クラシック音楽は日本の「おかき」のごとし
アメリカのクラシック評論家、ディヴィッド・ハーウィッツは、私と趣味が合う。
だから、彼のYouTube番組をよく聞いていて、よくnoteのネタにもさせてもらっています。
昨日の番組で、彼はクラシック音楽を、日本の「おかき」にたとえていました。
ちょっとした軽いおしゃべりだけど、日本人が知らないのももったいないから、以下におおよその内容を、雑にまとめてみました。
Why Classical Record Collecting Is Just Like Japanese Junk Food(クラシック音楽評論家: David Hurwitz 2025/3/14)
みなさんは日本の駄菓子はお好きですか? 私は大好きで、アジア食料品店でよく買ってきます。
日本ほど駄菓子の種類が多い国はありません。それは真に驚くべきことです。
私の人生の野望の一つは、プリングルズのポテトチップを全種類食べることですが、日本の駄菓子の品揃えは、それどころではありません。
たとえば、このグリコの「チーザ」。これは本当に絶品(absolutely fabulous)です。

日本の駄菓子の値段は、安くありません。それは、日本人が、たとえ駄菓子であっても、愛情と敬意をもって製造するからであります。
さて、われわれクラシックの収集家は、「なぜ同じ曲の録音を1万種類も集めるのか」とよく聞かれます。
もっともな疑問です。
私は、それは日本の駄菓子を探索するのと同じだ、と言いたいのです。
日本の駄菓子は、基本的にはおかき(rice crackers)です。
つまり、基本的には、お米と、醤油でできています。運がよければ、グルタミン酸ナトリウムが入ることもありますが。
しかし、その形は千差万別で、味も少しずつ異なります。材料は同じでも、100とおりの楽しみ方ができる。
クラシックレコードの収集も同じなのです。
たとえば、モーツアルトのト短調交響曲(40番)を考えてみましょう。
われわれにとっての定番は、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団のモーツアルトです。これは本当に素晴らしい演奏です。

このジョージ・セルのモーツアルトにあたる日本のおかきは、三幸製菓の「越後樽焼」です。

このおかきは、プレーンで、基本に忠実に作られています。
それは、ジョージ・セルのモーツアルトと同じです。セルは、モーツアルトをあまり官能的にしたくありませんでした。
このおかきも、まったく官能的ではありません。ほら、単に丸い。成分もシンプルです。
そう、これこそ、ジョージ・セルのおかきです。
もしかしたら、あなたは、古楽器派かもしれませんね。
それなら、アダム・フィッシャー指揮デンマーク国立室内管弦楽団のモーツアルトがお好みでしょう。

古楽器派のアダム・フィッシャーのモーツアルトにあたるのは、この東陽製菓の「かつおぶしと塩のあられ」であります。

このあられは、形は原始的だし、包装もぶっきらぼうです。昔ながらのおかきで、シンプルですが、おいしい。
これこそ、おかきの形をした古楽器だと申せましょう。
ジョージ・セルにおける現代性、その温かみや繊細さと、古楽器派の率直で素朴な美しさの両方が欲しいですか?
その場合は、チャールズ・マッケラス指揮スコットランド室内管弦楽団のモーツアルトがお勧めです。
これも本当に素晴らしい演奏ですね。

マッケラスのモーツアルトにあたるおかきは、もう私は食べてしまっていますが、この丸彦製菓の「てり焼きせんべい」です。

これは、私には日本の駄菓子の究極に思えます。
この光沢のあるテリヤキ味は、実に官能的で、かつベーシックです。
モーツアルトのテリヤキです。米菓の王様と言えましょう。
それにしても、日本のおかきは、1個ずつ包装してある上に、プラスチックのトレーがついていたりする。過剰包装で、地球温暖化に貢献してますな。
あなたの音楽の好みは、もう少し伝統的でしょうか。
たとえば、オットー・クレンペラーのモーツアルト(フィルハーモニア/ニューフィルハーモニア管)が好き、とか。

クレンペラーのモーツアルトは、無骨だけど、力強く、ロマンチックで、立派な感じがします。
クレンペラーは、おかきで言えば、金吾堂の「厚焼」です。
これこそ、おかきの「デラックス」です。

以上、4種類のモーツアルトと、4種類のおかきを紹介しました。
私は、どれも大好きです。
クラシック音楽を、駄菓子でたとえるなんて、という人がいるかもしれません。
クラシックはもっと高尚なものだろう、と。
でも、これらの駄菓子も、何世紀もの日本の食文化と、驚異的な技術のたまものです。
そのような文化の粋であるのに、駄菓子だから、相対的には安価で手に入ります。
クラシック音楽も同じだ、と私は言いたいのです。
ベートーヴェンのたとえば「第五」を、同じ演奏でも150回聴けば、精神の崇高な境地にいたるはず、とかいうのは、馬鹿げた考えだと私は思っています。
それなら、150種類のちがう演奏を楽しんだほうがいい。
駄菓子も、クラシック音楽も、ただ楽しむためのものです。
おかきのいろいろな味を楽しむことと、クラシック音楽の微妙な演奏のちがいを楽しむことのあいだに、本質的なちがいはないのです。
音楽は素晴らしき駄菓子なのです。
このわさび味もおいしいです。

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<蛇足>
ちなみに私(柿生)は、モーツアルトの交響曲はジェームズ・レヴァイン指揮ウィーン・フィルを長らく聴いていました。ジョージ・セルの系統ですね。
おかきにたとえるなら、亀田製菓の「ソフトサラダ」です。
<参考>
