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【多言語天才】(5) 検査結果に見ることのできる優れた多言語学習能力

続きです。クリストファは言語性IQは正常値であるのに対して,動作性IQがすべて異常値を示しており,すさまじい知能のプロフィールの偏りだなぁ,という話でした。


低い非言語性知能

その他にも,多様な知能検査で「低い非言語性知能」というプロフィールは確かめられています。

レーブンのマトリクス検査」は,見せられた図形とその配置から示唆される「パターン」を理解できるかを問う検査です。非言語性検査としてとても良く用いられます。

以下のサイトに,問題例があります。45歳以上,となっていますが,下記の文献のとおり,児童にも適用できます。

クリストファが2回この検査を受けた際の得点は75点と76点だったそうです(平均は100点)。

グッドイナフ人物画知能検査」は人物画を描かせるテストです。これも14歳の時とその数年後で2回受けていますが,点数は40点と63点でした(平均は100点)。それよりも描かれた絵が掲載(図1.1,p.6)されているのですが,確かにかなり未熟なもので,まるで幼稚園児のような絵でした。

これら2つの検査はいずれも「非言語性」検査であり,クリストファの非言語性知能の低さを裏づけています。

優れた多言語学習能力は,実際に語彙テストスコアに現れている

子ども用の語彙テスト検査としてよく使われる「ピーボディ絵画語彙テスト(Peabody Picture Vocabulary Test, PPVT)」というものがあります。検査者がある言葉を発音し,それが意味するものを4つの絵の中から選ぶ,というものです。

多くは幼児~小学校低学年児童を対象に,その母語の語彙力を測定するために使用されます。

今回面白いのは,母語である英語以外にもドイツ語,フランス語,スペイン語の多言語版絵画語彙テストを作成し,クリストファに実施したことでした。スコアは上述のIQと同じく,平均が100点,標準偏差が15点です。

するとその成績は,

◎ 英語 121点
◎ ドイツ語 114点
◎ フランス語 110点
◎ スペイン語 89点

『ある言語天才の頭脳』[1] p.9

となりました。母語の英語はもちろん,ドイツ語やフランス語でも平均を上回り,スペイン語でも正常範囲でした(85点以上なら,まったくの正常範囲)。

# このテストを入れたのはとても上手いなぁと思いました。
# 非常に興味深いテストになっていると思います。

【多言語天才】(1)の記事の再掲ですが,クリストファが使用できる言語は,

流暢に使いこなせるものから,ほんの初歩しか知らないものまで,その程度は様々だが,彼が知っている言語は,デンマーク語,オランダ語,フィンランド語,フランス語,ドイツ語,現代ギリシャ語,ヒンズー語,イタリア語,ノルウェー語,ポーランド語,ポルトガル語,ロシア語,スペイン語,スウェーデン語,トルコ語,ウェールズ語に至る。

『ある言語天才の頭脳』[1] p.13

に英語を加えた17言語で,これらすべて正常範囲以上の得点を取れるとは限りません。しかし,『ある言語天才の頭脳』[1]を読んでいると,随所に現代ギリシャ語が得意,という記述が見られたり,他の言語の翻訳の様子なども記されていますので,おそらくは上記の4言語以外にも正常範囲以上の外国語はあると考えるべきでしょう。

逸話に加えて,信頼できる検査のスコアでもクリストファの特殊性が裏付けられています。

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続きます。

引用文献

  1. Neil, S., & Ianthi-Maria, T.(著)毛塚恵美子, 小菅京子, & 若林茂則(訳) (1990). ある言語天才の頭脳: 言語学習と心のモジュール性. 新曜社.

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