続けてきました。

専属の担当者を置けば回ると思っていた時期もありました。
実際は制度理解、生活支援、現場との調整、本人との面談、その全部が一人に寄ってしまう。
そこで初めて人を置く話やなくて機能を持つ話やと分かりました。

もちろん想定が甘かったことも認めます。
入国後に教えたら何とかなるやろと思っていたところが、実際には入国前の期待値調整や日本語教育が足りず、配属後の立ち上がりでズレる。
そこから採用と教育と支援をバラバラで見ずに一本の線でつなぐようになりました。

その失敗を一つずつ潰してきた結果として、自社支援60名体制、直近3年の離職2名、定着率96.7%まで持ってきています。

これは自慢やなくて自社支援ってやれば安くなるものやなくて失敗を仕組みに変えた会社だけが安定するということを言いたいんです。

制度対応の前に現場文化があった

僕はここも大事やと思っています。

私たちクリエはもともと清掃業を母体にしてきた会社です。
業界特有の人材不足という課題に対して高齢者雇用も障がい者雇用も外国人雇用も実践をしてきました。

弊社のともにはたらくというスローガンの先にあったのは背景の違う人が一緒に働ける現場をどう作るかというテーマでした。
その延長線上に留学生や家族滞在のアルバイト、技人国、特定技能の雇用があった。

この順番が今の体制に大きな影響を与えたんやと思います。
営業から入る会社。
システムから入る会社。
どれも悪いとは思いません。きっかけは大事です。
でも現場の土壌がないまま制度だけ持ち込んでも定着ってそんなに素直に起きません。事件は会議室より先に現場で起きるからです。

落とし穴は見積書に出ない仕事にある

見えにくいからほんまにやっかいです。

自社支援って聞こえはいいですけど見える仕事だけならまだ分かりやすいんですよ。書類。届出。面談。ガイダンス。

でもほんまに重たいのはその下です。

送迎。住居。銀行口座。スマホ契約。役所手続き。病院の付き添い。
生活相談。母国語での説明。現場とのズレの調整。離職予防。
「大丈夫です」と言いながら大丈夫じゃないときの顔を拾うこと。

自社支援でも母国語で十分理解できる対応、人件費、時間と労力、制度知識の継続的なアップデートがデメリットとして整理されています。
見積書に出るコストより見積書に出ない運用の重さのほうが本質なんです。

就労管理システムは必要です。
AIやシステムで記録や管理がしやすくなるのも大事です。

もし仮に本人の生活や仕事の小さな変化、離職につながりそうなインシデント、ほかの求人票を見始めているような兆候まで拾って、アラートで知らせてくれるそんな仕組みがあればめちゃくちゃ助かります。

でも結局そこで終わりではありません。
アラートが出たあとに誰が声をかけるのか。
誰が話を聞くのか。誰が現場とすり合わせるのか。
最後の最後はやっぱり人が介入して解決するしかないんです。

Excelの色分けだけ増えて現場のしんどさは全然減ってへん。
……みたいなことってほんまにありますからね。
見た目だけはやってる感あるんですけど、現場はわりと泣いてます。

実績があると横展開できることは別

ビルクリーニングで自社支援が回った。
高い定着率が出た。
実績あるから他分野の支援も簡単にできるかも?
ここも誤解されやすいポイントかと思います。

いや、これがそんなに単純な話やないんです。

外食、介護、ビルクリーニング、建設、飲食料品製造。
分野が変われば使う言葉も現場のリズムも生活支援の中身もつまずくポイントも変わります。人材確保ルートも送り出し機関でかなり差があります。
同じ特定技能でも同じ運び方では回りません。

特定技能の外国人領域って案件を取るだけでは成立せんのです。
供給ルートの安定と支援運用の維持まで持って初めて事業になる。

営業で入口を作れても継続には別の筋肉が要る。
ここを持たずに横展開するとあとからしんどくなる。
これは私たちが他社支援を始めてより強く感じていることでもあります。

外国人紹介の新規参入も同じ構造やと思う

市場が伸びている以上、外国人紹介に参入したいと考える会社が増えるのは自然です。でも特定技能領域は採用決定で終わりません。
在留資格申請、生活、日本語の支援、定着、転職まで全部つながります。
だから日本人紹介の延長線だけで参入するとだんだん苦しくなるんです。

