《不定期連載》負けられない者達13 プロ野球チームコメッツの闘い2014
定着まで
五月の終わりからベイカムリーグはインターリーグが始まった。同一リーグではないリーグの球団との試合が行われる。
それに合わせて、先発ローテーションも編成されていた。打撃の上手い九条はDHのない試合で登板することが比較的多かった。
八打席立って六打数四安打。うち本塁打は一本。四球は二つあった。
ビジターゲームで勝率五割をキープするなか、ホームでは二軍で再調整を行っていた大海が戻ってきていた。それと一緒に一軍に上がってきた投手がいた。リリーフの中山である。
昨年は勝ちパターンの一角として、後半の試合を登板していた。今年は股関節の違和感により、二軍スタートとなり調整が遅れていた。
身体が前に突っ込む癖が治っているようだ。でも、何処かモーションにぎこちなさが残っている。
投手が外野で調整している中、私は他の野手と一緒に打撃練習の順番を待っていた。
土佐が打席に立っている。次を待つ銀子がバットを支えにしながら立っていた。
「万斉」
「はい」
私は彼がチヤホヤされている反面、チームの輪から外れていく気がしていた。そうならないよう、繋ぎとめるために話かけることを続けていた。
それは大丈夫か。私は話す言葉がないのに声をかけてしまった。
「なんで打撃の基本はセンター返しっていうか知っているか?」
「センターに打てるようになれば、自然とライトレフトに打ち分けるコツが掴めるようになるからですか」
「そうともいうね」
「違うのですか?」
「いや、そういうわけじゃない。諸説あるという言い方だと語弊があるけど、俺はこう訊いた。センターは四〇〇フィートだろう。両翼に規定がない中でセンターが四〇〇フィートというのは決まっているんだよ。だから、どんな球場でもセンターに四〇〇フィート飛ばせればホームランになる」
「なるほど」
そういって銀子はセンターを見上げた。常に誰も入らないゾーンで閑散としているのはいつものことだ。
その下では、大海が他の先発と共に平均台を使ったトレーニングを行っていた。
銀子と共に気になる選手がいる。同期の倉田である。
倉田は中々調子が上がらない。一軍復帰後にスタメンを得るも、なかなか出塁することが出来ない。焦ってボール球に手を出してアウトになる。低調な選手ほど、四球よりも安打を優先してボール球を見極められない。二軍に落ちたリプコもそうだった。
例年ならば、土佐と併用の可能性も出てくる。けれど、今年の土佐は例年になく好調だ。二割前半になる打率を二割六分でキープしている。守備での失策はまだない。これはリーグ外野手で唯一であった。
もしかしたら食い込めないかもしれない。そうなれば、二軍で入れ替える対象となってしまう。そんな焦りが倉田の脳裏を駆け巡っている。
中 土佐
二 中沢
左 銀子
三 シスラー
指 キャメロン
一 堀原
右 神戸
遊 鮫山
捕 下栗
投 大海
大海は今シーズン初めて下栗とバッテリーを組んだ。これまではベテラン捕手の林と組むことが多かった。代えた理由は下栗の捕手としての能力が上がったことだろうか。
一回の表、先頭打者に四球を許すもその後を三者凡退に抑えた。
四回までにホームランを許すも一失点でなんとか切り抜けていた。下栗は大海の状態を見抜いている。球が浮くような展開も見られたが、深刻なダメージを与えるような状況にならないように制御する。
飛んできた飛球は三回。下栗は何とか後ろに頼らせるようにして投げさせていた。
大海は六回と三分の一を投げ一失点。四死球は三、被安打は六という結果であった。
大海を援護したい打線は六回の裏、先頭のキャメロンがライトへ一発を放った。これで一対一。続く堀原は四球を選び、私に打席が回ってきた。
「七番ライト、神戸ーー」
ここ数日、安打は生まれていない。まだ本塁打数も二桁に乗っていない。「そろそろ限界ではないか」という声も聞こえるが私はそれに耳を貸すことはなかった。
寄る年波。そう言えば簡単なことだ。
一アウトのため、バントのサインはない。堀原を走らせる無茶なことはしないだろう。あるとすればヒットエンドランか。
アウトコース真ん中に投じられたボールを私は叩いた。打球はグラウンドを転がって一二塁間を転がっていく。相手二塁手は取れないだろう。守備力を考えればそうなる。私は一塁を駆け抜けようとしていた。
そんな微妙なところで相手二塁手は追いついた。反転した体勢から二塁への送球を諦め、一塁に転送する。バッターランナーの私はアウトとなった。
二アウト二塁。打席は鮫山である。
鮫山は三球目を打った。センター前に突き刺さるような角度の低いライナーを放った。堀原がホームに返ってくる。二対一。これで勝ち越し。大海に勝利を付けることが出来た。
その後、リリーフで中山、水島、サーチスという継投で無失点。打線は八回に二点をもぎ取って勝利した。
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