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【CITESCoP20】サイドイベント CITESの未来を形作る

Shaping CITES’ Future
How can CITES adapt to meet current and future challenges?
2025年12月3日12:15〜13:45

 今回の締約国会議ではCITES50周年を記念するピンバッジが参加者に配られました。1975年7月1日にCITESが発効したからです。
 50年の間に世界の貿易は拡大し、国際取引される野生動植物種と製品は変化し、野生動植物の絶滅の危機は高まっています。絶滅してしまってCITESの対象となる動植物種のリスト「附属書」から削除された種もあります。
 CITESの議題が増える一方、資金不足に直面したため、予算と事業計画の議題だけでなく、常にCITESはどうあるべきかが意識された締約国会議でした。各作業文書には、提案を実行するために資金がいくら必要かが示されていました(例:世界野生生物の日 CoP20 Doc. 24 (Rev. 1) では、コンサル料やニューヨークの国連本部への旅費は「Extrabudgetary(予算枠外)」となっている)

 そのようなCITESの本質を問うたのが、サイドイベント「CITESの未来を形作る」でした。

CITES50周年記念ピンバッジ

アメリカの拠出金未払いによる打撃

 米国トランプ大統領は2026年1月7日の大統領令で、66の国連機関や国際団体からの脱退しました。CITESはその中に入っていませんが、このサイドイベントのモデレーター、ウィル・トラベラー氏(ボンフリーファンデーション)は、米国が締約国に課せられる拠出金を払っていないため、CITESの予算の22%が欠如していると述べました。
 そして条約事務局の2026年から2028年の予算では人員削減、プログラムの削減などが見受けられ、必然的に「お金を追い求める」誘惑に駆られることを懸念しました。お金を追いかけ始めると、本来の使命から逸脱しがちがからです。

 さらに「人間という一つの種の幸福に焦点を当てた複雑な国際協定は数多く存在しますが、他の種のニーズを最優先に据えている協定はごくわずかです。私たち人間が脅威であることを認識している協定は、利己主義に突き動かされる人間の卑劣な本能を抑え込もうとするものです。CITESはまさにそのような稀有な例の一つですが、圧力が高まると、露骨な野心が露わになります。では、私たちはどうすべきでしょうか?それが、私たちがここにいる理由です」と述べました。

重要な問題に焦点を当て、締約国会議の規律を強化すべき

 CITES事務局に19年間勤務したデビット・モーガン氏はビデオ出演し、以下の発言をしました。
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 近年の事務局はほとんどの時間を会議の開催と、会議の背景資料の作成に費やしています。そして、その背景資料の多くは、CoPで採択された決定によって義務付けられています。過去10年間で、決定の数は制御不能なほど急増しました。これはCoP、委員会、そして事務局にとって脅威となっています。採択される決定の数は10年ほど前から増加し始め、現在では各Co
Pで300から400に上ります。これらの決定のほとんどは、私の見解ではあまりにも詳細すぎます。
 とくに問題となるのは、種固有の決定です。これらの決定はどれも、大規模な作業計画、高額なコンサルタントの報告書、事務局によるレビュー、委員会やグループ作業など、さまざまな要素を伴います。そして、特定の種に関する一連の決定が、さらに長い別の決定につながり、誤りの連続となります。
 議論時間を制限することで時間を短縮し、会合間隔を延長し、COPの作業をインターセッション作業部会に委任するという提案がなされてきました。
しかし、これでは意思決定の改善にはつながらないと思います。母国語が英語、フランス語、スペイン語ではない国にとっては不利になります。また、費用が高すぎるという理由でインターセッション作業部会に出席しない40%の国にとっても不利になります。
 ロックダウン中のオンライン会議には、普段は参加できない国も含め、過去最高の数の参加者が集まりました。決定事項を実施するための技術的な準備作業は、オンラインで行うべきです。これはより公平で、地球にとっても良いことであり、CoPや委員会は実質的な問題、特により論争の的となる問題、性質の異なる問題、あるいは遵守に関わる問題に集中できるようになります。社会の決定に対するより規律あるアプローチは、事務局が遵守・支援プログラムのような活動を通じて締約国への直接支援に多くの時間を費やすことを可能にします。
 過去10年間で、職員に適用される国連の官僚的手続きは大幅に増加しました。国連の規則や規制は大規模で複雑な組織には適しているかもしれませんが、条約事務局のような小規模なチームにとっては負担が大きすぎ、非効率性や締約国へのサービスの低下につながります。締約国は国連との柔軟な勤務体制を検討すべきです。まず、重要な問題に焦点を当てることで締約国会議の規律を強化することです。
 言葉遣いとアプローチの簡素化、そしてマイクロマネジメントの廃止です。部門横断的な委員会に関しては、締約国は対面での質の高い議論を実現するために、テクノロジーを活用して遠隔でより技術的な作業を行う必要があります。そして最後に、条約と国連の関係の再評価についてです。
 最後に一言。CITESはこれまで、その効率性と有効性を評価するための外部レビューを一度しか受けていません。それは1996年、約30年前のことです。このようなレビューには費用がかかりますが、私の見解では、そして世界情勢の変化を考えると、再度の実施を検討するのは時宜を得たものだと思います。

