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仏教という“巨大な図書館”の歩き方 「わしの知識なんて、大海のひとしずく」 一生かかっても読み切れない経典 








​座禅、写経、滝行…あなたの“仏教のイメージ”、もしかして、ほんの入口だけかも?

「仏教」と聞いて、あなたはどんなイメージを思い浮かべますか?


静かなお堂での「座禅」、心を落ち着けて文字をなぞる「写経」、あるいはテレビで見るような、滝に打たれたり火の上を歩いたりする厳しい「修行」。

多くの人が唱える「般若心経」も、その一つかもしれません。


​これらは、仏教に至るための、どれも尊い入り口です。


​しかし、もしそれらが、海のように広大な仏教の世界の、ほんの砂浜の砂の一部に過ぎないとしたら…?


もし、仏教の本当の神髄が、私たちの想像を絶するほど膨大な「お経(経典)」という、智慧の言葉の海にこそ眠っているとしたら…?


​人の一生をかけても学び尽くせない、と言われる仏教。


今回は、その「巨大な図書館」とも言うべき、お経の世界の扉を、ほんの少しだけ開いてみましょう。




「わしの知識なんて、大海のひとしずく」和尚さんが語る 仏教という“海の広さ”


​「和尚さん、いつもお経をあげているけど、お経って何種類くらいあるの?和尚さんは、ぜんぶ暗記してるの?」


本堂の掃除のお手伝いを終えたさとるくんが、和尚さんに尋ねました。

​その問いに、和尚さんは目を細めて深く頷きました。

「さとるくん、その気づきは、これまでのどの質問よりも、仏教の真髄に近づく、大きな一歩かもしれんな」


「えっ、まずいこと聞いちゃった?もしかして、あんまり覚えてないとか…」


さとるくんが、いたずらっぽく笑います。

​「いやいや、そういうことではないんじゃ」和尚さんは、海の方向を指さしながら言いました。


「わしが知っておるお経の数など、あの広大な海から、柄杓(ひしゃく)でひとすくいした水のようなものなんじゃよ」


「ええっ!海くらい広いの!?」


​「そうじゃ。お釈迦様が説かれた全ての教えを『一切経(いっさいきょう)』または『大蔵経(だいぞうきょう)』と呼ぶ。」


「お釈迦様は45年間、王様や貧しい人々、賢者や悩める者、一人ひとりに合わせて、まるで医者が病に応じて薬を変えるように、丁寧に教えを説かれた。その数は『八万四千の法門』とも言われ、その一つひとつが、お経として今に残っておるんじゃ」


​さとるくんは、あっけにとられています。

「そんなの、一生かかっても全部読むなんて無理だね…」


​「その通りじゃ。じゃからこそ」と和尚さんは続けます。


「多くの偉いお坊さん方は、この広大な智慧の海の中から、『これこそが宝の島への海図だ』と信じる、たった一つの、あるいはいくつかの大切なお経を選び抜き、それを生涯の拠り所とされたんじゃ。」


「日本の仏教に色々な宗派があるのはな、どの“宝の地図”を信じて、悟りという宝の島を目指すかの違い、とも言えるんじゃよ」




​三蔵法師の旅と“一切経” 宗派ごとの“推し経典”を見つける旅に出よう

和尚さんが語った、仏教という「巨大な図書館」。その全体像は「一切経(いっさいきょう)」と呼ばれます。


これは、お釈迦様の教えである「経」、生活のルールである「律」、そして教えの解説書である「論」の三つ(三蔵 さんぞう)からなる、仏教聖典の総集のことです。


お寺にある、回転式の書庫「輪蔵(りんぞう)」には、この一切経が収められていることがあります。



​命がけで“図書館”を求めた、三蔵法師の物語

​この膨大な「図書館」の全貌を求め、命がけの旅に出た人物がいます。『西遊記』のモデルとして有名な、玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)です。


7世紀の中国、彼は、断片的にしか伝わっていなかった仏教の原典を求め、一人、灼熱の砂漠と雪の山脈を越え、インドへと旅立ちました。


17年にも及ぶ旅の末、600部以上もの膨大な経典を持ち帰り、その後の生涯を翻訳に捧げたのです。


彼の情熱は、仏教の教え一言一句が、どれほど価値あるものかを、私たちに物語っています。



​あなたの“宝の地図”はどれ?宗派ごとの“推し経典”


​玄奘のような偉業は不可能でも、私たちは、先人たちが選び抜いてくれた「宝の地図」を手に取ることができます。日本の各宗派が、特に大切にしているお経(所依の経典)をいくつかご紹介しましょう。


​天台宗:『法華経(ほけきょう)』

「全ての生きとし生けるものは、皆、仏になる可能性を持っている」と説く、壮大で物語性に富んだお経です。


​真言宗:『大日経(だいにちきょう)』など

宇宙の真理そのものである大日如来と一体になるための、密教の神秘的な教えが説かれています。


​浄土宗・浄土真宗:『仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)』など浄土三部経

阿弥陀如来が、すべての人々を救うために立てた誓い(本願)が詳しく説かれています。


​禅宗(臨済宗・曹洞宗):『金剛経(こんごうきょう)』、『法華経(ほけきょう)』など

「不立文字(言葉に頼らない)」を基本としますが、「空(くう)」の思想を説く般若経典などを重視します。


​日蓮宗:『法華経(ほけきょう)』

天台宗と同じく法華経を最高のお経とし、その教えを「南無妙法蓮華経」の題目に集約しました。


​これらは、ほんの一例に過ぎません。


「仏教を学んでみたいけど、どこから手をつければ…」と感じたら、まずはご自身の家と縁のある宗派が、どの“宝の地図”を大切にしているのかを調べてみてはいかがでしょうか。


​その一冊のお経が、あなたを、広大で、深く、そして温かい、仏教という智慧の海の、素晴らしい旅へと誘ってくれるはずです。




こちらもお読みくださいね🙏


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