優秀な人材のポテンシャルは、採用面接で見抜ける。
──25年の人事経験から僕が辿り着いた“面接の本質”
採用面接は、企業の未来を左右する大切な場です。 「優秀な人を採りたい」「伸びる人を見抜きたい」 これはどの企業でも共通の願いだと思います。
でも現場では、面接では良かったのに入社後に伸びない人や、控えめだったのに入社後に大きく成長する人がいます。面接官によって評価がバラバラになったり、結局“雰囲気”で判断してしまうことも少なくありません。僕自身、25年間人事を続けてきて、採用の難しさと奥深さをずっと感じてきました。
その中で、ひとつだけ確信していることがあります。 優秀な人材のポテンシャルは、採用面接で見抜ける。 ただし、面接が“構造化”されていれば。
これは「勘で見抜ける」という話ではありません。むしろ、勘に頼るから見抜けないのです。面接は、構造化されて初めて、候補者の本質が見えてきます。
■ 面接が「構造化」されているということ
構造化された面接とは、質問・評価・深掘りの流れが“型”として整っている面接のことです。誰が面接しても同じ基準で、同じ深さで、同じ観点で候補者を見られる状態。これが構造化です。
まず、質問には順番があります。候補者がどんな行動をしたのかという事実から入り、なぜその行動を選んだのかという意図を聞きます。そこにどんな工夫や改善を加えたのかを確認し、最後に「次も同じようにできるか」という再現性を見ます。この流れがあると、候補者の“本質”が自然と浮かび上がります。
次に、評価の軸を統一することが欠かせません。自己理解の深さ、行動の再現性、学習力、協働力、目的意識など、事前に決めた観点で判断することで、面接官の好みや印象に左右されなくなります。評価軸が揃っているだけで、面接の精度は驚くほど安定します。
そして、深掘りの方向性も決まっています。事実から意図へ、意図から工夫へ、工夫から学びへ、学びから再現性へ。候補者の話をただ聞くのではなく、この流れに沿って丁寧に掘り下げていくことで、「この人は環境が変わっても成長できるか」「困難をどう乗り越えるタイプか」が自然と見えてきます。
■ 構造化されていない面接が生む“ズレ”
構造化されていない面接では、面接官によって評価がバラバラになり、印象で判断してしまいがちです。深掘りが浅く、本質が見えないまま、“話が上手い人”が通り、“伸びる人”を落としてしまうこともあります。採用の再現性はゼロに近くなり、優秀な人材のポテンシャルを見抜くことは難しくなります。
僕が企業の採用相談を受けるとき、最初に確認するのは「面接官が何を見ているか」です。すると、同じ候補者に対して「明るくて良い」「落ち着いていて良い」「ちょっと自信がなさそう」など、まったく違う印象が返ってくることがあります。印象は悪いものではありませんが、採用の判断軸にしてしまうと、どうしてもブレが生まれます。
■ 構造化された面接が生む“安定”
一方で、構造化された面接は、面接官が変わっても評価が安定します。行動事実に基づいて判断できるため、候補者のポテンシャルが浮かび上がります。再現性のある採用ができるようになり、結果として入社後の活躍率が確実に上がります。
僕はこれまで数千人の面接をしてきましたが、面接で「この人は伸びる」と感じた人は、ほぼ例外なく活躍しています。逆に、面接で見抜けなかった人が入社後に大きく伸びたケースは、ほとんどありません。これは僕の勘ではなく、構造化された面接を続けてきた結果です。
■ そして、最後の仕上げは「直感」だと思う
構造化された面接は、候補者の行動事実や価値観を丁寧に掘り下げることで、本質を浮かび上がらせてくれます。でも、最後の決め手になるのは、面接官がその場で感じる「直感」です。
直感といっても、根拠のない勘ではありません。候補者の目が泳ぐ瞬間や、質問の前に生まれるわずかな「間」、自分の話をするときの呼吸の深さ、迷いがあるときの声の揺れ、本音を話すときの姿勢の変化、嘘をついているときの微妙な表情の硬さ、そしてその場に“馴染む”かどうかの空気感。こうした非言語の情報は、構造化された質問だけでは拾いきれませんが、面接官の身体は確かに感じ取っています。
僕はこれを「直感」と呼んでいますが、実際には長年の経験で蓄積されたデータが、無意識のうちに高速で分析されているだけです。つまり直感は魔法ではなく、経験の蓄積が生む“身体知”です。だからこそ、直感は排除すべきものではなく、構造化された面接の最後に使う“補助エンジン”のような存在です。
構造化された面接が「論理」だとしたら、直感は「感性」。この両方が揃ったとき、優秀な人材のポテンシャルは本当に見抜けると僕は思っています。
■ ポテンシャルは「未来の行動」を予測する力
僕はポテンシャルを「未来の行動を予測できる材料」と捉えています。 過去の行動には、その人の価値観や判断基準、工夫の仕方、学び方が必ず表れます。そこを丁寧に見ていくことで、「この人は環境が変わっても成長し続けるか」「困難に直面したときどう乗り越えるか」が自然と見えてきます。
面接は、候補者を試す場ではありません。候補者の魅力を引き出し、その人が持つ可能性を正しく理解する場です。構造化された面接は、そのための“器”のようなものです。器が整っているからこそ、候補者の本質がこぼれ落ちずに見えてきます。
■ 最後に──人の可能性は、丁寧に向き合えば必ず見えてくる
人は誰もが可能性を持っています。その可能性を見抜けるかどうかは、企業側の「問いの質」によって決まります。問いが整えば、答えは自然と見えてきます。
HRカインドでは、企業が人の可能性を正しく見抜き、その人が活躍できる環境を整えるための伴走を続けています。採用は、企業の未来をつくる仕事です。その未来を、丁寧に育てていきましょう🍀