自社支援も新規参入も本質は同じなんやと思います。

入口は営業で作れても継続は運用でしか守れない。

ここを見誤ると案件数が増えるほどしんどくなる。
これはほんまにそう思います。

制度を知らんまま売るのは危ない

この領域には「儲かりそう・技能実習より緩いらしい・人が足りん業界やし提案しやすい」みたいな温度感で入ってくる会社もあります。

僕は営業そのものが悪いとは思っていません。
営業は必要です。僕も営業は大好きです。
むしろ広げるためには営業の力は絶対に必要だと思います。

ただ問題は制度を分からんまま売ることです。

特定技能は在留、生活、支援、定着までつながる領域です。
知らなかったで済ませたらあかんのです。
ここで問われるのは正しい情報を持ってるかどうかだけやなくて、
それを企業が使える形まで落として渡せるかです。

売る力と運用に落とす力は別。
ここがこれからの勝敗を分けると僕は本気で思っています。

採用入口で透明性と合意形成を作れるか

ここは登録支援機関が腕を見せる場面やと思っています。

やることはそんなに複雑ではないと思います。

紹介ルートを確認する。
転職経緯を確認する。
推薦根拠を確認する。
対応範囲を確認する。

これを採用前の時点で企業が腹落ちできる形にしておく。
それだけで後の事故はかなり減らせます。

実際、最近よくある登録支援機関の見直しの話でも見直し理由は紹介料や月々の支援費だけやなく、対応の遅さ、トラブル時の動き、面談の質、業種理解などが挙げられています。
もう“安いかどうか”だけでなく“ちゃんと機能しているか”を見始めています。

  • 経験者のフィルタリングをどう設計しているか

  • 転職理由の確認はどこまでやるか

  • 入社後の支援はどう回すか

ここを曖昧にしたまま進むとあとで必ずしんどくなります。
逆に採用の入口で透明性と合意形成が作れている企業ほど後から振り回されにくい。僕はここが大事やと思っています。

2号まで見て初めて戦略になる

ここで少し2号の話も。

2号は更新上限がなくて家族帯同も可能です。
登録支援機関による法定支援の対象は1号で2号は支援の対象外です。
企業にとって2号は“長く残ってもらえる可能性”がある反面、1号と同じ感覚では見られません。

ただし2号は自然には増えません。
5年経ったら勝手に上がるものやない。
役割を与えて、育てて、評価して、処遇まで設計した先にある資格です。

だから2号の話って制度の話に見えて実は企業の育成力と評価制度と伴走する登録支援機関の教育支援の話なんです。
1号をただ回すだけで終わる会社と2号まで見据えて育成設計を組める会社。
この差はこれからかなり大きくなる気がしています。

量の時代の次は質の時代

登録支援機関の数が増えたこと自体は悪いことではないと思っています。
選択肢が増えるのは企業にとっても外国人材にとってもプラスです。

同時に許可登録されていることと機能していることは別やという現実もだいぶはっきりしてきました。

量が増えたことで逆に質が見られ始めている。

この流れは自社支援にもそのまま当てはまります。
やること自体はできる。でも機能として回せるかどうかで差がつく。
これからはそこが問われる時代やと思っています。

入口は簡単。継続には覚悟が要る。

ここまで読んでくださった方の中には自社支援むずかしいかも…と思った方もいるかもしれません。

僕は自社支援そのものを否定したいわけやありません。
やる価値はあります。ちゃんとハマる会社もあります。
委託から切り替える意味があるケースもあります。

ただ言いたいのは一つだけです。

入口は正直いくらでも作れます。
採ったあとを持ち切れないならその入口はあとでしんどさに変わります。

自社支援も。
登録支援機関の切替も。
外国人紹介の新規参入も。
最後に残るのは勢いで入った会社ではなく、
覚悟を持って続けた会社やと思っています。

私たちも清掃の現場から「ともにはたらく」というスローガンで体制を育て、その延長で自社支援を2019年から磨いてきました。
でも完成ではなくてまだまだ道半ばの途中です。
いまもトライ&エラーの真っ只中です。
やから言えることがあります。

支援は口で言うだけならできると思います。
それを仕組みと体制にまで落とすには時間も失敗も投資も要ります。

それでもやるのか。
どうやってやるのか。
誰と組むのか。

答えは一つやないと思います。
その問いから逃げへんことがいちばん大事なんやと思っています。

──外国人材、現場からは以上です。


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