オンラインの「eCITES」の導入で低コスト・省力化

 スリランカのCITES野生生物管理当局ランジャン・マラシンハ氏は、国連が開発した貿易管理システムをベースとし、CITES附属書掲載種の輸出入をクラウドで一括管理する「e-CITES」を導入した経験を話しました。
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 スリランカは野生生物保護局におけるCITES関連事業を促進するため、低コストでIT関連のスタッフを抱える必要のないクラウドベースのe-CITESを導入することを決定しました。
 そこで税関と野生生物保護局の両方を、QRコードを使うシステムに統合しました。しかし国際的な貿易品目を分類するHSコード(輸出入統計品目番号)システムと、CITESが種を識別する方法には多少互換性がないため、システムを完全に統合できていません。
(注:HSコードでは、例えば家禽以外の生きた鳥類を「猛きん類」「おうむ目」「エミュー・だちょう」「その他」の4つに分類している。CITESの附属書は学名を使い、種や属レベルで対象を特定している)

 それまでの紙ベースのシステムでは時間がかかり、人為的ミスも多く、許可証があちこちで頻繁に発行されることもありました。さらに、紙ベースのシステムは税関と統合できず、管理当局や税関との連携が確立されていませんでした。また、これまでは申請書の審査、その承認、証明書の発行という三段階の工程で大量の書類がありました。

 CITES附属書掲載種の輸出入を報告する年次報告書の作成となると、手作業で作成した記録をすべてExcel形式に変換してCITES事務局に送る必要があり、悪夢のような作業でした。そのため、CITES事務局への報告が3年遅れるなど、非常に手間取っていました。しかし今は2、3分しかかかりません。
 e-CITES導入後は許可証のQRコードで検証ができるようになりました。このQRコードをスキャンすると、その許可証に含まれる種の輸出量を確認できます。もちろん偽造は可能ですが、検出することができます。これにより、規律、コンプライアンス、透明性、データ品質、効率性が向上しました。

 課題はすべての締約国が電子的な手段を使用する必要があることです。そうでなければ、期待する効率性を達成できません。CITESは、締約国における電子システムへの資金提供と支援を優先する必要があります。
 もう一つは、CITESはシステム開発よりも標準化の策定に重点を置くべきだということです。なぜなら、各国で問題への対処方法が異なる可能性があるからです。電子許可、データ共有、通信プロトコル、システム統合の標準があれば、どの国もそれぞれの要件に応じて独自のソリューションを持つことができ、最終的にはすべてのシステムを相互に統合できます。非常にシンプルなソリューションを費用対効果の高い形で利用できると考えています。

