垂(たるみ)秀夫・元大使に学ぶ対中国・対台湾外交の今後
Ⅰ. 外務省が誇るスパイマスター、垂(たるみ)大使は安倍ちゃんの置き土産?台湾から“大綬景星勲章”授与
この動画は、安倍政権の対中外交を体現し、中国に厳しく、台湾と密接な関係を築いた元外交官、垂秀夫氏のキャリアを、具体的なエピソードを交えて解説している。
1. 安倍外交の「置き土産」としての中国大使
垂氏が日本国特命全権大使として中国に発令されたのは、安倍第一次内閣が総辞職した2020年9月16日と、まさに同じ日であった [00:10], [00:42]。これは、中国の動きを気にしていた安倍総理による「置き土産」のような人事であったとの見方がある [01:12], [04:26]。
垂氏は、安倍元総理が使用した「戦略的互恵関係」という言葉を考えついた人物である [01:20]。
前任者よりも短い3年余りの任期中、「中国に対して言うべきことをはっきりと言ってきた」稀有な大使であった [00:56]。
G7の共同声明への中国の抗議に対し、「中国が行動を改めない限り、共通の懸念事項に言及するのは当然」と、きっぱりと反論している [08:12]。
2. 中国に警戒された「スパイマスター」の顔
垂氏は、外務省内で「スパイマスター」と称されるほどの情報活動経験を持ち、過去に中国当局から厳しい警戒を受けている。
2006年の非公開裁判で、中国当局は日本の現外務省幹部と書記官(垂氏とされる)を「日本側のスパイ要員」と断定したとされる事件があった [02:17], [02:23]。
垂氏は香港総領事館領事時代にも北京で情報機関と接触するなど、「危険な橋を渡る」活動をしていたことが知られている [03:07]。
中国がこのような人物の大使就任を拒否しなかったのは、拒否した場合に「国際的に孤立している中国が、改めてその横暴さを世界に印象づけることになる」ため拒否できない状況を突いた安倍氏の「作戦」だったのではないかという分析がある [04:20], [04:26]。
3. 台湾との深いつながりと勲章受章
垂氏のキャリアにおいて、台湾での勤務経験は特筆すべき点であり、中国大使という立場でありながら台湾との関係深化に尽力した。
1972年の日台断交以降、外務省のいわゆるキャリア官僚で台湾に2度勤務したことがあるのは垂氏だけであり、台湾の政権幹部に密な人脈を築いていた [04:46], [04:52]。
離任時には、総領事館の総務部長のお別れ会としては異例の規模で盛大なパーティーが開催された [05:15], [05:20]。
安倍元総理が「台湾有事は日本有事」と発言し中国が反発した際にも、垂大使は「日本国内にこうした考え方があることは、中国として理解をする必要がある」ときっぱりと反論している [06:01], [06:20]。
2024年5月9日、対日関係促進への多大な貢献が認められ、台湾の蔡英文総統より「大綬景星勲章」が授与された [06:33], [06:39]。
蔡英文総統はX(旧Twitter)で、「台湾にとって長年の良き友人」であると垂氏を称賛し、その努力が台湾と日本を「互いに助け合う民主主義の手本」としたと述べている [06:53], [07:12]。(タイトル画像)
Ⅱ.鄧小平時代から習近平時代への変化

鄧小平時代(胡錦濤まで)
この時代の国家戦略目標は、経済発展(高い経済成長)であった。
最高優先事項: 経済発展(高い経済成長)
政策の柱: 中国共産党による改革開放
この路線がもたらした課題:
腐敗汚職が蔓延
大規模な環境破壊
経済格差が拡大し、暴動やデモ(群衆性事件)が多発(ジニ係数0.5超)
習近平時代
習近平主席は、鄧小平時代の路線がもたらした矛盾に対処するため、国家戦略の最高優先事項を「国家の安全」へと転換した。
最高優先事項: 国家の安全(社会・体制・党の安全)
優先事項の理由: 経済成長が鈍化し、社会の安定と体制の維持が最も重要になったため
旧時代の課題への対処:
腐敗汚職: 徹底的に対処(権力闘争も含む)
環境破壊: 生態環境の保全・改善に成功し、国民から高い評価を受けている(レガシー)
経済格差: 「共同富裕」を提示
結果: 適切な税制を通じた再分配に失敗し、成功した民営企業への「寄付」や罰金といった歪んだ形で富裕層から富を吸い上げる手法になっている
Ⅲ.反町理のソコが聞きたい!!『反町理×垂秀夫(前駐中国大使)』

この動画は、ジャーナリストの反町理氏が、中国外交に約40年携わってきた前駐中国大使の垂秀夫氏を迎え、習近平体制下の中国の対日戦略、日中関係の現状と未来について深く掘り下げた対談です。
垂大使が見た中国の「変貌」
垂氏は、自身が中国大使に就任した経緯(安倍政権で決まり、菅政権で着任)や、中国側が「最も恐れた」と評価したその人事の背景から議論を始めます。
戦略目標の転換:
日本の重要性の低下: 中国のGDPが日本を追い抜いた2010年頃から、中国にとって日本の重要性は政治的にも経済的にも大きく低下した [01:08:59]。この動画の収録時では、中国の外交は対米政策しかなく、日本はアメリカとの関係の距離感でしか見られていないと指摘している [22:34]。
親日感情と反日映画の「フィクション」
垂氏は、中国で相次いで公開されている反日・抗日映画が、すべての人に受け入れられているわけではないという興味深い現状を語っている。
フィクションとしての歴史:
反日プロパガンダに抵抗する人々:
日本が取るべき戦略
垂氏は、現在の厳しい日中関係の状況で、日本が取るべき外交姿勢について提言している。
「戦略的臥薪嘗胆」:
戦後80年談話の不要性:
10年ごとに出すことに政治的な意味はないとし、平和や戦争について考えるべき時に、政治家個人の感想を伝えれば十分であり、あえて出すべきではないとの考えを表明している [01:06:39]。
Ⅳ. 親日家になった中国人の感動エピソード
【政治家は「遠吠え」脱却を】総裁選の外交論は空虚?/安倍外交のすばらしさ/反中感情の正体/国益最優先の戦略思考/東京の不動産「極めて魅力的」《垂秀夫・元中国大使》
この動画は、元中国大使の垂秀夫氏が、日本の対中外交や政治家の戦略思考、そして中国人の対日観について深く語ったもので、特に日本と中国の歴史的な結びつきや、日本の国益を最優先する外交のあり方について言及している。
1. 親日になった中国人の感動エピソード
垂氏は、中国の裕福で教育水準の高い人々は、日本の歴史・伝統・文化に非常に高い敬意を払っていると述べ、その具体例として友人のエピソードを紹介した [03:32]。
初来日と感動: 垂氏の友人は元々反日感情を持つ中国人であったが、2012年に初めて日本を訪れ、日本人の優しさに驚いたそうだ。彼は最初に奈良の法隆寺を訪問。建築を学んだ彼にとって、自身が学んだ古い時代の建物様式がそのまま残っているのを見て、思わず膝まずいて涙を流し、立ち上がれなくなったという [04:09]。
日本への感謝と擁護: 友人は「日本及び日本国民に対して感謝申し上げる」と述べ、現在は奈良に家を買って住んでいる。彼は、誰よりも日本の歴史・文化・伝統を擁護し、中国人に対しても日本の弁護をする存在になっているとのこと [04:59]。
正倉院の琵琶のエピソード: 垂氏は、世界的に有名な中国の古典楽器奏者のエピソードも紹介した。奏者が日本を訪れ、正倉院に通常は4絃であるところの5絃琵琶(ごげんびわ)が残されているのを見て驚愕した。彼は中国に帰国後、自ら5絃琵琶を制作・演奏し、公演のたびに「日本はすごい国だ」と日本の文化継承の素晴らしさを宣伝しているという。
2. 対中外交と日本の課題
不動産投機と規制の必要性: 中国からの投機目的の不動産購入(東京、京都、ニセコなど)が集中している現状を指摘。中国国内での規制強化(習近平氏の住宅は住むためのもの発言)を背景に日本へ資金が流れているとして、日本の国民が不動産を買えなくなる事態を防ぐため、投機目的の購入にはしっかり規制すべきだと主張している [01:09]。
