《不定期連載》負けられない者達16 プロ野球チームコメッツの闘い2014
ランク
七月上旬、選手会、オーナー側、機構の三者で協議が行われた。
オーナー側が提示した草案について協議された。選手会側でも意見は噴出した。それを取りまとめた結果、下部リーグ創設は賛同した。一方、評価という仮称の選手にランクをつける案は現行では反対だった。
評価という仮称であるが、実際は球団側に対してのものであるとオーナーは主張している。選手をランク分けすることで戦力均衡化の指標を作りたいと考えていた。
機構側はこちらに任せて欲しいと口にする。本来であれば機構が主導するものである。オーナー側では球団の有利になる制度に変化する可能性が高いからである。選手会は機構の意見に賛同した。
早くても来年オフには導入したい。それは下部リーグ創設より前の整備を目標としていたからである。
この三者協議を取材していた後輩記者の飛鳥智也はヤービーにあるD.O.スポーツの支部で私こと元泉に話してくれた。
「協議は良い方向に進んでいましたよ。思った程の対立は生まれなかったですね」
一方、選手会が気にしている点は改善されていないようだ。
「選手会としては、選手の移籍活発化をもっと推進してほしいようですよ。前回の球団拡張は、それを求めて行われました。複数の案が出されるも結果的にフリーエージェントの自動化に留まった。自動化してもフリーエージェントとなった選手は他球団から手を挙げてもらえず、今所属する球団に残留するケースもよくあります。それを少しでもなくすべく選手会は動いていますが、球団としては欲しい選手は移籍出来る選手のみ。それは全体の三割程度ですから。球団はどちらかと言えば年俸を抑制したい。対立は変わりませんよ」
「確かにな」
コメッツもそういった選手は山ほどいる。新たに加入した山本もオファーはネプチューンズとコメッツくらいだったと訊く。
「選手は飼い殺しを気にしているのですよ。コメッツでいえば福山選手がその一人とも言えますよ。プロ入りから十年。毎年一軍と二軍を行き来する。通算が八年にならないように調整することでフリーエージェントを取得しにくくなっている」
飛鳥は徐々に口調に苛立ちが見えた。飼い殺しという言葉には過剰に反応する。それは彼の過去に影響するからだ。
「下部リーグは飼い殺しの宝庫になる……か」
私は彼の言いたいことを先走った。飛鳥は静かに頷いた。
飛鳥はかつて大学から大学院へ進学を考えていたという。就職活動とそれなりに行っていたが、大学院への進学を一番に考えていたため、内定を貰っても蹴ることが前提だったという。
飛鳥に対し大学院へ進学するよう勧めたのは、当時の大学の准教授であったという。進学先の大学院は准教授の出身母校であり、その当時も母校とは親交があったらしい。
大学院進学はほぼ決定的。そう思わすような口ぶりでずっと指導を受けていた。飛鳥自身も試験を受ければ合格できる可能性は十分あると思い、疑わなかった。
だが、試験は不合格であった。専門分野の試験レベルは遥かに上のものであったという。飛鳥を指導していた准教授の指導だけでは到底追いつかないレベルであった。
飛鳥は無職で卒業することとなる。飛鳥が無職で卒業することをどうにか回避したい准教授は、彼に研究生という道を勧めた。准教授からすれば、無職で卒業する学生を輩出すれば、自身の評価が下がるからである。それは保身でもあった。
受けた大学院の学部からは断られた。そのため、准教授は同じ大学にある似たような学科を勧めた。
飛鳥は受けたくなかった。名称に国際と付く大学の学部や学科は、学校近隣にある住民に対して、「国際的なことを研究して社会に貢献しています」というリップサービスに過ぎないからである。
いやいや受けて研究生になれた。しかし、それが飼い殺しの始まりであったと飛鳥は語る。
自身の研究が行いたくても、指導できる立場の人間がいないこと。指導者側も入学金目的であるため、飛鳥の研究する内容についての知識は全く持ち合わせていないこと。月一回の他人の報告を訊く為に座席に座ることだけが、研究生というポジションに与えられるものだった。
実際、研究生になっても指導者側は本来必要である話し合いに参加させない。深夜に重要なメールを送って、返信を数時間後の早朝に求める。一か月間の放置。罵倒を繰り返され、鬼電するが折り返しは受け取らないということがあったらしい。
手をかけている学生は全て留学生で、本国からあぶれたようなレベルの学生であった。やる気のない顔つきは遊学目的であることを彷彿とさせた。遊ぶ時間欲しさの時間稼ぎで研究という研究はしていない。海を渡って来た学生には飛鳥が持つような渇望が無かった。
自身が院生になる可能性も低いまま、ここに居ても意味はない。「あの時間は人生で一番無駄だった」と飛鳥は語る。
「下部リーグってどうなるんですかね」
「選手も不安がっているよ。エイエムバンクが表明してからオリオンディアスやプレスも声明を出した。社会人野球にも不安を煽る結果を作っている。球界は早いうちに不安を解消させなければいけないよ」
先行きの見えない計画の中、コメッツでは成宮が一軍に戻ってくると良いニュースが流れた。
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