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《不定期連載》負けられない者達12 プロ野球チームコメッツの闘い2014

変革

 倉田が一軍へ戻って来た。当初は四月後半に合流できる見込みであったが、合流は五月後半までずれ込んだ。

 それはいいことなのか。悪いことなのか。

 各選手の状態はぼちぼちであろう。昨日はシスラーが開幕から初めてスタメンを外れた。打率は三割二分をマーク。チームトップである。ここ五日間、無出塁だったこともあって外れたのだろう。リフレッシュして戻らせるのか。

 これまでの安形はそういったことをあまりしなかった。選手は試合に出てなんぼという方針だったからだ。

 その象徴が神戸であろう。FAで入団してから一度も試合を休んだことはなかった。スタメンを外れても代打か代走、守備固めと途中出場していた。

 キャメロンが一度スタメンを外れたことで調子を取り戻したからであろうか。だからもう一度使ってみる。それでは馬鹿の一つ覚えのようだ。監督歴六年の安形はそこまで稚拙なことをするか。

 チームの変革を常に促してきたコメッツ。変革の中心と呼べる存在が倉田と銀子であった。


 私こと元泉は、いつの間にか社内におけるコメッツ担当記者として中心的な存在であった。プロ野球の部門では記者の末端に等しかった私がコメッツの担当で這い上がれたのは成宮のおかげであろう。

 成宮のおかげでコメッツ選手や監督の安形まで一定の信頼を得ることが出来た。

 今回の狙いは倉田であった。彼の復帰によって、リプコは一軍の枠から漏れた。七打席目で初安打が生まれるも打席での凡退が多かった。低迷したキャメロンの椅子を得たが、好機を上手く活用できない。

「キャメロンがDH、倉田がレフトかな」

 センターから土佐を外すことはないか。昨日は堀原がサードに入った。今日はシスラーが戻ってくる。そうなれば、自ずと空くポジションは限られた。

 外れるのは中沢か堀原。どちらもセカンドを守る。ファーストに銀子がいる状態を考えれば、カバーできるのは中沢であった。

「堀原、外れるかね」

 他社の記者が私に声を掛けてきた。コメッツ取材歴は私の倍である。肩幅が広く、背も高い初老の男性はVNTーーベイカムネットワークテレビジョンというベイカム地方の放送局の記者だ。

「外れるかもしれませんね」

 含みのあることは言えない。

「セカンドは取れないよね」

「どうでしょうね」

 はっきりとした答えを求めてきた。私は答えるつもりはない。

「中沢がセカンド。でも練習で姿を見せないのがね」

 この記者は中沢が嫌いなのか。そんな発言を度々していた。

「センターラインをずらさないスタイルというけど、鮫山以外みんな変わっているからな」

 素人目の会話に何処か付き合っていられなかった。私はフィールドでの取材を打ち切った。

 コンコースを歩く倉田が正面から下を向いて歩いて来た。口元が動いている。何か考え事をしているようなので、声を掛けずに端によると倉田が私に気が付いた。

「元泉さん」

「お久しぶりです」

「お久しぶりです。チームは上がってきてますね」

「そうですね」

「今日からタイタンズとの三連戦ですよね。先発予想ってしています?」

「それなりには」

 そういっても、アバントリーグは予告先発制を導入している。前日には先発投手が誰だかわかる上、一週間前の先発を見れば、投手の予想などしなくてもおおよそ検討が付く。

 けれど、一週間前のタイタンズは四試合しかなかった。火曜日はセントラルフィールドでペンギンズ、水曜日が休みとなって木曜日に本拠地でペンギンズと対戦。金曜日がまた休みとなり、土日はロッカという山間部の小さな町でネプチューンズ主催試合の二連戦が行われた。

 しれっと明神監督も先発を一部抹消していた。初戦に櫛田が登板することは昨日判明している。明日と日曜日の先発がわかっていない。

「俺は千住せんじゅが土曜日だと思います」

「私は日曜日だと思ってます」

 千住せんじゅ泰佑たいすけーー二〇一三年ドラフト三位でアマルティア大学からタイタンズに入団。右投左打。身長一八〇センチ、体重八十キロ。長身のオーバースローからしなるように投げ込まれる速球とスライダー、カットボールが持ち味。大学通算は三十勝六敗。三年生からタイトル争いに加われる程の本格派。

「平ほどじゃないですけど、今一番勢いのある投手ですね。コメッツの順位を考えて意図的にぶつけていますよ」

「日曜日は誰だと考えていますか?」

 私は倉田に訊ねた。

「法本さんじゃないですか」

 今シーズンはまだ登板のない投手だ。一軍には上がってきているが、登録はされない。先発かと思われているが、ゲーム差を広げたい展開で登板させるか。

「二軍では見ましたよ。調整は四月の段階で終わっているんですよ。今年で引退する可能性も示唆されているとおり、終わりかもしれません」

 その可能性はあるか。倉田の先発予想は当たっていた。コメッツは平、高島、九条で向かっていったが、本拠地で三連敗という結果で終わってしまった。


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