条約実施ための締約国への資金援助が必要

 ナイジェリアのアラバ・アゼンデ氏(ナイジェリア連邦環境省、連邦林業局、CITES管理当局の野生生物担当副局長)は、条約実施のための資金不足を以下のように訴えました。
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 ナイジェリアをはじめとする西アフリカ諸国は長年にわたり、締約国が条約を完全に実施するために必要な資金と能力を確保するための大胆なCITES改革を提唱してきました。

 先月、ナイジェリアの国会は絶滅危惧種を密売業者から守るための絶滅危惧種の保全保護法案を可決しました。大統領が署名したこの法案では、象牙、センザンコウの鱗などの製品を売買する違反者は、最高1200万ナイラ(約140万円)の罰金と最長10年の懲役刑に処せられます。また2020年に西アフリカで初めて野生生物と森林犯罪と闘うための国家戦略を採択し、違法な野生生物取引と、それが野生生物、地域社会、経済に及ぼす壊滅的な影響と闘うという明確な決意を示しました。

 ナイジェリアは定期的な種の個体数調査を行うための資源が不足しており、それが監視が必要な種の特定、野生生物の保護と回復を監視する能力を阻害しています。
 野生生物対策のために職員が適切な訓練を受け、装備を整えるための資金も不足しています。そのため、組織化され資金力のある密売ネットワークの標的となった場合、脆弱な状況にあります。締約国がCITESの実施を効果的に行えるよう支援するための措置が必要です。

条約の目的の堅持を

 野生生物問題に関して、20カ国以上での立法プロジェクトに携わってきた、エリカ・ライブナル教授(オレゴン州ルイス法科大学院)は、CITESの本来の任務に焦点を合わせるべきだと話しました。
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 CITESの将来について議論する上で、この条約が最も成功した条約の一つである理由を改めて認識することが重要です。
 近年私たちは、当初想定されていた以上に生物多様性への負荷をかけてしまっていることに気づき、当然のことながら、世界中で解決策が模索されています。こうした圧力が高まるにつれ、CITESを本来の任務を超えて拡大し、あらゆる保全上の議論の場にしようとする誘惑も高まっています。それにより条約の実効性を損なうリスクがあります。

 本条約には、十分に活用されていない、あるいは軽視され、場合によっては誤解されている可能性もあるものの、生物多様性危機という深刻な課題に真正面から向き合い、条約の使命にしっかりと根ざした形で私たちの取り組みを構築するための基盤となる、3つの規定があると考えます。これらについて考察を述べたいと思います。

 まず一つ目は、予防原則です。野生種の直接の搾取が生物多様性減少の上位の要因であることを、IPBESの「地球規模評価報告書」は明らかにしました。このような背景から、国際取引が種の絶滅の原因であることは、反論の余地がありません。
 条約の運用の中核、とくに附属書Iには「国際取引の影響を受ける、あるいは受ける可能性のある絶滅危惧種をすべて含める」という規定があります。この規定は規範的であり、基準を満たす種を附属書Iに掲載することを要求しています。基準の範囲は広範かつ予防的です。
 起草者は予防的アプローチを「原則」から「具体的な法的義務」へと転換し、国際社会が生物多様性危機における国際取引の影響を常に警戒し、対応し、積極的に対処する機会を提供しました。

1. Appendix I shall include all species threatened with extinction which are or may be affected by trade. Trade in specimens of these species must be subject to particularly strict regulation in order not to endanger further their survival and must only be authorized in exceptional circumstances.

ワシントン条約第2条1項 附属書Ⅰの定義 

 二つ目は、市場管理(マーケットコントロール)です。CITESは、許可制度の全体的な設計と構造に反映されているように、市場管理条約です。そのため国内市場による影響への懸念は、附属書 I の種の国際取引の重要な条件です。輸入国には、国内市場が条約の目標を損なわないようにする義務があると私は主張します。第13条は、違法取引と持続可能な取引の両方に対処する義務を規定しています。遵守メカニズムの発動条件は条約に明確に定められています。過度に社会からの理解に配慮するあまり、「締約国は条約違反や違法行為に対処するための措置を講じなければならない」という規定を見逃さないようにすることが重要です。

