見出し画像

【 写真の二人を、もう知らない 】── 記憶が薄れていく夫婦の、ある日の会話 ──

思い出は、二人をつなぐものだと思っていました。
でも、その記憶が少しずつ遠くなっても、残るものはあるのでしょうか。
これは、一枚の結婚写真から始まる夫婦の小さな物語です。

4コマまんが 介護編#190


💐 思い出せなくても、好きになることはできる

古い結婚写真を見せられた夫は、そこに写る二人が誰なのか分かりません。

若い頃の自分と、若い頃の妻。

二人にとって大切だったはずの一枚なのに、その記憶はもう、夫の中ではぼんやりと遠くなっています。

それでも写真を見つめて、夫は言います。

「幸せそうな二人だ」

そして、妻がそっと尋ねます。

「この花嫁さん、きれい?」

夫は素直に答えます。

きれいだ、と。

けれど、そのあとに続く言葉こそ、この漫画で描きたかったことです。


愛は「覚えていること」だけではない

長く一緒に生きていると、二人の間にはたくさんの思い出が積み重なっていきます。

出会った日のこと。
結婚した日のこと。
旅行に行ったこと。
喧嘩したこと。
何気ない夕食のこと。

私たちはつい、そうした記憶の積み重ねこそが「夫婦の絆」なのだと思ってしまいます。

もちろん、思い出は大切です。

でももし、その思い出が少しずつ薄れていったら。

愛まで一緒になくなってしまうのでしょうか。

この漫画では、そこに小さな問いを置いています。

夫は、写真の中の妻を覚えていません。

けれど、目の前にいる妻を見て、

「君のほうが好きだ」

と言う。

過去を思い出したからではありません。

長年の約束を守ろうとしたわけでもありません。

ただ、その瞬間に目の前の人を見て、もう一度好きになった。

私はそこに、記憶とは少し違う場所にある愛情を感じます。


「ずっと選び続ける」ということ

この物語で、妻が最後に言うのは、

「また、私を選んでくれた」

という言葉です。

「覚えていてくれた」ではありません。

「思い出してくれた」でもありません。

**「選んでくれた」**のです。

この違いを大切にしたいと思いました。

結婚とは、一度だけ相手を選んで終わるものではないのかもしれません。

暮らしの中で何度も、

この人とご飯を食べよう。
この人の話を聞こう。
この人の隣にいよう。

そんな小さな選択を繰り返していく。

そして時には、過去の記憶さえ頼りにできなくなったとしても、目の前の相手を見て、

「やっぱり、この人が好きだ」

と思えることがある。

それは、とても静かで、とても強い愛なのではないでしょうか。


🌿 過去ではなく、今日のあなたを好きになる

「昔は愛していた」

ではなく、

「今日もあなたを好きになる」

この漫画で伝えたかったのは、そんな気持ちです。

人は変わります。
顔も変わります。
環境も変わります。
そして、記憶さえ変わっていくことがあります。

それでも、目の前にいる人を見て、もう一度心が動くことはできる。

だから最後の妻の言葉には、悲しさだけではなく、少しの喜びを込めています。

昔の二人を忘れてしまっても。

結婚式の日を思い出せなくても。

あなたは今日、また私を選んでくれた。

長く一緒にいるということは、過去を抱え続けることだけではなく、

何度でも、今の相手と出会い直すことなのかもしれません。


少しでも共感していただけたら、「スキ」やフォローでそっと応援してもらえると嬉しいです。

いいなと思ったら応援しよう!