おばあちゃんに千羽鶴を~忘れられない10歳の12月
10歳の12月ほど忘れられない12月はない。
もうあれから20年以上経っているけど、あの年の12月の記憶は、つい先月のことのように、何日分も鮮明に覚えている。
前回は手術編を書いた。
おばあちゃんが倒れた 12月27日
12月27日金曜日、ハッキリと金曜日とまで覚えている。
夜テレビを見ていると、電話がかかってきた。
母の声がいつもと違う。なんだかとても心配そうな不安げな声。
電話を切った母に、どうしたのと尋ねると、「おばあちゃんがたおれたんだよ」と教えてくれた。
10歳のわたしは、まだなにが起こったのかよく理解していなかった。
それでも、母の様子がいつもと違うのを見て、「おばあちゃん大丈夫なのかな…」と不安になった。
そのあと遅くまでわたしは眠れずにいると、仕事納めの父が帰ってきて、祖母が倒れたことを母から聞いている。
その様子を見て、倒れるということの意味を理解しはじめ、わたしは不安になりいてもたってもいられなくなった。
千羽鶴を折る 12月28日
12月28日土曜日、わたしは朝からせっせと千羽鶴を折り始めた。
父はその日、祖父母の家に飛行機に乗って行った。
母も兄たちも、とても落ち着かない雰囲気だったので、わたしは不安をかき消すかのように、千羽鶴を折り続けた。
何羽折れたのかは覚えていないけど、のちに祖父に見せてもらった千羽鶴は数百羽はあったと思うので、土曜日は無我夢中におり続けていたのだと思う。
10歳のわたしは、「千羽鶴を折ればおばあちゃんが助かる」と信じていたから。
おばあちゃんがお空にいったよ 12月29日
12月29日日曜日、朝起きてからまだ千羽鶴を折り続けていた記憶がある。
わたしが千羽鶴を折っていると、リビングの椅子におばあちゃんが座っているように見えた。
おばあちゃんがにっこり笑ってこっちを見ている。
そんな光景がずっと頭のなかに残っている。
しばらくして、電話が鳴り、母が震える声で泣き始めた。
「おばあちゃんが亡くなったの。お空にいったよ」
びっくりした。あの元気なおばあちゃんが亡くなるなんて、そんなことは絶対にないと思っていた。千羽鶴もこんなに折ったのに、うそでしょ?と。
わたしはそのあと、床につっぷして泣いた。
さっきおばあちゃんがそこにいた気がしたのに…おばあちゃんのことを想って千羽鶴を折り続けていたからなのかな。それとも会いにきてくれたのかな。
その日はずっと泣き続けていた。
おばあちゃんの記憶はずっと元気なまま
翌日、30日にわたしたち兄弟と母も飛行機で祖父母の家に行った。
超元気だったおばあちゃんは、本当に突然に倒れて、突然にお別れになった。
お花の教授をしていたおばあちゃんは、12月も忙しく、京都まで出張に行ったりしていた。
12月27日倒れるその日も、元気に明るくお稽古をしていたそうだ。
おばあちゃんはお寿司が大好きだった。
亡くなったその日はいつも食べていたお気に入りの出前のお寿司を食べ、おしゃべり長電話が大好きなおばあちゃんは、仲良しの義姉と長電話をしていた。
長電話をしている最中に、倒れたと聞いた。
大好きなお仕事をその年の分はキチッと終わらせ、おじいちゃんとおいしいお寿司を食べ、仲良しの義姉と電話中に意識がなくなる。
おばあちゃんとのお別れはあまりにも突然で悲しかったけれど、おばあちゃんは、おばあちゃんの生き方を親戚たちから聞いたわたしは、わたしも強く明るく楽しく生きていかなくちゃいけないなと心に決めた。
おばあちゃんから届いた最後の年賀状
お葬式を終え、家に帰るとおばあちゃんから年賀状が届いていた。
いつもはお花のお仕事が忙しくて、1日に届くことなどなかったらしいのに、その年はきっと早めに出していたのだろう。
27日に倒れたのに、帰ったら「ことしもよろしくね」とおばあちゃんの字。
新しい年になっても、これから先もずっとそばにいるよと、わたしたち家族に伝えているかのような年賀状だった。
おばあちゃんに守られている 5年生
それからわたしは、おばあちゃんに守られているような感覚になった。
3年生・4年生ごろは、クラスにちょっと意地悪な子がいて、学校でイヤでたまらなかった。
でも、5年生になってから、意地悪な子は相変わらずいたのに、仲良くしてくれる友達の存在が大きくなり、楽しく過ごせるようになった。
「おばあちゃんはずっとリコのこと見守ってくれてるんだよ」
って、母たちが言っていたから、きっとどんなときもそばで見守ってくれていると感じたのかもしれない。
そのあとの人生でも、不思議とおばあちゃんに導かれたのかも…と思うことが増えた。その話はまた今度。
おばあちゃんは人を笑わせるのが大好きだったから
12月29日、おばあちゃんの命日。
人を笑わせることが大好きだったおばあちゃん。
息子もおばあちゃんに似ている気がする。
「オレ、人を笑わせるのが好きなんだ!」
今朝も陽気な息子を見て、おばあちゃんも一緒に隣で笑っているような気がした。
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