わたしの身体は、これから少しずつ変わっていくと知っている
わたしは、自分の身体がこれからどう変わっていくのかを知っている。
生まれたときから目が見えにくく、弱視として生きてきた。
でも、耳は違った。耳は、大人になる過程で少しずつ、聞こえにくくなっていった。
子どもの頃は、一対一なら小声で会話だってできた。でも、少しずつそれは難しいものになっていった。そして今、これからもっと聞こえにくくなるかもしれない、と言われている。
人工内耳の手術をすれば、聞こえやすくなる可能性が高いとも言われた。同じオーディトリー・ニューロパチーの仲間の中には、すでに手術をして人工内耳をつけている人もいる。
とても稀な病気で、日本にわずかしかいないと言われている。それでも、わたしは彼らと出逢い、つながることができた。令和の今の時代に生きているからこそ出逢えたつながりだ。
みんなそれぞれの場所で活躍している。その姿を見るたびに、この先のわたしも「大丈夫」と思える自分もいる。
それでも。
まだ手術をしていないわたしにとって、人工内耳はどこか遠くて、未知の世界だ。
「もういつでも手術できる時期です」と言われている。でもわたしは、子どもの成長のタイミングを理由に、もう少し待ってほしいと伝えている。
子どもはいま小学4年生。声変わりを、自分の耳で聞き届けてからにしたい、そんな気持ちもある。また、中学生になり、少し落ち着いてからがいいのではという思いもある。
それでも、本当は、時期を逃していないかなと迷うこともある。
今、まだ聞き返しは多くても、会話ができているうちに手術をしたほうがいいのではないか。その方が効果が高いのではないか。
そんな考えが、頭の中をぐるぐると回り続ける。
正直に言うと、決断することは簡単なことではなく、不安も大きい。
見えにくい、さらに聞こえにくい。このままだと、もっと聞こえなくなるかもしれない。
人工内耳も、やっぱりこわい。
それでも、わたしはこれからの人生を生きていく。あと半分、もしかしたらそれ以上、生きていかなきゃならない。
でも、わたしは明確に「身体の未来」を知っているから、不安になるだけじゃないのかな?という想いがわいてきた。
人はみな、年を重ねれば目も見えにくくなり、耳も聞こえにくくなる。年齢に関係なく、人生の途中で見えなくなったり、聞こえなくなったりする人もいる。
わたしはただ、それが少し早く、少しはっきり見えているだけなのだ。
だから、今「身体」に向き合うし、思い切り悩む。ただ、見えているから向き合うだけで、見えていない人もみな、いつか身体の問題に出逢うのに。
だったら、見えにくいことも、聞こえにくいことも、一見マイナスに見えるこの身体の特性も、全部ひっくるめて、自分の強みに変えて生きていきたい。
くよくよしていたら、あっという間に時間は過ぎていく。何もしなければ、ただ聞こえなくなる日を待つだけになってしまう。
勇気を出して、一歩踏み出せば、人工内耳をつけるタイミングがきたら、えいっと踏み出せば、「聞き取れる未来」、そして「人々と出逢い続ける未来」に近づくかもしれない。
亡くなった大好きな祖父が、よく言っていた。「人生は航海だ」と。
わたしの航海は、きっと穏やかではない。荒波にのまれそうになる日もあるし、船から落ちそうになるくらい、強い風にあおられることもある。
でも、ときどき、息をのむほどきれいな日の出に出逢うことがある。
その景色を、わたしは隣にいる誰かと分かち合いたい。
水しぶきでびしょびしょになっても、晴れた日には、またちゃんと乾くから。
少し厳しい航海でも、それがわたしの人生なのだから。わたしは、わたしのペースで進んでいきたい。
この船には、ときどき新しい人が乗ってくる。その出逢いの中で、長く一緒に航海する人も現れる。
身体への不安は、きっと一生消えない。この身体で生まれた限り、人間として生きている限り、一生付き合っていくもの。
見えにくいこと。聞こえにくいこと。これから聞こえなくなるかもしれないこと。人工内耳という、まだ知らない世界だって待ち受けている。
それでも、この身体は、もうわたしの人生そのものなんだから、ときどき逃げ出したくなったって、真正面から向き合い続ける。
この船の上から見える景色は、きっと誰かと見るもの、感じるもので。この身体だからこそ見える社会は、カタチを変えて、たくさんの人々と考える社会になる。
誰にとっても生きやすい世界に変えていくために。一人一人が生まれながらにして持った自分にしかないものを見つけ、きれいな花を咲かせられる世界に変えていくために。
変化する身体をまるごと受け止めて、強みに変えて、この航海を続けていこうと思う。
この船の上から見える景色を、わたしはこれからも見続けていきたい。
そしていつか、その景色を、誰かと分かち合えたらいいなと思っている。
*
わたしは弱視・難聴の当事者で、小4の息子の母。学校や企業で、楽しみながら障害や人権を学べる授業や研修も行っています。愛犬のトイプードルと過ごしたり、カフェ巡りや子どもとのお出かけ、ドラマや映画、読書、LINEマンガを楽しむこともあります。
ただ、見えにくくて聞こえにくいだけの、ひとりの母です。
このnoteでは、そんなわたしの日常や、誰も取り残されない社会についての考え、研修や講師活動の様子を発信していきます。
もしよければ、一緒に誰も取り残されない、一人一人が素敵な花を咲かせられる社会を考える小さな一歩を踏み出してみませんか?🌸
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