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「中田花奈は、弱い」からおよそ1年。その答え合わせをしよう。

「どん底」からのスタート

昨年の9月。
筆者は、こんな記事を執筆した。

その中で、以下のような文章を最後に記したのを記憶している。

「中田花奈にとっての、まさに「正念場」ともいえるシーズンが幕を開ける。
彼女がどうやって試練を乗り越えるのか、ゆっくりと見守りたいと思う。」(該当記事より引用)

2024-25シーズンのMリーグ、中田が所属するBEAST Xは、序盤から浮上のきっかけを掴めず、チーム成績は-1143.6ポイントで9チーム中最下位。

個人成績を見ても、鈴木大介が辛うじて終盤に巻き返し+30.0ポイントに留めたのがやっとで、猿川真寿、菅原千瑛、そして中田を含めた3選手がそれぞれ大きなマイナスを記録。
中田に関しては、Mリーグ全36選手中36位の成績であった。

昨シーズンの中田を観ていて個人的に最も特徴的だったのは、「表情の変化」。

試合開始時の入場の際は凛々しくスッとした表情で入って来るのに、いざ対局が開始されて東4局くらいになると「どよんとした顔」になっていた印象があった。

自信の無さと、打牌に対しての「迷い」のようなものが、素人目にも分かるレベルで出てしまっていたように思う。

レギュレーションに抵触したことで、当時のBEAST Xはキャプテンであった猿川と菅原の2名を失うことになる。

個人成績最下位の中田ではなく、猿川と菅原を自由契約としたことで、当時多くの賛否の声が上がったことは記憶に新しい。

ともあれ、麻雀プロとして引き続きMリーグの場に残る中田の、巻き返しを狙う厳しい戦いが始まったのであった。

巡ってきた「縁」

イチローと仰木彬。
古田敦也と野村克也。
吉田沙保里と栄和人。
北島康介と平井伯昌。

一流選手には、それぞれ彼らを一流へと導いた「師匠」が存在する、という事例は往々にしてよくあることだ。

今季の中田にとって、無くてはならなかったであろう出会いが、筆者が「あの記事」を出すよりも前に、実はもう決まっていた。

2025年6月30日。
BEAST Xは、ドラフト会議にてオーディションを勝ち抜いた日本プロ麻雀協会所属の下石戟と、かつてセガサミーフェニックスに在籍した日本プロ麻雀連盟所属の東城りおの2名を指名。

過去のMリーグでの経験が豊富であることから東城をキャプテンとしたBEAST Xは、チーム創立から数えて3度目のシーズンへと突入していった。

師匠・下石との出会いと、どん底からの快進撃

文字通りどん底からのスタートとなった中田に訪れたのは、「師匠」との出会いだった。
新たに加入した下石が、初めの段階で中田の師匠役を買って出たのだ。


今季の中田の大躍進を支え、自身もMVPに輝いた下石

下石は下石なりに、チームを俯瞰して見た時、「中田花奈の底上げ」が急務だと感じたのであろう。

但し、当然ながら本人も選手であることから、完全な師匠と弟子の関係というよりは、時に仲間として、時に師弟として、時にライバルとして…と、競いながら中田の背中を押し続けるようなイメージがあったのではないかと推察する。

今季の開幕時、下石は「自分と中田の2人合わせて15勝できれば」という目標を立てた。
昨シーズンの中田は、トップ獲得回数わずか3回。

ところが、蓋を空けてみれば下石14勝に中田が9勝と、当初の目標よりも8勝を上積みする結果となった。

無論、下石個人がMVPを獲得したことも大きな要因であることには違いないが、驚くべきは中田の9勝の方である。

チームとして、今季のBEAST Xが終始ランク上位の良い雰囲気の中で過ごせたから、といってしまえばそれまでだが、明らかにチームの空気が変わっていたのは確かだ。

終わってみればレギュラーシーズンBEAST Xの選手は東城、下石、中田の3選手がプラスとなり、大介はレギュラーこそマイナスに甘んじたもののセミファイナル以降は立て直し、苦しむ下石、東城らをカバーするに十分な活躍を見せた。

さらに、中田個人に焦点を当てると、レギュラーシーズン・セミファイナル・ファイナルと、3つのステージ全てで個人成績がプラスを記録するというおまけ付きである。

仮に、「運」や「ラッキー」だけでたまたま中田がプラスだった、というのと、師匠の下石としっかり稽古を重ねてプラスだった、というのでは意味合いがまるで異なる。

今季の中田は、師匠の下石と基礎の基礎からみっちりと鍛え直し、弛まぬ地道な努力を紡いでいった末に大活躍したのではないだろうか。

麻雀プロとしての看板を背負い、経験が少ないとはいえ「Mリーガー」として戦い続けなければならないその宿命から逃げず、真っ正面から向き合い続けたその直向きな姿勢が、今季の中田花奈の姿そのものだったように思う。

顔の見えない心無き声を受け続け、それでもなお戦い続ける心の負担は、筆者には想像もつかないほど厳しいものだろうと考える。

今シーズン、よく目にした文言として「中田花奈が覚醒」というものがあったが、あれは決して突然の覚醒などではなく、どん底から我武者羅に這い上がった中田の、必死に努力を続けた賜物なのではないだろうか。

今季の成績が中田の自信となり、来季以降の彼女自身の大きな武器となることは間違いないだろう。
それに、今の中田は一人ではない。
ともに苦しい時を過ごした鈴木大介、キャプテンとしてムードメーカーとしてチームを支える東城りお、そして何よりも、中田をこれからも支え続けていくであろう、師匠の下石戟が付いている。


大活躍の、その向こうへ

今季Mリーグの最終戦、解説を務めた土田浩翔氏は、シーズンを総括して「波乱のシーズンだった」と表現した。

例年、個人成績では安定した戦いぶりを見せていた仲林圭や勝又健志、瑞原明奈や鈴木たろうの絶不調。
加えて、毎シーズン比較的セミファイナル進出までのフェーズではスムーズに戦いを進めていたU-NEXTパイレーツ、渋谷ABEMAS、KADOKAWAサクラナイツのシーズン敗退。

開幕前の下馬評ではほぼ上位に予想されるような強豪たちが沈みに沈んでいった。
そんな様相を土田は「波乱」だと評したのだ。

言い換えれば、Mリーグに於いて「絶対に安定しているもの」など無いのだろうと思う。

今季のBEAST Xは、開幕後の早い段階から上昇気流に乗り、全般にわたって安定した順位で戦いを続けることができた。
来季以降、ともするとどこかでチームが下位へと沈み、上を見て戦いを強いられるようなケースになることだって、可能性として十分に起こり得ることである。

麻雀プロとして、Mリーガーとして、継続して戦いに身を投じ続けなければならない、試練の時はまだまだ続いてゆく。

来季以降の中田がどんな戦いを見せてくれるのか、そしてどういった姿を見せてくれるのか。
いちMリーグの視聴者として、変わらず観続けていきたいと思う。


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