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やさしい世界のために、今日も私はレジを打つ。

この手の映画は本当によくない。子ども向けと見せかけて、まんまと大人がドはまりしてしまうのだから。
先日、録画してあった『ズートピア』を観た。
舞台は肉食動物と草食動物、あらゆる動物が共生する街「ズートピア」。
うさぎ初の警察官ジュディとキツネの詐欺師ニックが、すったもんだしながら大事件を解決するストーリーだ。
これが、なかなかに深い。といってしまうと浅く感じるが、背景にあるのテーマは明らかに差別や多様性だ。
ウサギだから、キツネだから、草食動物だから、肉食動物だから。
「ズートピア」には「ユートピア」にちなんだ街の名前とは反対に、様々な差別と偏見が渦巻いている。

5歳の息子さんも、私も大好きなシーンがある。
ナマケモノが登場するシーンだ。
彼は免許管理センターに勤めているニックの友人。ジュディとニックは、事件の手がかりとなる車のナンバーから情報を手に入れるために訪れた。
ニック曰く「このセンターで一番仕事が早い」らしいが、周りも全員ナマケモノ。
挙動はひどく丁寧で、独自のテンポを持っている。つまり、遅い。
ジュディは急いで調査に向かいたい。ナマケモノを急かすものの、その願いはかなわず、調べ終わるころには、日はとっくに暮れてしまった。
このやりとりがひどくコミカルで、可愛らしくて、何度見ても笑ってしまう。


話は変わるが、私は副業でスーパーのレジ打ちをしている。
ずいぶん前からレジはセルフと有人だ。2,3品の買い物ならセルフレジの方が早く済むので推奨している。
しかし、私が勤める朝の時間帯は高齢の利用者が多い。少量の品でも有人レジにいらっしゃる。
なかには、お会計の際にものすごく時間がかかるお客様もいる。ポイントカードを通すのにも間違っていないか慎重に、時間をかける方もいる。
この待っている時間。私は結構苦しい。
というのも、私自身はいちいち早くして!なんて思わないが、後ろに並ぶお客様はそうはいかない。
不機嫌そうに眉が歪む。視線が痛い。こういうものにさらされると私もつい、急いでほしいなあ、なんて思ってしまう。
そうなると、レジでお時間がかかるお客様は、私からも見えない圧力を感じてしまうのだろうか。
それは、なんだか嫌で、苦しいな、なんて思う。


ところで、先週(2025年12月15日号)のAERAで、ライターの武田砂鉄さんが「デジタル化」と「やさしさ」について論じていた。

(前略)今、「便利になる」という考え方が、いつの間にか「それを使わないと不便になる」に変化し、その「便利」から置いていかれる状態が放置されるようになった。
(中略)
 やさしい社会を作るには、誰一人取りこぼさない社会が必要。その上で、その社会はどういう社会をかを考え続けること。この視点が足りていない。

武田砂鉄『武田砂鉄今週のわだかまり』
(『AERA』2025年12月15日号)より抜粋

時間がかかることは悪。
便利になることを強要され、出来なければ厳しい視線を浴びる。
今の社会はどちらかというと、こんな社会だ。
ジュディはナマケモノを急かしたが、けっして怒りはしなかった。それは相手の存在を肯定する生き方だと思う。
誰一人取りこぼさない世界のために、今日も私はレジを打つ。


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