反中感情への提言: 日本で「嫌中・媚中」感情が高まる背景には、中国共産党の行動(尖閣問題など)と中国人民を一般国民が同一視してしまう問題があると分析。アメリカのポンペオ元国務長官の例を挙げ、中国共産党と中国人民を分けて考えるという戦略的な発想が重要だと述べている [08:08]。
安倍外交の真髄: 安倍晋三元総理の対中外交は、「右手は握手、左手は拳を握る」(テーブルの上と下を使い分ける)というもので、「日本の国益が一番重要」という考えに基づき、感情ではなく安全保障と経済のバランスを巧みに取っていた点を評価している [19:52]。
3. 戦略的思考と歴史的観点
長期的なリーダーシップの必要性: 外交という観点から、誰が総理になっても4〜5年は務める安定した政権が必要だと強調している [18:12]。
戦略的思考の欠如: 日本の外交は、中長期的な戦略思考ではなく、目先の「問題処理」ばかりに終始しがちだと批判。交流事業一つをとっても、「何のために、誰を日本に招き、何を見せるか」という明確な目的を定めた上で実行すべきだと提言している [14:51]。
日中の歴史的結びつき: 日本と中国の歴史は「人間ドラマ」で深く絡み合っていると指摘。例えば、明代の儒学者が水戸光圀に影響を与えた例や、日本が辛亥革命を支援した例などを挙げ、互いに助け合ってきた側面も強調している [32:46]。
「歴史を感じる」政治家: 政治家や外交官は、自身が「日本の歴史を作っていく」という意識を持つことが重要であり、そうした人物こそがリーダーにふさわしいと語っている [30:02]。
Ⅴ. 自著『日中外交秘録』を自ら語る
元中国大使の垂秀夫氏が、自著『日中外交秘録 垂秀夫 駐中国大使の闘い』について語ったインタビュー動画を以下に紹介する。この本は、彼が「中国が最も恐れる男」とまで呼ばれた、波乱に満ちた大使としての3年間の記録である。
1. 大使の姿勢と中国との「闘い」
「チャイナ・スクール」の誤解を解く
垂氏は、外務省のチャイナ・スクール(中国語研修組)が「対中軟弱外交官」と誤解される風潮に強い不満を表明した。
彼は、公務員は「お国のため」に働くのであって、中国政府のためではないと断言する。彼のような真面目な外交官は、「チャイナ・スクールという十字架を背負わされている」状況だと述べ、対中外交をしっかりやっているのに後ろから矢が飛んでくると現状を嘆いた。
「垂情報」の威力と「友人」の存在
彼は、自身が「中国が最も恐れる男」ではなく、むしろ「中華圏で最も友人の多い男」であると自己評価する。
幅広い人脈を通じて、世界で外国人が最も早く接するような極秘情報を入手し、その情報は「垂情報」として一目置かれていた。
情報収集の鉄則は、最初から強硬派の姿勢を見せないことであり、相手に対する心からの誠意こそが信頼関係構築に最も大事だと語る。
中国戦狼外交への対処
大使として、中国外交部から何度も呼び出しを受け、その都度、中国側が自らに都合の良い「嘘」や「論理」だけを外に発表していた。
これに対し垂氏は、中国側が発表したら必ず日本の反論をできるだけ短くまとめて対外的に発表するように心がけた。その結果、日本のメディアも慣れ、最終的には中国側の発表よりも日本の反論をメインで報じるようになったと感謝の意を示した。
彼は、「反中や嫌中という意識で反論するな」と部下に言い聞かせ、常に理をもって淡々と主張すべきことを主張しただけで、「戦狼」になったつもりはないと述べた。
部下の名誉のための激怒
中国当局が大使館の外交官を拘束した際、ウィーン条約違反であることから、普段は冷静な垂氏も激怒し、外交部に乗り込んで「お前は鹿を見て馬だと言う者(指鹿為馬)と同じだ」と強く非難した。これは、自分の部下がやられた時に冷静ではいられなかった、唯一感情的に切れた瞬間だったという。

2. 日中外交の戦略と哲学
「戦略的互恵関係」の考案
