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『いま動く制度、ゆれる現場──外国人雇用と在留資格』シリーズ”59”_【2025年12月10日現在】第11回有識者会議【資料1-2】「昇給・待遇改善はどこまで義務化されるのか?」

『いま動く制度、ゆれる現場──外国人雇用と在留資格』

「昇給・待遇改善はどこまで義務化されるのか?」

――育成就労制度の核心を読む

みなさま、こんばんは。東城です。

昨日の記事では、転籍制限と待遇改善がセットで設計されている背景をお話ししました。

今日はその続きとして、もう少し具体的に「待遇改善の義務化」と「企業の準備」について考えてみたいと思います。


まず大前提として理解しておきたいことは、今回の制度は “動かないことを前提にする制度”ではなく、動けない期間でも“成長を感じられる制度”である ということです。

転籍制限を設けるというのは、ただ外国人の移動を抑えるためではありません。人権を尊重していないという批判の中での制限ですから、とても重要です。

その期間に、しっかり育成が進み、評価が上がり、待遇が改善されることを前提にして制度を設計しようとしているのだと思います。


(1)待遇改善は義務なのか、それとも努力義務なのか?

多くの企業が気になるのは、「待遇改善は義務なのか?」という点だと思います。

結論から言えば、今回の制度が想定しているのは “義務に近い制度運用の仕組み” です。

資料では次のような運用設計が示されています。

まず、施行後おおむね3年を目途に運用状況の見直し を行うこと。これが基本線です。3年という期間は、単に制度の“評価タイミング”を決めるものではありません。そこには、育成・待遇・現場の定着といった5年程度のサイクルまで見据えた長期思考が含まれています。

そして、毎年の昇給実績を国が確認するという仕組みが想定されています。この点は非常に重要な意味を持っています。

通常、日本の労働制度では、昇給・評価は企業内の裁量です。

しかし今回の育成就労制度では、転籍制限を設ける分野については、昇給の実績を毎年チェックする対象になると読み取れます。

なぜこれほどまでに待遇改善が注視されるのか。

それは、転籍できないという “不自由さ” が伴う制度である以上、
その不自由さを正当化するだけのメリットが本人に還元されなければならないからです。

つまり、転籍できないからこそ、成長に見合った賃金アップがあるのか、同じ分野・同じ職種で評価が上がっていくのか、本人のキャリアが積み上がっていくのか、これらを制度として担保する必要があるということなのです。


(2) 待遇改善の枠組みはどこまで義務なのか?

ここで重要なのは、「昇給が絶対に必要だ」と一律に言っているわけではない、という点です。

むしろ制度が追求しているのは “待遇改善のプロセス” を制度として組み込むことです。

たとえば次のような仕組みが導入されることが想定されています。

①昇給の実績を年次報告として確認

企業は年度ごとに育成就労者の昇給実績を国(行政)に報告します。
ここで問われるのは「昇給の有無」だけではなく、
「なぜ昇給になったのか」「なぜ昇給できなかったのか」という評価プロセスそのものです。

つまり、単なる“数字としての賃金差”ではなく、
「待遇改善が本人の成長と紐づいているかどうか」
という点が重要になります。


②他の育成就労実施者との比較も行われる

同じ分野内で、待遇が極端に低い企業があるとすぐに目につきます。
評価制度が形だけで実質が伴わない場合、制度は形骸化してしまいます。
そこで想定されるのが、同業他社との比較評価です。

政府は、この比較を通じて、業界平均と比べて大きな差がある企業がないか、特定の企業で待遇が改善されていない分野はどこか、といった点をチェックすることになると思います。

この比較制度は、単なる“義務づけ”というよりも、
“業界の底上げ” につながる仕組み と言えます。


(3)企業はどのように準備すべきか?

では、現場の企業はどう備えればよいのでしょうか。

現時点では、まだ具体的な政省令や通知が出揃っていませんが、ここから先に確実に求められるのは次のような準備です。


① 育成評価の仕組みを明確にする

まず企業は、育成過程をどう評価するのか、
その評価結果をどう昇給や待遇改善につなげるのかという、
評価制度そのものを整備する必要があります。

たとえば、単に「1年が経過したので昇給」とするのではなく、習得した技能の一覧、評価者からのコメント、日々の勤務態度と成長の記録などをきちんとデータ化・可視化しておくことが重要になります。

これは、制度運用上の報告資料にもなりますし、本人のキャリア形成にとっても大きな価値があります。


②昇給・待遇改善のプロセスを制度化する

育成評価と昇給はセットで考える必要があります。
昇給が単発的なものではなく、プロセスとして設計された評価制度になっているかどうかが問われます。

つまり、昇給の基準(例、技能Aを取得したらX円アップ)、評価期間の設定、昇給判断の論理的一貫性、、、これらが、外部から見ても整合性が取れる状態であることが求められます。


③他社平均との比較に耐えうる待遇体系を整える

同一分野内で極端に待遇が低い企業は、制度としても改善を求められる可能性があります。

ですから、自社の待遇水準が、業界平均と比較して、地域性としてもどうかを把握し、必ず、評価することを前提に、待遇改善の計画を立てておくことが重要です。

これは単に海外人材に限定した対応ではなく、企業全体の人材戦略としても極めて重要な視点です。


最後に__これからの制度は「育てる仕組み」になる

今回の育成就労制度は政府が作り挙げたものですが、私たちが目指しているものは、単なる人手不足対策ではありません。人材を育て、その上で待遇を改善し、本人が「ここで成長できている、評価されている」と実感できる仕組みです。

転籍制限は、そのための時間を確保するための設計ですが、それ以上に大切なのは、その時間が本人にとって価値ある時間であることです。

待遇改善という観点は、制度の「義務化」ではなく、「価値づくり」の側面として捉えたいところです。

企業と外国人労働者が共に成長できる関係を築くことこそが、この制度が本来目指す姿なのだと思います。


次回は、これらの考え方をもう一歩進めて、
「分野別にどう現場の制度設計を変えればよいか」
というテーマで具体的な設計案を考えていきたいと思います。

本日も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!




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