 三つ目は、条約遵守のメカニズムです。条約の交渉史を振り返ると、条約の起草者は、より機能的なアプローチ、つまり「明確に特定できるものだけを満たす」という枠にとらわれたアプローチではなく、「条約の目的を達成することを最終的な目的」としたアプローチを意図的に選択しました。機能的なアプローチとは対照的に、条約違反に焦点を当てたより厳格なアプローチです。

 条約の目的を堅持すれば、CITESは明確さと信頼性をもって野生生物と人々を助け続けるでしょう。

日本政府は「規制の増加」を問題視している

 以上がCITES CoP20のサイドイベントでのプレゼンテーションですが、『生物多様性国家戦略2023-2030 の実施状況の中間評価』によると、日本政府は条約事務局と加盟国の業務量の増大を「規制の増加」とみているようです。

野生動植物の保護について、近年の条約事務局及び加盟国の業務量が肥大化している。これは不明確な基準により規制を増加させていることに原因がある可能性があり、真に保護を必要とする種の保全に取り組むことを目指し
て、関係国に理解を広げていきたい。

生物多様性国家戦略2023-2030 の実施状況の中間評価 令和8年2月 
生物多様性国家戦略関係省庁連絡会議 P185

 附属書掲載の基準は決議9.24(CoP17で改正)で規定されています。例えば附属書Ⅰには、IUCNレッドリストに準じる基準があり、A.小さい個体群 B.限定分布面積 C.生息数の著しい低下 について少なくとも一つに合致している必要があります。
 また日本政府の「不明確な基準」が附属書Ⅱの類似種規定を指すのであれば、「【CITESCoP20】英国による類似種掲載基準の検討提案について」で詳細に述べているように、類似種規定を法執行のための有効なツールと考える国は多くあります。「附属書Ⅱに掲載すれば国際取引が管理されて持続可能な利用ができる」「附属書Ⅰに掲載して保護すべきだ」と考える締約国が多数だから決議の結果、附属書掲載種が増えたのです。上記の日本の生物多様性国家戦略中間報告に書かれた「真に保護を必要とする種の保全」とは何でしょうか。

 日本ではCITESは附属書掲載の有無が話題になりがちですが、附属書掲載提案以外にも議題は数多くあり、元事務局スタッフのモーガン氏はその中の種の個別の議題が増加したことが事務局の負担を増やしたと指摘しています。そしてライブナル教授は、議題の増加はCITESが成功した条約で期待されているためであり、本来の任務を超えて拡大することに警鐘を鳴らしています。

 一方で日本政府が強く主張した、ウナギ属の附属書Ⅱ掲載の否決や、密輸出が指摘された象牙の国内市場を維持は、ライブナル教授が挙げたCITESの基盤である、予防原則、市場管理、条約順守に反していると言わざるを得ません。

 今回の締約国会議に関して、養殖業者やうな丼を食べている人にインタビューして「規制されてウナギが高くなったら困る」というコメントをとるテレビ映像を何度も見ました。CITESに関する本質的な日本語での報道がないため、JWCSがオブザーバーとして会議に参加し、参加者と意見を交わし、記録を残すことが重要だと強く感じました。

萩原幹子(JWCSプロジェクトスタッフ) 鈴木希理恵(JWCS事務局長)

皆様からのご寄付と会費で、この会議に参加することができました。ありがとうございました。次回も参加できるよう、ご支援をお願いいたします。
ご寄付 https://congrant.com/project/jwcs/4104
ご入会 https://congrant.com/project/jwcs/4114

CITESの50年の歩みが会議場に掲示された
1973年3月3日にワシントンD.C.で採択され、1975年7月1日に発効
日本は1980年に批准
1992年 第8回締約国会議を京都で開催
2002年サンディエゴ 2004年バンコク 2007年ハーグ
2010年ドーハ 2013年バンコク 2016年ヨハネスブルグ 2019年ジュネーブ
2022年パナマシティ 2025年サマルカンド

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