「戦略的互恵関係」という言葉は、垂氏が外務省課長級だった2008年頃、当時の八千草太郎事務次官の宿題を受け、考案したものであった。
しかし彼は、この言葉をただ「お題目」のように唱えるだけでは意味がなく、戦略的な対中外交を伴わなければならないと警鐘を鳴らす。
外交とは「日本の歴史を作ること」
外交とは、特に日中外交においては日本の歴史を作ることであると述べた。
50年後、100年後の未来の歴史家から「歴史に恥じない外交」であったと評価されることを念頭に置き、職務にあたったと語る。
共産党と人民を区別する戦略
対中外交において最も大事なことは、中国共産党と一般の中国人を区別して理解することだと主張する。
中国が最も嫌がった外交手法は、アメリカのポンペオ国務長官が用いた、中国の毛沢東の「統一戦線工作」の学びを逆手に取り、中国共産党と中国人民を分けて扱うことだったと指摘する。
14億人全員を敵に回すのは最もまずいやり方であり、殲滅する敵は少数であればあるほど良いという孫子の兵法にも通じる戦略だと解説する。
3. 台湾有事と中国人の実態
台湾有事の可能性と広義の有事
台湾有事(武力侵攻)が起きる可能性は、世間で言われるほど高くはないが、備えは必要だと考える。
しかし、真に懸念すべきは広義の意味での台湾有事であり、武力侵攻に至らなくても、台湾社会への浸透工作や軍事演習による台湾封鎖(ブロッキング)といったグレーゾーンの事態が深刻化していると警告する。
実際、台湾では軍関係者を中心にスパイ案件が多数摘発されており、必ずしも武力進行しなくても社会自身が崩壊していく恐れすらあるという。
日本に来る中国人の背景
近年、日本をはじめ各国で中国人が増加している背景には、習近平政権下での抑圧と、ネット空間の支配による人民の「はけ口」の喪失があると分析する。
かつてのような暴動やデモが起こせなくなり、不満を持つ人民が外国に逃げるしかない状況だという。
日本に来ている中国人が全て当局と内通しているわけではなく、むしろ当局の監視や指示から「逃れたい」と願う人が多いという実態を理解すべきだと主張した。
4. 退官後の活動
垂氏は外交官を退官した後、趣味であった写真撮影を活動の中心に置いている。
中国や台湾で撮った写真を通じて、体制や国益が違っても、人々が持つ喜怒哀楽の感情は変わらないということを伝えていき、文化的な交流を持っていきたいと語っている。
自著の表紙を飾る木の写真(内モンゴルで撮影)は、中国の日本人学校に寄贈された写真であった。
この本は、垂氏が40年の外交官生活で培った知恵と経験、特に最後の中国大使としての「闘い」を余すことなく記した秘録となっている。
Ⅵ. 【中国の真実と10年後:元駐中国大使・垂秀夫】動画紹介
元駐中国大使である垂秀夫氏が、中国の政治、経済、そして日中関係の未来について深掘りした詳細な対談の内容は以下の通りである。
1. 中国分析の基本と日中の根本的な違い
元大使は、中国を分析する上で最も重要な心構えとして「感情を排して中立的に、客観的に見ること」を強調している。また、中国の「今」を知るためには、情報収集と人脈作りが不可欠であるとし、自身の経験を語っている。
人脈作りの重要性: 大使館勤務中も昼夜を問わず中国人と会食を重ね、仕事と遊びの区別がないほどの密な付き合いを通じて「人脈」を築いてきた。
中国人との付き合い方: 日本人と中国人は発想が全く違う国民同士であり、日本的な「水臭い」付き合い方では中国で友人は深まらない。中国特有の「圈子(チェンズ)」という仲間内の輪に飛び込み、「親しい中には礼儀なし」の精神で徹底的に懐に入り込むことが重要である。
必須の知識: 中国を理解するには、中国共産党を知る必要があり、特にレーニン、毛沢東、キッシンジャーの戦略的思考を学ぶことが欠かせない。日本人に最も足りないのはこの「戦略的思考」である。毛沢東の思想は、今なお中国共産党の基本となっている。
2. 習近平体制の特徴と中国の未来予測
