CSMはエクスパンション責務をどのように負うべきか
こんにちは、CSのかじさん(@kajisan_cs)です。
スタートアップの事業立ち上げやカスタマーサクセス支援をしたり、美味しいごはんと日本酒片手におしゃべりするのが好きな38歳です。最近、カスタマーサクセス株式会社を設立しました。
今回はみなさんお悩みの“CSによるエクスパンション”について、「CSMはエクスパンション責務をどのように負うべきか?」という問いを立て、そこに一定の方向性を示す“エクスパンション責務分担フレーム”を共有します。
お読みいただくことで、エクスパンション戦略・組織設計が非常に難しいものの、「責務を負うべき/負うべきでない」という雑な二項対立ではなく、自社においてどのようにするべきか、ひとつの判断基準を得ていただけます。
本記事はカスタマーサクセス・プロフェッショナル5名(後述)が、のべ20時間かけて議論した結果のアウトプットです。
なお、本記事はエクスパンション責務をどのように負うべきかをまとめた前編で、行うとなった場合のCSMイネーブルメントはこちらの後編をご覧ください。
エグゼクティブ・サマリー

本記事は、SaaS企業で重要性が増すエクスパンション(既存顧客からの収益拡大)について、CSMとSalesがどのように協働してエクスパンション責務を担うべきかの構造化アプローチを解説します。
現場ではNRRへの責任増大と、CSMとセールスのスキル乖離により、「誰が売るか」の議論が迷走しがちです。この課題に対し、二項対立ではなく、変数を整理して一歩踏み込んだ答えを提示します。
具体的には、「商材×お財布」の4象限マトリクスと、「顧客規模」「プロダクト特性」という2つの変数を掛け合わせ、状況に応じた最適な「8つの責務分担パターン」を定義しました。
エクスパンションをCSMとSalesでどのように協働しながら推進するかお考えのSaaS経営者、事業責任者、CS部門マネージャーには是非武器としてご活用いただければと思います。
1. CSMに求められる収益責任とその迷走

■ 1-1. 高まるエクスパンションの重要性
2023年頃から日本のSaaS企業におけるカスタマーサクセス部門のKGIが、「チャーンレート」から「NRR」へとシフトしてきました。“導入済サービスの活用支援”だけでなく“売らないといけない”という変化です。
背景となるマーケットのルールの変化については、拙稿の冒頭「カスタマーサクセスのセールス化とは」セクションに記載してありますのでご参照ください。
また、多くの企業がマルチプロダクト展開を進めた結果、最初のプロダクトを導入済の既存顧客に対する新規プロダクトクロスセルの重要性が急速に高まりました。
さらに、カスタマーサクセスが顧客のアウトカム創出にまで活動範囲を広げ、アウトカムを追求するからこそ、支援と拡大のループを繰り返していく必要が出てきました。
外部要因としても、顧客により大きなアウトカムを届けるためにも、エクスパンションの重要性は高まり続けています。
■ 1-2. CSMは”売れない”
しかし一方で、「売れるCSM」は決して多くないという現実があります。
CSMはホスピタリティや人間関係構築能力に長けており、導入支援やお客様のお悩み事相談には力を発揮します。一方、具体的な商品提案や交渉・クロージングなどのセールススキルや経験が不足している傾向にあります。
最近はNRRを追求する流れがあり以前より聞かなくなりましたが、2022年頃までは「CSMはお金や契約の話は一切せずに、常にお客様の味方でいる存在としている」という話も多く聞きました。
こういった経緯から、エクスパンションの重要性が高まり続ける一方、CSMは“売れない”という歪んだ構図が生まれています。
※ すべての企業やCSMがそうではないことは明白ですが、本稿ないしもととなった議論においてはこれを前提として置いています。
■ 1-3. 迷走する責務
これらの状況から、下記のような迷いが現場で起こっています。ここ3年ほど、途切れることなくいつもいただく質問でした。
・カスタマーサクセス部門のKGIはNRR?チャーンレート?
・CSMはセールス苦手なので、目標にはCSQL創出数、すなわちクロスセルに繋がるトスアップ数を置くべきか?
・カスタマーサクセス部門のなかにアカウントマネジメントやカスタマーセールスを専門としたチームを設置すべきか?
・カスタマーセールスはカスタマーサクセス部門に置くべきか?セールス部門に置くべきか?はたまた独立させるか?
・CSMにはカスタマーサクセス未経験でも顧客志向があるセールス経験者を採用配置すべきか?
・エンタープライズ企業はアカウントマネジメントが必要である。CSMがどう担えるか?アカウントマネージャーとの2名担当体制にするか?
これらの問いに対する答えは「ケース・バイ・ケース」です。
CSMはエクスパンションの責務を負うべき/負うべきでないという二項対立で結論を出そうとする方や議論が多く見受けられるのですが、そんなに単純な話ではありません。
まず、「エクスパンション」といってもひと言ではくくれません。一般的にはアップセル、クロスセルという言葉で定義が分けられることが多いと思いますが、よく考えると様々なエクスパンションがあります。
また、具体的にどのようにエクスパンション活動を設計をするかは、事業フェーズ、プロダクト特性、顧客規模などの変数によって違いがあるでしょう。プロセスにおいても、すべてをCSMが実行することを前提とするのではなく、CSMとセールスが分担する形態でしょう。
直近の山田ひさのりさんの記事においても、RightTouch社の分業体制とその考え方を明らかにしつつ、こう締めくくられています。
※ まだ読んでいない方は、本稿と併せてご一読ください。
ぜひ自社の事業において「CSがExpansionを担う前提条件が整っているか」を吟味し、「どこまで何を実行すべきか」を検討していただければと思います。」
■ 1-4. 私たちのチャレンジ
そこで私たちは
・どのような種類のエクスパンションを
・どのような条件下で行う場合は
・どのようにCSMとセールスが協働すべきか
という解像度で意思決定に役立てられるフレームを作りはじめました。
最終的に「これが正解です」という結論は1つにならないのですが、どこまで構造化できたか、どこから先はなおケース・バイ・ケースと言わざるを得ないかを含めて、みなさんの意思決定の土台になればと思っています。
2. エクスパンション4象限
■ 2-1. エクスパンション=アップセル+クロスセル?
そもそも、エクスパンションとは何でしょうか。
一般的には「アップセル」と「クロスセル」の2つで分類されていることが多いものの、会社ごとにその定義は微妙に違ったり、この2つでは定義しにくいエクスパンション活動もありました。
そこで本記事ではあえて「アップセル」「クロスセル」という名称を厳密に定義・使用せず、エクスパンション全体を4象限で整理して扱います。
■ 2-2. 「商材 × お財布」4象限

