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【産業構造を考える②】必要な産業から人が減り、面倒ごとの産業が増えていく社会

こんにちは。

先週、DIYやキャンプを題材に、便利になった社会で私たちは何を失ったのか、という話を書きました。

DIYは、単なる趣味や節約ではなく、外部化された生活機能を自分の手元に少し取り戻す行為ではないか、という内容でした。
便利なサービスが増えるほど、生活の摩擦は減ります。一方で、自分で生活を動かしている感覚も薄くなっていく…

実はこの話、「産業構造の変化の一面」なんですよね。

社会全体で見ると、農業などの第一次産業や製造業などの第二次産業よりも、第三次産業、つまりサービス業の存在感がどんどん大きくなっているのは当たり前のことかもしれませんが、これ自体も「産業構造の変化」なんですよね。

それに加えてDIYの話で取り上げた内容は、更にサービス業、第三次産業の中での構造変化になります。

今回は、この産業構造の変化について考えてみます。
・なぜ社会全体で見ると、第一次産業や第二次産業よりも、第三次産業、つまりサービス業の存在感がどんどん大きくなっているのでしょうか。
・なぜ私たちはここまで多くのサービス業を展開してきたのでしょうか。
・これから起こる変化のヒントはあるのでしょうか。



1. 必要な産業に人が残るとは限らない

まず前提として、必要な産業ほど人が残るとは限りません。
第一次産業は分かりやすいです。農業、漁業、林業のような仕事は、社会にとって絶対に必要です。食べ物がなければ生活できませんし、木材や水産物も必要です。

ただ、必要だからといって、そこに人が増え続けるわけではありません。

人間が食べる量には、ある程度の上限があります。米を毎年2倍食べるようにはなりませんし、野菜や魚も、必要量を超えて無限に消費されるわけではありません。

一方で、農機や肥料、品種改良、冷蔵、物流、流通網などの技術やロジスティクスが整うと、昔より少ない人数で多くを作れるようになります。
生産性が上がるほど、その産業に必要な人の数は減るというのは確かにその通りだな、と思いますよね。

これは第二次産業でも同様です。(第三次でそうですが)
製造業や建設業ももちろん必要です。家も、車も、家電も、工場も、道路もないと困ります。

ただ、第二次産業はかなり重い産業です。
工場や設備などのアセットが必要です。
土地や原材料、エネルギー、在庫、物流も必要になりますし、建設業であれば、人手、資材、工期、天候、許認可も絡みます。

始めるのも大変ですし、続けるのも大変です。
機械化や自動化が進むと、ここでも必要な人の数は減っていきます。

製造業や建設業の価値がなくなるわけではありません、むしろ社会の基盤です。ただ、社会に必要なことと、そこに人が増え続けることは別です。

必要な産業ほど、人が残るわけではないというのは、産業構造を見るうえではかなり重要な点だと思います。


2. 面倒ごとを分けて引き受ける産業が増えている

では、人はどこに移っていくのでしょうか。

一つは、面倒ごとを引き受ける産業です。
食べ物を作る、ものを作る、建物を建てるという第一次、第二次産業の話をしましたが、その周りには面倒ごとが大量にあります。

探す、選ぶ、運ぶ、売る、説明する、比較する、契約する、保証する、管理する、安心させる、不安を減らす。
こうしたことを引き受けるのが、かなり広い意味での第三次産業です。

たとえば、家を例にしますと、家そのものを建てるのは第二次産業の領域です。ただし、現代の住宅は、それだけでは終わりません。

不動産の例

物件を探す人や仲介する人がいないと超大変です。
購入資金を長期に分散させる住宅ローンがないと大半の人が買えません。
他にも、安心のための火災保険や団体信用生命保険があります。
不動産の取得になるので登記の手続きが必要ですが、それには専門のサービス業として司法書士がいます。
住宅の劣化や不具合を検査するインスペクションがあります。リフォームがあります。
新居に移動するための引っ越しがあります。
新居での通信・インターネット回線もあります。
マンション等であれば管理がありますし、修繕も考える必要があります。
また、場合によっては売却査定や相続、税務のニーズもあります。

家という一つのモノの周りだけでも大量の面倒ごとがあり、多くの人は家そのものだけを買っているわけではありません。こうした面倒ごとや不安を、少しずつ誰かに引き受けてもらっています。

決済サービスの例

決済サービスも近い話だと思います。

現金であれば、お金を渡して終わりです。

ところが、今では当たり前のように使っているクレジットカードやキャッシュレス決済になると、表面上は「ピッ」とかざすだけでも、裏側ではかなり多くの仕組みが動いています。

たとえば、1万円の買い物をしたとします。
現金であれば、店側には1万円がそのまま入ります。
一方で、キャッシュレス決済の場合、加盟店手数料として3%程度の手数料がかかります。
仮に手数料率を3.5%とすると、店側に入るのはざっくり9,650円です。