習近平時代は、集団指導体制を破壊し、「一党支配」でもなく、権力を集中させた「一人支配体制」が最大の特徴であり、その目的は国家安全の最優先と国際秩序の変革にある。
習近平が目指す世界観: 習近平は現在の国際政治経済秩序を不合理・不公平とし、グローバルサウスと共に変革しようとしている。これは、中国を中心とする現代版の冊封体制に似た世界観を構築しようとする試みである。
AI による概要
冊封体制とは、
中国の歴代王朝が、周辺諸国の支配者を「冊封」して「臣」とみなし、中国を「天子」とする君臣関係を築いた国際秩序です。この体制は、中国王朝の権威を背景に、周辺諸国との政治的・文化的関係を維持するためのもので、相手国は朝貢などを行い、中国から称号や任命書を受け取っていました。
冊封体制のポイント
・中国が中心: 中国皇帝を「天子」とし、周辺諸国の長を臣下の「王」や「侯」に任命する、中国が中心となる体制です。
・名目上の君臣関係: 実際には相互承認や交易特権などを伴う儀礼外交の側面もあり、周辺国との間に名目上の従属関係を結ぶものでした。
・朝貢と冊封のセット: 周辺諸国は中国に朝貢(貢物を献上)し、その見返りとして中国皇帝から官位や称号を授けられる「冊封」が行われるのが一般的でした。
・中国の権威と利益: 中国は、自国の権威を保つと同時に、周辺諸国との交易を通じて経済的利益を得ることを目的としていました。
例:日本との関係
・日本は古くは朝貢関係(奴国・倭国)にあり、5世紀には倭の五王が中国の冊封体制下に入りました。
・その後、室町時代の足利義満は明の冊封体制に入りましたが、次第に関係は消滅しました。
・6世紀以降は冊封体制から離脱し、朝貢関係のみを維持した時期もあります。
習近平体制の分析視座:
中国共産党の正当性(レジティマシー)の維持。
一人支配体制への移行(毛沢東時代に接近)。
国家安全の最優先(経済発展よりも重視)。

体制の未来: 習近平体制下では、人民の不満はデモや暴動ではなく、国外への流出(「国を捨てる」)という形で現れている。
体制が大きく変化する可能性は低く、よほどの経済の悪化がない限り、習近平氏の健康問題(死)が唯一の大きな転機となる。
習近平氏の死後: 彼の死後、一時的に集団指導体制が復活する可能性はあるものの、体制が合わないため長続きせず、ソフトランディング(党内民主化)かハードランディング(ソ連解体のような大混乱)に移行する可能性がある。
3. 中国経済の深刻な実態
中国経済は、国家安全優先の政策により停滞しており、表面的な成長率とは裏腹に深刻な問題を抱えている。
GDP成長率の虚偽: 中国が発表する5%以上の成長率は信用できない。実際は良くて1〜2%程度の低成長、あるいはゼロ成長の可能性がある。
不動産市場の罠: 不動産価格を少しずつしか下げない政策により、人々は「また落ちる」と考えて買い控え、売却できなくなった物件は実質的に資産価値ゼロとなっている。これが消費低迷(全消費の3割を占める不動産関連費)の大きな原因となっている。
BYD危機: 電気自動車大手のBYDも例外ではなく、安売りは現金化の必要性から来ており、不動産会社と同様の錬金術(手形による支払い延期)が逆回転していることが指摘されている。
一帯一路の失敗: 対外融資も、スリランカの港湾案件のように、中国側から見ても回収不能な「失敗案件」が多く、海外にも「鬼城」(途中で放置された建物)のような状況が広がっている。
4. 台湾問題と日中関係への提言
中国の対台湾政策は、武力行使のリスクを避け、「平和的統一」を成就させることに主眼が置かれている。
「平和的統一」の罠: 中国の台湾政策は「武力進行」を伝家の宝刀としつつ、実際は台湾の石垣を一つ一つ抜くように、社会の分断や影響力の浸透を通じて「戦わずして勝つ」ことを目指している。
日本の戦略的思考の欠如: 日本やアメリカが「両岸当事者同士が平和的に話し合って解決を」という政策を維持することは、中国の「平和的統一」を国際社会が追認する道を開くことになりかねない。