採用したのは次の2軸です。
・商材が同じか/別か
・お財布(予算管轄・決裁ルート)が同じか/別か
これを掛け合わせると、エクスパンションは次の4つに分類できます。
❶ 同じ商材を、お財布が同じ相手に売る
❷同じ商材を、お財布が違う相手に売る
❸別の商材を、お財布が同じ相手に売る
❹別の商材を、お財布が違う相手に売る
この4象限を使うことで、下記をプロダクトや事業構造をまたいで比較しやすくなります。
・どのタイプのエクスパンションが自社にとって重要か
・今話しているエクスパンションとはどれを指しているのか
・どのタイプはCSMが地続きで担いやすいのか
■ 2-3. 各象限のよくあるパターンと基本線

❶ 同じ商材 × お財布が同じ
同じ部署に対して、同じプロダクトを、もっと広く・深く使ってもらう
・営業支援ツールで、最初は一部の営業チームだけに導入し、成功事例をもとに1〜2年かけて同じ部署内で利用範囲を広げていくケース。
・既存の業務システムについて、同じ部門の中でユーザー数や利用数上限の拡大を行う
こうしたケースは、「既存プロジェクトの成功の延長線上」で話が進みやすく、CSMが日々の運用支援の一貫としてエクスパンションに取り組みやすい象限です。
❷ 同じ商材 × お財布が違う
同じプロダクトを、別の部署・別のグループ会社に展開していく
・カンパニー制を敷いている大企業で、A事業部で導入した後に、B事業部にも入っていくケース。同じ会社・同じプロダクトだが、「売り先」が別の事業部であり、予算管理も評価指標も異なるため、ほぼ新規に近いプロセスが必要になる。
・親会社で導入したプロダクトを、グループ会社や関連会社に広げていくケース。事業会社ごとに運用もユースケースも異なり、稟議フローや契約主体も変わる場合があるため、「同じ商材だから簡単」とは言えない。
お財布が違う場合は、「商材は同じでも、組織的には別のクライアント」として扱う必要があります。エクスパンションはCSMが担うべきではなく、営業やBDRとの連携が必須になる領域です。
❸ 別の商材 × お財布が同じ
同じ決裁者・同じ予算ラインのなかで、別のプロダクトを追加導入する
・マーケティング施策の支援ツールから入り、同じマーケ組織の中で分析ツールやコンテンツ管理ツールを追加導入するケース。既存プロダクトと連携したときの価値や、全体としての投資対効果を語る必要が出てくる。
・バックオフィス領域で、経費精算SaaSから入り、同じ管理部門の中で請求書管理・ワークフローなどを追加導入していくケース。
この象限は、「CSMがチャレンジしたい」または「CSMにチャレンジしてもらいたい」と考えうる一方で、セールス難易度が一段上がる領域です。
マネージャーが1番悩んでいる象限ではないでしょうか。他の象限よりも分類が難しく、どこまでをCSMの守備範囲とするかは、後述する2つの「変数」によって変わります。
❹ 別の商材 × お財布が違う
ほぼ新規開拓に近いエクスパンション
・既存の営業支援ツールの顧客から、同じグループ会社のカスタマーサポート部門向けプロダクトを提案するケース。
・人事向けプロダクトを導入している企業に対して、同じ企業内の営業部門向けツールを提案するケース。
プロダクトも違い、お財布・決裁ルートも別となると、ユースケースやKPIもまったく異なるため、ほぼ新規営業と同じアプローチが必要になる象限です。CSMはこの象限を担うべきではありません。
3. 4象限 × 顧客規模で導かれる協働プロセス

