記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画「怪物」監督・是枝裕和、脚本・坂元裕二WOWOWで放送

5月12日にWOWOWで放送されたので観た。映画のほぼ初めの場面で、「豚の脳の移植」の話が出て来て、小説『フランケンシュタインの怪物』から、映画のタイトルを付けたんだろうということがピンと来た (なお、僕には『フランケンシュタイン』の文庫本に解説を書き学術的に研究している専門家の知り合いがいた。昔、「ぴあ」の『エレファント・マン』の映画評で、光/闇:善/悪の単純な二元論ではないデビット・リンチの世界観と褒めたら、『フランケン…』はもっと凄いことを彼女に教えられた)。

前評判では、母親・教師・子供の三人三様の視点で描かれた黒澤明監督の「羅生門」のような映画で、“人は自分の視えるものだけを真実と見なし、自分の都合の良いように世界を構築する”というような論評は知っていたけれど、田中裕子の校長のまさに達観した第4の視点・観点を論者は看過していると思った。

まず、泣き叫び憤る演技の母親役の安藤サクラに最優秀女優賞を授与する日本アカデミーは所詮B級な映画賞だと思う。その点、カンヌは坂元裕二に脚本賞を授与しているが流石だ。火事をタイムスタンプとして一幕二幕観て行けば、各人物の行動の必然性が明らかになり、それまでの胸のつかえが解消される物語の構成になっていて見事だった。

エンディングの解釈を巡って、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のように、少年二人が死後に蘇って転生したなどという、穿った意見もあるが、単に“秘密基地”の抜け穴を抜けて台風一過、喜んでいるだけだろう。

「怪物」少年たちの戯れ

映画の宣伝で「かいぶつ、だーれだ」のキャッチコピーを持って来たのも完全なミスリードだった 。カンヌで脚本賞を獲ったと伝えていたけれども、クイア・パルム賞を授与されたことは伏せていたのも、BLやLGBTQ+を出汁だしに使いたくなかったのだろう。学校の官僚機構のような対応が、“私が話してるのは人間!?”と母親に言わせたり、その母親を、学校の教頭に、“モンスターペアレント"だとか言わせているが、それは最初の一幕・二幕があくまでも脚本が意図的にステレオタイプ的な視え方で描いているからである。教頭役の東京03の角田晃広の演技がコントチック過ぎて引いたという意見も耳にしたが、まさにあれこそ、“学校”をステレオタイプにしか視ない・視えない母親の視え方だったのだ。

特記:母親との面談中に教師が飴を舐めたシーンに関する参考になるコメント『飴についてですが、ノベライズ版では広奈が保利先生にあげた飴の袋に“リラックス効果”と書かれているとの説明がありました。また、「あまりの緊張に広奈にもらったリラックス効果のある飴を舐めてしまったのは失敗だった」と保利先生の胸中も書かれています。』

観ていて胸が苦しくいたたまれない思いに駆られたのは、自分の人生での実体験と重なり(同性愛は別として)、ひどく身につまされたからだ。

1) 超増せガキの問題児で、小5・小6の担任の女性教師二人を辞めさせたにもかかわらず、教師たちの大人の事情で卒業式の答辞を読まされた時の子供の視点、2) 女子高校の教師だった時の生徒たちの健かさ (彼女たちからの露骨な“誘惑”に負けて一歩間違えば性犯罪高校教師)や管理組織としての学校の重圧を感じた教師の視点、3) 高校教師を辞めて、進学塾の学務主任として東大・早慶大の学生講師を管理していた時の管理者 (塾経営者と対立して裁判沙汰) の視点等々、複数の視点を持つ経験をした。詳しく書けば説得力があるだろうが、このような場で、自分の過去をこれ以上、晒してもつまらないので止めておく。

なお、僕の視え方からすると、この映画の主演女優賞は断然、田中裕子であった。僕の視え方で言えば、是枝裕和監督の作品の中では、「誰も知らない」「空気人形」には届かない。(因みに、「空気人形」を演じたのは韓国人女優であったが、理由はわからないが、自殺されている。)

WOWOWでは、5月24日(土)31日(土)にも放送される。

いいなと思ったら応援しよう!