日本の取るべき道: 「台湾有事は日本有事」と声高に叫ぶだけでなく、台湾が今の曖昧な状況を続けられるように、日本がどう協力するかという戦略的思考で対処する必要がある。日本は国力を高め、賢者であるべきだ。
Ⅶ. 垂秀夫ブレーンによる高市政権の対中外交戦略
垂秀夫氏が高市政権のブレーンとなり、安倍政権の対中外交の成功体験を踏まえてサポートする方針について、以下に戦略的な検討を提示する。
1. 基本原則:戦略的リアリズムと「安倍外交の継承・深化」
高市政権の対中外交は、垂氏の中国共産党内部の分析に裏打ちされた戦略的リアリズムを基本とするべきである。安倍政権が確立した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を継承・深化させ、習近平体制下で最優先される中国の「国家安全」の論理と、その裏にある経済の脆弱性を突いた戦略を構築する。
継承: 安倍外交の「戦略的互恵関係」の理念と、「価値観外交」による国際連携の重視。
深化: 習近平による独裁体制と「平和的統一」の罠への対抗を念頭に置き、安全保障と情報分析を最優先する。
2. 戦略の柱
柱1:垂氏の知見に基づく「戦略的思考」の徹底
垂氏が指摘する日本に不足する「戦略的思考」を政権中枢に導入し、中国側の行動原理を正確に予測する。
毛沢東戦略の活用: 中国共産党の行動決定の基礎にある毛沢東の戦略思想(長期観点、力の温存など)を分析の基礎に置き、短期的な事象に惑わされない長期戦略を立案する。
「平和的統一」への対応: 台湾への武力侵攻(伝家の宝刀)よりも現実的な脅威である「平和的統一」戦略(石垣を抜く戦略)を最重要視する。これに対抗するため、台湾社会のレジリアンス(強靭性)強化に対する間接的・非軍事的な支援を強化し、中国による社会分断の試みを阻止する。
情報分析の客観化: 垂氏が提唱するように、感情を排した中立的・客観的な情報収集を徹底し、中国発表の経済データ(例:5%成長の欺瞞)や国際世論操作の「欺瞞」を見抜く体制を構築する。
柱2:安倍外交の成功体験を踏まえた「抑止と限定的関与」
安全保障を重視する高市政権の姿勢を背景に、安倍政権の「戦略的互恵」を「抑止力最大化」と「リスク管理」の視点から再構築する。
抑止力の最大化(対抗): 日米同盟を外交の基軸とし、クアッド(QUAD)やAUKUSなど、「価値観」を共有する国家群との連携を強化し、中国の力による現状変更の試みに対し、アジア地域における強靭な抑止力を確立する。
経済的関与のリスク管理(限定的関与): 経済的依存が安全保障上のリスク(エコノミック・コンパルジョン)につながらないよう、重要サプライチェーンの強靭化(デリスキング)を加速させる。特定分野(例:気候変動、公衆衛生)においては、限定的な対話の窓口を維持し、不測の事態を防ぐためのハイレベルな意思疎通(首脳外交)を継続する。
柱3:タカ派政権としての「価値観・規範外交」の明確化
安倍政権の「価値観外交」をより明確なメッセージとして発信し、国際規範に基づく行動を中国に促す。
FOIPの規範的深化: 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を、民主主義、法の支配、人権といった普遍的価値を共有する国家群の連携軸として明確に位置づける。人権問題や南シナ海における国際法違反に対しては、臆することなく明確なメッセージを発信し、国際社会との協調を主導する。
国民への啓発: 垂氏の知見に基づき、中国の権威主義体制と戦略的思考の本質について、国民やビジネス界への正確な情報提供と啓発を強化する。これにより、強硬な外交姿勢が単なる感情論ではなく、戦略的必然性に基づくものであることへの国民の理解を深める。
結論
垂秀夫氏がブレーンとなることで、高市政権の対中外交は、安倍外交の遺産である「戦略的互恵」と「価値観外交」を、習近平時代という「国家安全」優先の現実に適応させることができる。結果として、「戦略的リアリズムに基づく、強靭な抑止力とリスク管理を両立させた外交」として確立されるであろう。