■ 3-1. 影響を与える多数の変数たち
基本線は見えてきました。一方「CSMはエクスパンション責務をどのように負うべきか?」に答えるためには4象限の整理だけでは不足です。特に❸ 別の商材 × お財布が同じはケース・バイ・ケースの最たる象限です。
判断に影響を与えうる変数は、他にも多数あります。
・顧客規模(SMB/MMB/エンプラ)
・プロダクトのPMF状況(PMF前/後)
・プロダクトのドメインの専門性の高さ(高/低)
・プロダクト特性(業務組込型/活用重視型)
・マルチプロダクトの場合のその性質(マルチ/コンパウンド)
・課金形態(ユーザー数課金/トランザクション課金/両方)
・予算の出どころ(部門予算/経営陣決裁/広告費など別財布かなど)
・CS組織内ケイパビリティ(セールス経験者の有無)
・慣習の違い(内資/外資)
変数を1つずつピックアップしパターン別の影響分類を試みたものの、考えれば考えるほど実際は複数の変数が絡み合い、ケース・バイ・ケースとしか言えないものがほとんどでした。
しかしこれらの中でも、「顧客規模」は非常に影響が大きく、かつ独立性が高い変数として判断軸とすることができます。また❸ 別の商材 × お財布が同じ象限については、「顧客規模」に加えて「プロダクト特性」も重要な判断軸となります(詳細は後述)。
■ 3-2. 「顧客規模」
今回のフレームにおいて、4象限をさらに分類するための判断軸として、顧客規模を下記定義しました。
分類:SMB/MMB または エンタープライズ
エンタープライズ企業に対する営業プロセスやそこで求められるセールス力は、SMB/MMB規模に対するそれと大きく違いがあります。エンタープライズ向けのセールス活動は難易度が上がり、セールスとの協働が多く必要という方向性が見えます。
その境界線は具体的に何なのか、つまりここでいうエンタープライズ企業とは何かというと、概ね、ステークホルダーが多く、広い面ないし多段階での決裁・承認を進める必要があり、高いプロジェクトマネジメント能力とレイヤーに合わせた交渉・クロージング能力が求められると言えます。
定義は会社によって差があると思いますが、ここでは便宜的に、多くの会社で採択されているであろう「従業員数1,000名以上の大企業」をエンタープライズと定義しています。
■ 3-3. 営業プロセスにおけるCSM/Salesの協働関係
ここまで説明した4象限×顧客規模のパターンに応じて、CSMがエクスパンション責務を“どのように負うべきか”を明らかにするために、営業プロセスを下記4つに分類し、プロセスごとのCSMとSalesの協働体系を整理しました。
・提案機会の創出
・本提案
・トライアル支援
・交渉・契約
ここまでの整理を経て、CSMがどのようにエクスパンション責務を負うべきかに対して、一定の納得感を得られるであろう方向性をまとめることができました。
4. エクスパンション責務分担フレーム

