【多言語天才】(7) 言葉を認識する敏感さ。ゴリン図形テストとは
続きです。17言語話者であるクリストファは,「他者の心を推測する能力」を測定するサリーとアン課題が苦手だが,自閉スペクトラム症の基準には当てはまらない,という話でした。
検査の話の最後として,今回と次回で,「言葉を認識する敏感さ」を測定するゴリン図形テストという面白い検査を紹介します。
多言語天才たるクリストファは,やはり「言葉を認識する敏感さ」が他の人とは異なるのか,というのが焦点になります。
ゴリン図形テストとは
ゴリン図形テスト (Gollin figures test) は,
◎視覚的情報を基に,物体を認識する能力を測定するテスト
◎受験者に対して,徐々に情報量が高まっていく一連のスケッチ(図形)が示される
◎受験者は,それぞれの段階で,それが何の物体なのかを推測し答える
◎受験者がどれだけ情報量が少ない時点で正答できるかという観点で,物体の認識能力を測定する
◎認知症や脳損傷の診断補助に使用されることがある
というものです。
「徐々に情報量が高まっていく一連のスケッチ(図形)」という部分がわかりにくいと思います。
以下は,4段階のスケッチを猪原がパワーポイントで適当に作ったものです。『ある言語天才の頭脳』[1] の図1.2~図1.4(pp.10-12)にもっと良い例があるのですが,図を張り付けるのが気が引けたので,チャチャっと自作しました。例の中身も変えてあります。
図1 情報量最小
まずは情報量が一番少ないバージョン。

何がいくつ描かれてあるか,分からないと思います。
# 何が描かれているか知っている私から見れば,実は見えたりするのですが……。
図2 情報量少し多い
次はもうちょっと情報量が多いバージョン。

私の作りが甘いせいで,図形のほうはもうだいたい分かりますね。
何やら図形が1つと,単語らしきものが2つ書かれているのがわかると思います。
図3 情報量けっこう多い
次は情報量がけっこう多いバージョン。

図形はもうほぼ分かりますね。
図4 完全なスケッチ
最後は完全バージョンです。

このように,一番上に「ハサミ」と,真ん中に英単語の「flower」,そして一番下にはギリシャ語で「星(αστέρι)」です。
# 実のところ,ギリシャ語話者たらぬ猪原にしてみれば,「αστέρι」が本当に「星」なのかどうか私には定かではないのですが……。
# 発音は「アステリ」らしいです。格好いい。
テストの見どころ
図1から図4にかけて,情報量が多くなっていくわけですが,どれだけ情報量が少ない時点で描かれているものに気づけるか,という観点で,まずは個人差を測定します。
例えば,図2で「ハサミ」に気づけた人は,図3で気づいた人よりも,図形認識が得意だ,と判断されるわけですね。
今回特に重要な見どころは,個人内でも図形と英語とギリシャ語で,認識の敏感さに差があるのではないか,という部分です。
多言語天才たるクリストファは,図形よりも英語の認識が得意,という結果になるでしょうか。
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続きます。
引用文献
Neil, S., & Ianthi-Maria, T.(著)毛塚恵美子, 小菅京子, & 若林茂則(訳) (1990). ある言語天才の頭脳: 言語学習と心のモジュール性. 新曜社.