Ⅷ. 垂氏の指導に基づく高市政権の対中・対台湾外交戦略
垂秀夫氏の指導のもと、高市政権の対中・対台湾外交を構築するにあたり、安倍政権の成功体験と垂氏独自の深い知見(特に中国の戦略的思考と台湾問題に関する分析)を踏まえた戦略的検討を以下に示す。
1. 基本原則:戦略的リアリズムと台湾海峡の安定最優先
高市政権の対中外交は、垂氏が強調する「感情を排した客観的分析」を起点とする戦略的リアリズムを基本とする。安倍政権が確立した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を継承しつつ、台湾海峡の安定維持を日本の安全保障の最優先課題と位置づける。
継承: 安倍政権の「戦略的互恵関係」の理念を維持し、対話と連携の可能性を否定しない。
深化: 習近平体制下における「国家安全」の論理を核心と捉え、台湾に対する「平和的統一」の罠への対抗を戦略の軸とする。
2. 対台湾戦略:平和的統一への対抗と「曖昧さの維持」支援
垂氏の指摘する、武力侵攻よりも現実的で巧妙な脅威である「平和的統一」戦略に対し、戦わずして中国側の戦略を無力化することを目標とする。
方針1:台湾の「石垣抜き」戦略への阻止
中国が台湾社会を内部から分断し、自壊させる「石垣を抜く」戦略(経済的浸透、偽情報工作、外交孤立)を最重要脅威と見なす。
台湾のレジリアンス(強靭性)強化支援: 軍事面での抑止力強化だけでなく、偽情報対策、サイバーセキュリティ、重要インフラの防護といった非軍事領域における台湾の防御能力向上を重点的に支援する。
経済的浸透への防波堤: 日本国内の対中経済政策(デリスキング)と連携し、台湾企業の対中経済依存度低減を促すよう、日本市場や第三国市場への進出を支援する。
方針2:戦略的コミュニケーションと「曖昧さ」の維持
垂氏が指摘する、現台湾指導部の強硬な姿勢が内部亀裂や中国の口実を与える可能性を念頭に、「台湾海峡の現状維持」という共通の国益に向けた戦略的配慮を行う。
台湾指導部への水面下の対話: ライ清徳政権に対し、「台湾有事=日本有事」として日本もコミットする姿勢を示しつつも、「独立」に向けた逸脱は日米の関与を複雑化させることを明確に伝達し、現状維持の重要性を共有する。
国際社会への明確な発信: 日本は「両岸の平和的対話」という従来の表現に加え、「力や威圧による一方的な現状変更の試みには断固として反対する」というメッセージを国際規範に基づき発信し、中国の「平和的統一」という名の下の既成事実化を阻止する。
3. 対中戦略:抑止力の最大化と経済の弱体化への対処
垂氏の分析(中国経済の脆弱性、体制の不安定化は指導者の死が主な要因)に基づき、「中国の行動を変えさせる」ための長期的な戦略を策定する。
方針1:日米同盟の抑止力強化と台湾有事への具体化
抑止力の統合: 日米同盟の抑止力を台湾海峡の安定に資する形で最大化する。日本の自衛隊の役割を明確化し、米軍との連携を具体化するための共同訓練を強化・公開することで、中国に対して「台湾への行動は直接的な日米との衝突リスクを伴う」というシグナルを送る。
「戦わずして勝つ」ための準備: 台湾海峡での有事に備え、非戦闘員退避活動(NEO)や難民対応の計画を具体的に策定・公表することで、危機管理能力の高さを示す。
方針2:経済外交を通じた体制へのプレッシャー
経済の客観視: 中国の発表する経済統計(5%成長など)を信用せず、不動産バブル処理の遅延など、中国経済の根本的な問題を正確に把握する。
限定的な「対話」窓口の維持: 貿易や投資の分野でデリスキングを加速させつつも、中国経済が崩壊しないよう一定の配慮も示しながら、限定的かつ実務的な対話の窓口(首脳会談を含む)を維持する。これにより、中国指導部に対する「日本は中国の体制崩壊を望んでいないが、その行動は厳しく監視している」というメッセージを送り、外交的な柔軟性を確保する。