お待たせしました。本記事のメインコンテンツです。
■ 4-1. 目的
本フレームは、「CSMはエクスパンション責務をどのように負うべきか?」という問いに対し、
・どのような種類のエクスパンションを
・どのような条件下で行う場合は
・どのようにCSMとセールスが協働すべきか
を明らかにし、各社における意思決定に一定の方向性を与えることを目的としています。
なお、「一定の方向性」程度までは示すことができましたが、上述の通り多くの変数があるため本フレームが「唯一解」ではないことは改めて添えておきます。ベースの考え方としていただくものとご理解ください。
■ 4-2. 前提
本フレームは下記の状態を前提としています。
・プロダクトのPMF状況:PMF後
・CS組織内ケイパビリティ:“売る”ことに長けたメンバー割合が低い
また、下記論点はスコープ外としその意思決定を直接的に推進できるものではありません。
・各活動に求められるセールス力の定義
・NRR, CSQLなどのKPIの持たせ方や適切な水準
・OKR, MBOなどの目標管理手法や評価制度との関連
・エクスパンション推進のためのイネーブルメント活動
・エクスパンション推進のための組織形態や採用要件の変化
■ 4-3. フレーム全体像

複数の分類軸をもとに、最終的に8つの責務分担パターンを提示します。
・4象限の分類
まず、検討の対象としているエクスパンション活動がエクスパンション4象限のうちいずれにあたるかを分類します。今あなたが考えているエクスパンションはどの象限のものですか?
・顧客規模の選択
同じ象限のエクスパンション活動でも、顧客規模により責務分担パターンが分かれることがあります。対象顧客規模は、SMB/MMB または エンタープライズのどちらですか?どちらもある場合は規模によってパターンが変わるということをご認識ください。
・分岐:❸ 別の商材 × お財布が同じ かつ 顧客規模がSMB/MMBの場合
一般的にはクロスセルと呼ばれる象限です。SMB/MMBに対するクロスセルをCSMが行うべきかは、多くのCSマネージャーが悩んでいる論点だと思います。
この場合についてのみ、追加の判断軸として「プロダクト特性」が入ります。プロダクト特性の定義とそれによる結果の違いは後述します。
■ 4-4. 8つの責務分担パターン

最終的に、CSMとSalesがどのように協働すべきかをパターン別にまとめたものです。なお、Sales配下の実行主体(営業/AM/カスタマーセールス等)や組織体制は本フレームでは規定していません。
象限ごとに説明します。

象限❶ 同商材 × お財布が同じ
この場合、顧客規模に関係なく結論は同じです。CSMとしての支援業務の延長線上で活動できるため、構造的な難易度はもっとも低く、エクスパンションは原則CSMがすべてのプロセスで担うべき領域です。

象限❷ 同商材 × お財布が違う
・かつ、顧客規模がSMB/MMB
同じ商材でも「別部署・別法人」に広げていくため、新規営業に近い動きとなります。主担当はSalesです。
CSMは既存担当としての信頼を活かして提案機会をつくり、その後の本提案・トライアル・交渉〜契約はSalesが前面に立つ形です。
・かつ、顧客規模がエンプラ
エンタープライズかつ別のお財布を攻めるため、難易度は高く、主担当はSalesです。
CSMが提案機会の創出とトライアル支援で「現場・業務理解」を提供しつつ、本提案と交渉・契約はSalesがリードする協働パターンです。

象限❸ 別商材 × お財布が同じ
・かつ、顧客規模がSMB/MMB
この場合、さらに「プロダクト特性」による分類を行います。プロダクト特性の分類内容・定義は次項に記載しています。
・かつ、プロダクト特性が業務組込型
業務組込型プロダクトの場合、CSMの活動はオンボーディング比重が高く、その内容も複雑になる傾向があります。並行してエクスパンション活動を推進する難易度は低くなく、Salesが主担当を担い適切に分業すべきです。
・かつ、プロダクト特性が活用重視型
活用重視型プロダクトの場合、CSMは日頃からアウトカム創出のためのコンサルティングや継続的な働きかけを行います。より確実に、より深いアウトカムを届けるための活動はCSMが一貫して担うことができる領域です。
・かつ、顧客規模がエンプラ
エンタープライズ企業に向けて別商材を提案するため、主担当はSales、難易度はお財布が同じであるため高ではなく中程度と位置付けています。
CSMが提案機会の創出とトライアル支援で「関係とユースケース」を支えつつ、本提案と交渉・契約はSalesが責任を持つかたちです。

象限❹ 別商材 × お財布が違う
・かつ、顧客規模がSMB/MMB
プロダクトもお財布も両方違うため、新規開拓に極めて近く、主担当はSales、難易度はSMB/MMBであるため中と整理しました。
CSMは担当者を紹介してもらうなどの提案機会の創出のみを担い、それ以降はSales主導で進める形態です。
・かつ、顧客規模がエンプラ
最も難易度が高いパターンであり、Salesが全責務を持つ領域です。
提案機会の創出から提案、トライアル、交渉・契約まで一貫してSalesが担当し、CSMは必要に応じて個別に支援するのみでしょう。
■ 4-5. 追加判断軸:プロダクト特性

