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「保守」教養主義の没落

米津玄師さんが褒めたおかげで、竹内洋の『教養主義の没落』が、すごい売れてるらしいじゃないですか。


音楽ナタリーのインタビューで、米津玄師さんが「社会学者の竹内洋さんの「教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化」という本がべらぼうに面白かったですね」と発言(聞き手は柴那典さん)。反響がとてつもなく大きく、昨日に17刷、先ほど18刷の重版が決まりました!
(中公新書 2025/2/6 19:07)


それは結構なことなんだけど、米津さんは、同じ竹内洋の『革新幻想の戦後史』(中公文庫)は、読んでくれたでしょうか。

竹内ファンの私としては、『革新幻想』のほうが好きですね。こっちも勧めてほしいなあ。



『革新幻想の戦後史』(2011年)は、「進歩的文化人、岩波、朝日」という「鉄のトライアングル」が、いかに戦後の大学キャンパスで猛威をふるったかを描いたものです。

革新幻想とは、「左派(リベラル)にあらずんばインテリにあらず」という同調圧力のことですね。

まあ、大正期から昭和前期の「教養主義」の消長を描いた『教養主義の没落』(2003年)の、続編みたいなものです。


淋しくなった保守論壇


私が、米津さんの話題に続いて、竹内洋のこの本を思い出したのは、昨日、飯山陽のYouTube「あかりチャンネル」を、見たからでもあります。

【WiLL、Hanada、正論は日本保守党を損切りできるか?】ニチホを批判しないデメリット!
(飯山あかりちゃんねる 2025/2/10)


この番組そのものも、面白かったんですけどね。

いま保守論壇誌は、「日本保守党」をどう扱っているのか、そのスタンスを検証する、というもの。

出版が古巣の私なんかが、気になっていたところでもあり、痒いところに手が届く、気が利いた内容でした。


保守雑誌の日本保守党へのスタンスはこんな感じ(「飯山あかりちゃんねる」より)


ただ、その内容とは別に、

「ああ、いま保守雑誌って、この3誌しかないんだ」

と改めて気づいて、淋しく思ったんですね。


「昔はもっと充実してたよなあ、『諸君!』とかあったし」


と思って、竹内洋の『革新幻想の戦後史』を思い出したわけ。


『革新幻想の戦後史』は、「諸君!」(文藝春秋)に連載されていたのでした。

2007年12月号からの連載でした。


文春の雑誌で連載されてたのに、なぜ中公から本が出たのか、いきさつはよく知らないですが。

「諸君!」が、2009年に休刊になったことと、関係あるのかも。

『革新幻想の戦後史』は、「諸君!」の掉尾を飾る名論文でもあったわけ。


「諸君!」には、稲垣武の『「悪魔祓い」の戦後史』も連載されてたし(1992〜94年)、山本夏彦のコラムとか、清水幾太郎の「核の選択 日本よ国家たれ」(1980年)とか、内藤国夫の「月刊創価学会」とか、いろいろ思い出深いです。


保守月刊誌の黄金時代


私の世代では、宮崎哲弥なんかが盛んに書いていた1990年代後半が懐かしい。

それはちょうど、アメリカでも新保守主義の動きが生まれた時でした。

リバータリアニズムとか、コミュニタリアニズムといった新しい概念も入ってきて、保守思想の地平が広がった時期です。


宮崎哲弥は、当時アメリカで話題だったマイケル・リンド(中道保守)あたりをパクっていたと思うけど、まあパクれるだけでも大したもの。

日本では、小林よしのりのゴーマニズム宣言の席巻が始まっていた。

保守論壇誌も、ほかに新潮社「新潮45」とか、小学館の「SAPIO」とかがあった。


ほかならぬ竹内洋が、『革新幻想の戦後史』で、この時代の保守雑誌の隆盛を語っています。


『諸君!』が部数を伸ばしはじめたのは、八〇年代初頭からである。実売数五〜六万部と急上昇する。一九八四年の『諸君!』の実売数約六万。この時点で『諸君!』は『中央公論』を四〇〇〇部ほど引き離す。以後、『諸君!』はこの実売数を維持するが、『中央公論』の部数が年を経るごとに減少したため両誌の実売部数は開いていく。
(『革新幻想の戦後史』中公文庫 下p228)


しかし、この時代の保守雑誌の内容は、十分に評価されているとは言えず、その問題にも竹内は触れています。

保守系雑誌のほうが売れているのに、たとえば朝日の論壇時評が取り上げるのは、売れていない「世界」とか「中央公論」に載った論文ばかり。

竹内は、


読者数からして『世界』『中央公論』に見劣りしない保守系三誌の掲載論文を完全に無視して、論壇の解体や変容が論じられていたのが不思議というほかはなかった。
(同下 p231)


ーーと書いています。


「教養」の復活を


で、それから月日が流れて、保守論壇も淋しくなった。

背景にはもちろん、出版不況があるのだろうけど。


でもまあ、「日本保守党」では、面白い雑誌が作れないよなあ、と思う。

雑誌、とくに月刊誌は、トップに載る派手な見出しだけじゃなく、中面の連載や記事がいかに充実しているかで、読み応えが決まるじゃないですか。

そこにはやっぱり、「教養」が詰め込まれていなければならない。


百田尚樹とか、有本香とか、なんか教養がないんだよな。


YouTubeに出てくる言論人は、まあ書斎からいうことで、蔵書棚を背景に映ることが多く、あれもどうかと思うけど、百田の場合は、いつもCDコレクションの棚が背景ですね。

ちょっと古臭い(元祖教養主義?)クラシック音楽の趣味だけが、彼の唯一の「教養」なのかもしれない。


雑誌を作るほうも、大変だろうな、と思う。

日本保守党レベルなら、ネットで十分、ということになる。


まあ、あんまり言いたくないけど、2010年代の出版界に保守ブームを呼んだ安倍晋三さんも、そんな教養があるほうではなかった・・

「保守」教養主義の没落・・


私としては、アメリカの保守思想家の原書を読むのを、2000年代初めくらいでやめてしまっているから、知識をアップデートしたいんですけどね。

そういう勉強ができる雑誌が、ないんだよねえ。

これ以上没落させずに、保守出版界は「教養」を復活させてほしいねえ。



<参考>


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