AIの実力 #3: AIには創造性がないって本当?
AIは「既存の模倣」はできても、「本質的な創造」はできない。
意味理解と同様、「創造性」も人間の専売特許とよく誤解されています。
そもそも「創造性」とは何でしょうか?
言葉の定義を議論し始めると、収束しない危険がありますが、ここでは「既存の枠組みや手順だけでは到達できない、新たな価値や視点を生み出す能力のこと」とします。
注意しなければならないのは「当たり前に実現できるレベルを超える能力」を「創造性」と呼んでいる、ということです。つまり、ある時点で「創造性がある」とみなされたことが、時間がたつと「当たり前」になることもあるわけです。
「創造性」という言葉の使われ方について、もう少し具体的に考えると、大きく二つに分けて考えられます。
着想としての創造性:
問題解決や目的達成のために、「常識を覆す一手」や「思いもよらないアイデア」をひらめく力創作行為としての創造性:
デザイン・音楽・文章など、新しい作品をゼロから生み出す力
それぞれについて、現時点のAIの実力を見てみましょう。
1. 着想としての創造性
すでにいろんな領域で、AIは人間の能力を超えていると言えます。
私が真っ先に思い浮かぶのが、囲碁での事例です。
2016年3月、DeepMind の AlphaGo は、世界トップクラスの棋士イ・セドルを相手に5番勝負を行い、4勝1敗で勝利を収めました。
その中で、特に話題になったのが、2局目の「37手目」です。
人間のプロ棋士ですら思いつかない奇手を指し、専門家や解説者を驚愕させました。これにより、AI が勝率最大化のための「新しい着想」を生み出せることが初めて広く知られることになりました。
そのあとも、古来から悪手とされてた手が AI により打たれたことから、プロ棋士たちにも研究され、今や「定石」となっているものが数多くあります。
これ以外にも、例えば自然科学の領域でも、専門家の発想を超えたアイディアが次々とAIにより提案されています。
2. 創作行為としての創造性
AI は、過去のデータをもとにパターンを学習するだけでなく、そこからまったく新しい作品をゼロから生み出す力を獲得しつつあります。以下、代表的な分野と事例を挙げます。
音楽作曲
AIVA(Artificial Intelligence Virtual Artist)は、古典派から現代音楽まで学習し、完全オリジナルの楽曲を作曲。フランスの著作権団体 SACEM に作曲家として認定され、企業 CM やイベント用 BGM として採用されています。画像・アート生成
DALL·E 3、Stable Diffusion、Midjourney といったモデルは、文字情報(プロンプト)だけで「一度も描かれたことのない」絵画やイラストを生み出します。広告ビジュアルやギャラリー展示への応用が進行中です。デザイン/プロダクト
Adobe Firefly や Canva の自動デザインツールは、ロゴ、ポスター、Web UI パーツなどをユーザー要望に合わせて自動生成。プロのデザイナーが行うレベルのアウトプットを短時間で提供可能です。文章生成
GPT-4 などの大規模言語モデルは、プロンプトに応じて新規の短編小説や詩を自動執筆できます。たとえば、2025年3月に公開された短編メタフィクション『A machine-shaped hand』は、喪失と再生をテーマにした物語構造を AI が自律的に組み立て、多くの読者を驚かせました。
これらの例はすべて、AI が「既存の枠をなぞるだけ」でなく、「創作行為そのもの」を遂行できることを示しています。人間のクリエイターと同様に、新奇性・美意識・構造設計を伴った作品を自律的に生み出せる点で、まさに「創作行為としての創造性」が実現されていると言えるでしょう。
なかでも「物語を紡ぎだす能力」はまさに現在進行形で劇的に向上しているところです。
いかがでしょうか?
もちろん、あらゆる領域でAIが人間の創造性を凌駕しているわけではありません。
AIにも、得意不得意もあります。
また、現時点では、人間がAIに創造性を発揮させたい方向を具体的に指示する部分が、ボトルネックになっているという面もあります。それは、つまりAI を使いこなせる人間が不足しているということです。
『AIには創造性がない』と現実逃避するよりも、AIの着想力や創作力を自在に引き出せるスキルを磨く――それこそが、これからの我々が持つべき姿勢ではないでしょうか。
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