消費者は普段この手数料をほとんど意識しません。
手数料を直接払っているのは、基本的には店側だからです。

では、差し引かれた約350円はどこに行くのか。
かなり大きいのは、カードを発行している会社に支払われるインターチェンジフィーで、240円前後が支払われます。

残りの100円前後を、加盟店と契約する決済会社、決済代行会社、国際ブランドのネットワーク利用料、入金管理、不正検知、請求、回収、チャージバック対応などのサービス提供者に、それぞれ割り振られます。
(もちろん、実際の料率や内訳は、業種、店舗規模、契約条件、カード種別、対面かオンラインかによって変わります。)

さらに最近だと、購買データを蓄積するなどの目的からPOS端末やPOSレジの利用料、月額費用、振込手数料などは、決済手数料とは別に固定でかかる場合もあります。

構造として見ると、かなり分かりやすいです。
利用者から見ると、ただカードをかざしただけですが、その裏側では、信用、立替、回収、不正対応、ネットワーク、加盟店管理、入金管理といった機能が細かく分業されています。

現金であれば見えなかった「間の仕事」が、キャッシュレス決済ではその便利な仕組みの裏側にある複雑な部分、面倒ごと1つ1つが、個別のサービスとして積み上がっているわけです。

つまりサービス業は、消費者に届くまでの間の面倒ごとを分けて、外出しする形で生まれやすくなっているわけです。


3. なぜサービス業には人が集まりやすいのか

では、なぜサービス業は増えやすいのでしょうか。

一つは、需要の側に理由があります。

社会が複雑になるほど、私たちは全部を自分で理解して、比較して、判断することが難しくなります。

家を買うにしても、ローン、保険、登記、リフォーム、税金、管理、将来の売却まで考える必要があります。

決済一つを見ても、現金を渡して終わりだったものが、信用、立替、回収、不正対応、ポイント、入金管理まで含む仕組みに変わっています。

つまり、モノそのものよりも、その周辺にある「分かりにくさ」や「面倒さ」が増えていいて、ここにサービス業の需要が生まれます。

もう一つは、供給の側です。

第一次産業や第二次産業は、土地、設備、原材料、在庫、工場、物流、人手など、物理的な制約が強い産業です。
始めるにもお金がかかりますし、失敗したときの損失も大きくなりやすいです。

一方で、サービス業の中には、比較的軽く始められるものがあります。

知識を売る、まとめて比較しやすくする、説明する、営業する、安心感をつける、面倒な手続きを代わりにやる、情報の見せ方を変えるなどがありますね。

他にも、ソフトウェアやAIで既存のサービスを更に便利にする…
こうしたアップデートにも価格を乗せる余地があります。

もちろん、サービス業が簡単に儲かるという話ではありません。
物理的なモノを作る産業と比べると、付加価値の作り方が違うのです。

社会が複雑になるほど、面倒ごとは増える。
その面倒ごとを、比較的軽く引き受けられる人や会社が出てくる。
それは場所も選ばない、アセットも重すぎなくていい。
そして利益率も取りやすい。

今の三次産業の広がりは、この需要側と供給側の両方から見ると、分かりやすいのではないでしょうか。


4. 分業は便利だが、ブラックボックス化する

分業は、基本的には便利です。

専門家に任せた方がいいことは多いですし、自分ですべてを抱え込むより、得意な人にやってもらった方が早く、正確で、安心なこともあります。

ただ、分業が進みすぎると、利用者から見ると分かりづらくなります。

家を買うだけでも、不動産会社、金融機関、保険会社、司法書士、リフォーム会社、管理会社、引っ越し会社など、かなり多くの関係者が出てきます。

それぞれの役割はありますが、消費者から見ると、どこまでが誰の責任なのか、何を比較すればよいのか、この件は誰に相談すればよいのか、が分かりにくくなります。

決済も同じです。
ユーザーはカードを出したり、スマホをかざしたりするだけですが、裏側にはカード会社、国際ブランド、決済代行、加盟店管理、不正検知、ポイント、請求、回収など、かなり細かい分業があります。
店側は何かトラブルがあった際にどこに確認すればいいのか、分かりにくいですよね。
(これは業者がマトリョーシカ的な感じで噛んでいるはずなので、”恐らく”1か所に聞けばいいと思いますが…)

便利になっているはずなのに、仕組みはどんどん見えにくくなる。
そして、見えにくくなったものを理解しようとすると、また別のサービスが必要になる。

これはやや謎な循環ですよね。

面倒ごとを減らすためにサービスが増えたはずなのに、サービスが増えすぎると、今度はそのサービスを選ぶ面倒ごとが増えていく。
だから、分業されたものをもう一度束ねる力が働くのは想像できますし、実際行われていますね。

次回はこの”束ねる力”から考えていきたいと思います。

それでは。

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