象限❸ 別商材 × お財布が同じ かつ、顧客規模がSMB/MMBの場合のみ設けた追加判断軸:プロダクト特性について説明します。
分類:業務組込型 または 活動重視型
これはソフトウェアプロダクトのカスタマーサクセス活動形態を考える際に私がよく最初に考える分類です。実際は二項対立ではなくグラデーションであるものの、下記のような特徴があります。
・業務組込型
活用のされ方:業務プロセスに組み込まれ、日常業務の中で自動的に利用される
アウトカム創出構造:機能が利用されると半自動的に安定してアウトカムが創出されやすい
CS活動重点フェーズ:業務組込を実現するまでのオンボーディングが圧倒的に重要、複雑な初期設定やマスタ取り込み・外部システム連携などが発生
CSMの主な役割:プロジェクト管理、業務要件整理、システムインプリケーション、定着支援
特に基幹系システム、バックオフィスSaaS、セキュリティ関連サービスなどがこれにあたります。
業務組込型においては、オンボーディング期にプロダクトを徹底的に顧客の業務に乗せていくためのハイタッチコミュニケーションや、お客様の仲間の立ち位置として協働プロジェクトを推進するような関わり方が求められます。CSMはセールス力とは関連度が低い活動を担う傾向があります。
・活用重視型
活用のされ方:プロダクトを利用せずとも日常業務を行うことができ、利用者により活用方法や活用度合いに大きな差が出る
アウトカム創出構造:機能が利用されているだけではアウトカムを創出しにくく、継続的なコンサルテーションや活用促進、また顧客側の活用に向けたコミットメントがより必要
CS活動重点フェーズ:オンボーディングのみならず、継続的に活用促進するためのアダプション期の働きかけが重要
CSMの主な役割:プロダクト機能ではなく施策に対するコンサルテーション、ユースケース提案、定期的なモニタリングと活用促進ナッジ
マーケティング支援ツール、採用スカウトサービス、従量課金が発生するマッチングサービス、決済系サービスなどがこれにあたります。
活用重視型においては、アダプション期にリプレイス営業的な活動や、継続的な利用促進をするためのナッジ(軽くつつく)コミュニケーションを取ることが重要です。エクスパンションに関係なく業務組込型のCSMと比べるとセールス力が求められる活動を担う傾向があります。
象限❸ 別商材 × お財布が同じ かつ、顧客規模がSMB/MMBの場合のみ、本判断軸により結果が分かれますのでご確認ください。
■ 4-6. フレームのまとめ
上記8パターンにより、
・どのような種類のエクスパンションを
・どのような条件下で行う場合は
・どのようにCSMとセールスが協働すべきか
に一定の方向性を与えることができました。
もちろん、本フレームはあくまで「基本線」です。採択しなかった多くの変数による調整は必要です。それでもベースとなる方向性を踏まえたうえで、自社の活動をより最適に設計するための材料となれば嬉しいです。
それは、マネジメントレイヤーの意思決定においても、現場メンバーの理解においても、そして何より顧客にベストな購買体験を届けるためにも、非常に重要なことです。
5. まとめ
1万字近くになってしまいました。
唯一の結論を出すことが難しいテーマでしたので、フレームだけお伝えしても、向き合っている方ほど疑問・反論が浮かぶものと考えます。そのためやや冗長ではありますが丁寧にお伝えしました。
本記事をあらためて一文にまとめるとこうなります。
エクスパンションの重要性が上がり続ける時代において、それらをすべてCSMが担う必要はない。4象限と2つの判断軸でもって、CSMとSalesとの最適な協働体系を設計しよう。
本フレームがみなさんのエクスパンション活動を1歩でも前に進めるきっかけとなれば、それ以上に嬉しいことはありません。
なお、本フレームはカスタマーサクセス・プロフェッショナル5人の集合知によって生まれたものであることを記載しておきます。一緒に議論を進めてくれたみなさん、ありがとうございました。
共に議論を進めたカスタマーサクセス・プロフェッショナル
カスタマーサクセス株式会社 代表取締役CEO 岩熊さん @YutoIwakuma
TSUMAMI CONSULTING株式会社 代表取締役 川村さん @takuji_kawamura
株式会社RightTouch Customer Growth Partner 増田さん @Massuo_22
UPWARD株式会社 CS部 本部長 三原さん @nnaikonn
最後までお読みいただきありがとうございました。参考になった方は、是非記事への「いいね」と「シェア」と「Xのリポスト」をお願いいたします。
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