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焚き火

祖母は焚き火が好きで、それが生き甲斐だった。

焚き火を禁じる条例ができて、ある日警察が来て、もう焚かないようにと言われ、それきり、庭で火を焚くことはなくなった。
私は仕方がないと自分に言い聞かせたが、やはり残念だった。

ど田舎の庭は広い。
体育館が二つ入るくらいある。
その隅から隅まで、祖母は葉をかき集めた。
名前も知らない紅葉樹の丸い葉。杉の葉。杉はよく燃えた。

両親は共働きで、小学生の私はよく祖母に預けられた。
竹の枝で編んだ箒で、二人で葉を集める。
野菜のくずを混ぜ、新聞紙とチラシを丸めて入れて、マッチを擦る。

火がつくと、シィー、と静かに葉の軋む音がした。葉から隣の葉へ、火はゆっくり移っていく。葉の山が、少しずつ動く。

火は真っ直ぐには上がらない。
パチリと音がして、風が吹けばそちらへ傾く。チラシを通るとインクが燃えて、炎が緑や青に見えた。
野菜のくずにあたると一瞬沈んで、白い煙を吐く。
それからすぐ、乾いた葉を見つけてそちらへ伸びる。

祖母と並んで丸太に座り、火照った頬に手をあてて、火を見ていた。
普段はよく喋る二人が、この時間だけは無言になった。
辺りが暗くなると、じっと炎を見つめる祖母の顔が火の明かりでゆらめく。
私も同じように形を変え続ける火を、飽きもせず追った。

火は、一度も同じ形にならない。私はその動きが、たまらなく好きだった。


先日、みちよさんの妄想の話を読んだ。


ぽていとさんの言うとおり、凄まじい発想と広がり。
私なら間違いの一言で片付けてしまうものを、みちよさんは読み間違えた一語から、火のように燃え広がらせていた。まるで点火と燃焼のようだと書いて、あの庭を思い出した。


みちよさんは次に、その妄想を既知と未知で捉え直していた。

既知から未知へ。未知から既知へ。
あの火でなら、なんとなく分かる気がする。
私なりのイメージはこうだ。

マッチの火を、葉の山のどこか一点に置く。この素材なら、どんな色で、どちらへ燃え広がるか。その先の営みが、既知から未知へ。

炎の勢いと形、残った燃えかすから、どこが最初のマッチだったかを遡りながら、逆再生する営みが未知から既知へ。

合っているのかはわからない。
そう並べて、一旦分かった気にはなった。

でも、並べ終えて、手元に残ったのは、そのイメージ図のほうではなかった。

みちよさんの火は、みちよさんの形にしか燃えない。私は私の道を通って燃える。ぽていとさんは、ぽていとさんの形に。
火は、考える者の数だけ、違う燃え方をする。
同じ葉を集めても、同じ炎にはならない。
既知と未知の間を、火が通っていく。
残ったのはその動きそのものだった。

祖母の庭で、もう火は焚けない。
それでも、一度も同じ形にならないものを、私はまだ目で追っている。

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