4月3日閣議決定。住宅型ホーム61万人の「無料ケアプラン」が終わり、系列縛りが法律で禁止される
ケアプランを「タダ」にしてきた、その理由
住宅型有料老人ホームに入居している相談員なら、こういう言い方を聞いたことがあるはずだ。「うちは系列のケアマネが全部つないでくれるから、入居者さんもご家族も手間がない」。
確かに手間はない。利用者負担も0円だ。居宅介護支援は介護保険でカバーされ、入居者がケアプランの費用を払うことはない。施設側からすれば、系列の居宅介護支援事業所が担当し、そのまま系列の訪問介護・通所介護を組み込む。入居者は「おまかせ」でサービスが揃い、法人は系列の売上が積み上がる。合理的に見える設計だった。
それが法律で禁じられようとしている。
4月3日、政府は介護保険法等の改正案を閣議決定し、国会に提出した。改正案には2本の柱がある。住宅型ホームに特化した新サービス類型「登録施設介護(予防)支援」の創設(利用者負担は原則1割)と、系列事業者への誘導・強要を禁止する明示的な法規制だ【案・国会審議中】。
MITSUKETAの見立てとしては、今回の改正案は「囲い込みを困らせる」行政指導のアップグレード版ではない。住宅型ホームが「ケアプランを道具として使い、系列で稼ぐ」という業態設計そのものへの、立法による否定だ。
61万人。それは特養とほぼ同じ規模だ
住宅型有料老人ホームの入居者は、現在61万人を超えている。
特別養護老人ホームの入居者が64万人。その差はわずか3万人だ。10年前、住宅型ホームは「特養の代替」としてとらえられていた。今は独自に拡大した存在になっている。参入規制が薄く、重度者を積極的に受け入れるビジネスモデルが機能してきた。その「参入しやすさ」と「収益性」を支えた仕組みが、囲い込みだった。
囲い込みの構造はシンプルだ。同一法人に居宅介護支援事業所・訪問介護・通所介護・福祉用具貸与を持つ住宅型ホームが、入居者のケアプランを系列ケアマネに担当させ、系列サービスだけで計画を組む。施設に住んでいる以上、入居者はサービス提供者を変えにくい。ケアマネを変えようとしても、施設が反応しなければ事実上変えられない状況もある。
国がこの構造を「問題」として明示したのは2024年以降だ。今回の閣議決定は、その問題意識が「法律に変わった」瞬間だ。
61万人という数字の重みは、「入居者の生活に関わる制度変更が、特養と同じ規模で起きようとしている」ということでもある。そのスケールは、今回の改正がいかに広範な影響を持つかを示している。
入居者の「月1,500円」と、施設の「業態再設計」
第1層は制度の変化だ【案・国会審議中】。
新しい「登録施設介護(予防)支援」では、利用者負担が原則1割の定率になる。現行の居宅介護支援費(月1,082〜1,447単位・1単位≒10円)を参考にすると、入居者の月負担は概ね1,000〜1,500円の水準になる見込みだ。報酬の正確な単位数は制度設計後に確定するが、「ケアプランに利用者負担が生まれる」という構造変化は法案に明記されている。
同時に、入居契約時に系列事業者の利用を条件とすること・ケアマネ変更の強要が法律で禁止される。
第2層は事業所の収益への影響だ。住宅型ホーム50床、系列ケアマネが入居者全員を担当し、系列の訪問介護・通所介護を毎月複数組み込んでいる施設を想定する。入居者1人あたり月10〜30万円の介護サービス費が系列法人内を循環しているとすれば、50名で月500万〜1,500万円が系列の収益構造を支えている。
禁止規定が機能し、外部の中立なケアマネが入居者の意思に沿ってサービスを選ぶようになれば、この循環の一部が系列外に流出する。どの程度流出するかは施設ごとに異なる。ただ、「現行モデルのまま2027年を迎えられる施設は多くない」という点は変わらない。
第3層は入居者の生活だ。月1,000〜1,500円の新負担は、年換算で12,000〜18,000円。年金月額10万円の入居者が、介護費用・食費・居住費を払った後に手元に残る自由なお金は月2万円ほど。その6〜8%が、これまで0円だったケアプランへの対価として生まれる。特養の多床室で月1回の理美容代が1,500〜2,000円であることを思えば、その重さは伝わるはずだ。「0円だったものに1割がかかる」という変化を、入居者・家族にどう説明するか。準備をしている施設はまだ少ない。
この「月1,500円」が生まれるのは、ケアプランが初めて「利用者が費用を払って選ぶ専門職の仕事」として制度の中に位置づけられるからだ。フリーだったものに値段がつく、というのは業態の変化を象徴している。

今年中にやるべきことは「1枚の図」だ
施行は2027年4月が見込まれる。法案は現在国会で審議中だ。
「まだ1年ある」は正しいが、「準備をしなくていい」は違う。法律で禁じられるのは「これからの誘導」だけではない。現在の契約関係・サービス計画の構造が新法の禁止規定に抵触するかどうかを整理する作業が必要になる。そのための素材が「現状の把握」だ。
まず動くべきは、自法人・グループ内の関係図を一枚の紙に書き起こすことだ。居宅介護支援事業所が同一法人内にあるか。入居者のケアプランの何割を系列ケアマネが担当しているか。組み込まれているサービスの何割が系列事業者か。この3点が書ければ、法案成立後に弁護士・行政書士に相談する際の出発点になる。
独立系ケアマネとして住宅型ホームの入居者を担当しているケアマネジャーにとっては、この改正は逆風ではない。囲い込み禁止が法制化されれば、入居者が外部の中立なケアマネを選びやすくなる。「施設に言いにくかった」という声は現場にある。法律がその背中を押す形になる。
病院から住宅型ホームへの退院支援を調整するMSWにとっても、確認事項が一つ増える。今後は「このホームのケアプランは系列か独立系か」が、候補先を選ぶ際の評価軸に加わっていく可能性がある。
2027年4月の施行まで、実質1年を切っている。その時間は「対応を迫られてから動く」ための猶予ではなく、「業態の再設計を先手で終わらせた施設だけが、2027年以降も入居者に選ばれる」ための準備期間だ。住宅型ホームが61万人の「選択肢」でいられるかどうかの分岐点は、今年の経営判断にある。
今年度中にやること、それだけでいい。自法人と入居者のサービス関係図を一枚書き起こす。それが、2027年への準備の全部だ。
参考リンク
📌 国会審議・成立の動向が確定次第、施行日と具体的な報酬単価を追記します。
👉 MITSUKETAは介護現場の「で、どうする?」に毎日答えます。フォローで見逃し防止。
MITSUKETA!(みつけた)とは
無料で使えるケアマネ・MSW専用の介護施設探しデータベースアプリです。

一般の介護施設検索サイトとは違い、現場の専門職が本当に必要とする情報に特化しています。
◆ 詳細な医療条件で絞り込み検索
インスリン回数・吸引・感染症など、電話しなくても条件が一目でわかる
◆ 料金シミュレーション
部屋タイプ・プラン別の費用を、家族への提案前に確認できる
◆ 複数施設を横並び比較
Excel管理や手書きメモが不要に
◆ 一括チャット問い合わせ
複数施設に同時に連絡。電話・FAXゼロ

現在、MITSUKETA!はプロトタイプ(試作版)の段階です。
「現場で本当に使えるもの」をつくるために、実際に施設探しをされているケアマネジャー・MSWの方の声が何より必要です。
お手すきのお時間があれば、試作版触ってみませんか?あなたの声がカタチになります。
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

