『絵本・白峰アカネの冒険/23.「『原存在』の湖」
人間の右脳・左脳と封印の関りについての「顔」の考えを聞いたアカネは、「外なる世界と一体になって充足していた自分が、なぜ、世界から切り離された状態に戻らなければならなかったのか?」という疑問を抱く。
前回はこちら:
アカネ: 私たちが周りの自然や人間とつながったままでいられたら、私たちは、今のあなたのように満ち足りた状態でいられるんですよね。
「顔」:それは、そういうことになるのだろうと思う。
アカネ:周りの自然とつながっていたら、私たちは白峰山の厳しい環境と取っ組み合って暮す必要はなくなります。魔獣とも闘わなくて済みます。他の人間とつながっていたら、土地と食べ物を人間同士奪い合う必要もありません。

「顔」:……
アカネ:それなのに、なぜ、山は山、人は人、魔獣は魔獣、鳥は鳥で獣は獣……なんて、それぞれバラバラの違う形で現れて、互いに苦しめ合わなきゃいけないんですか? どうして、そんな面倒くさいことになってるんですか?

「顔」: そう言って責められても、困る。私だって、自分が満ち足りた気持ちになれると分かっていて、この状態を選んだわけじゃない。どういう事情だったかは分からないが、封印されたらこうなったんだ。
アカネ:そうでした。でも、なにか、思いつくことはないんですか? 「どうしてこうなったのか分からないけど、こうしている」って、気持ち悪くないですか? 疲れないですか?
「顔」:それは、気持ち悪い。だから、なんとか気持ちをスッキリさせたくて、私なりに原因を考えてみた。
アカネ:どんなことを考えたのですか?
「顔」:私たちがお互いにつながり合って一つになれるのは、私たちが同一の「ある存在」から産み出されたからだと考えている。
アカネ:私も、そうだろうと思います。
「顔」:その存在を仮に「原存在」と名づけよう。存在するすべてのものの原点という意味だ。私が思うに、この「原存在」は、大量の水とガスを含んだ湖のようなものだ。
アカネ:湖...…ですか?
「顔」:そう、湖だ。この湖の底の岩盤にはある種のガスが大量に含有されていて、湖の底の裂け目を通って湖水中に湧き出している。ガスは大量の気泡となって立ち昇り、その多くは水面で破裂して湖水に溶け込むが、中には湖面から離れて空中を浮遊するものもある。

アカネ:私たちのような個別の存在は、湖の気泡というわけですか?
「顔」:そういうことになるね。
アカネは「『原存在』の湖」を頭の中で描いてみた。そこがエネルギーの充満する場であることはイメージできる。しかし、たとえ巨大なエネルギーの産物とはいえ、自分が泡だというのは、なんとも心もとない。馬鹿にされたような気もする。
アカネは「顔」に向かって「もうちょっとマシなことを考えられないのですか?」と言いたかったが、止めた。もっと目の前の差し迫った問題があることを思い出したのだ。
封印から脱したことをリンたちに知られずに、リンたちが何を企んでいるのか突き止めなければならない。それが、アカネの目下の最大の課題だった。
〈つづく〉
