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動いちゃだめでしょ、スタビライザー

このパーツは長い間「TFC」と呼ばれていました。「Torque Flight Compensator」の頭文字を取ったものですが、直訳すれば「ねじれて飛ぶのを制御する」という道具です。それが今のように「ダンパー」と呼ばれるようになったのは、ヤマハが1970年代に入り「ビルトインダンパー」などをぞくぞくと商品化しだしてからです。

TFCは1965年に特許申請がされ、1968年11月に承認された、ホイットおじさんの大発明の一つです。
このTFCの可動部には、今の多くのダンパーと同じように「ゴム」が使用されているのですが、特許申請される以前のTFCは「スプリング」によって可動していました。

1967 Amersfoort World Champion
Ray Rogers

ダンパーがゴムかスプリングでは、性質に大きな違いがあるのですが、すくなくともホイットおじさんがTFCを考案した時点では、その目的は「TFC」の名のとおり、今の一般的なダンパーの考えとは異なっていたようです。
特許申請の文言の中に『接続手段が弾性を有し、放出された矢の横方向の推力下で弓の加重要素に対してわずかに動いて矢羽根が自由に通過できるようにする』と書かれています。
これはクッションプランジャーがない時代において、スタビライザーによって弓の動きは止めたいが、弓が完全に止まってしまうと、特にプラバネなどのハードベインではハネがレスト部分に接触し、矢の方向性や矢飛びに悪影響を及ぼしたのです。そこで、このパラドックスを解消するために、TFCは発射時の矢がレストを通過する一瞬だけ弓を自由にしてやるために考え出されたようです。しかしこのことは、スタビライザーの弓の動きを止めるという目的には逆行するものです

ところが実際に選手が使いだしてみると、弓を自由にすること以上に、「振動吸収」に効果があることに気付いたのです。エイミング時の振動(微振動)と発射時の振動(大きなショック)です。

そこで今、「ダンパー」を使用する時、アーチャーは知っておかなければならないことがあります。
1)ダンパーはスタビライザーロッドを動かすため、本来の「弓を固定する」というスタビライザーの目的とは相反する。
2)高性能(高剛性・高弾性)なロッドを使っても、根元にダンパーがあれば、ロッドの高性能は発揮されない。

3)ロッドの先端に取り付けられたダンパーは、振動吸収を目的とするが、それはほとんどの場合、矢が発射された後の振動を吸収するだけで、的中精度にほとんど影響しない。
4)的中精度に影響を及ぼすエイミング時の「微振動吸収」を、ロッド先端のダンパーで行うのであれば、それがエイミング時に震えるくらいに柔らかくなければならない。
5)ロッドの先端に取り付けられたダンパーは、さもその弓が高性能で安定しているように見せるかけるだけで、本当に完成された弓や高性能なロッドにおいては、そのようなダンパーは必要としない。
6)短いロッドに取り付けられた、発射時にも動かない硬いダンパーは、ウエイトか飾りと同じである。

7)矢が発射された後の「振動吸収」は、フォームの安定には寄与しても、的中精度向上にはほとんど影響しない。
8)どんなロッドでもダンパーを付ければ、良いロッドのように勘違いさせてくれる。
9)最初にホイットおじさんが考えたように、ベアボウとスタビライザーを付けた弓では、ベアボウの方が矢はきれいに飛ぶ。ダンパーを付けた弓とダンパーを使わない弓では、ダンパーがある方が矢はきれいに飛ぶ。

1972 Munich Olympic Gold Medalist
John Williams
Hoyt TFC + Bear Omni-Coupler

ということで、「ダンパー」は賢く使わないと、「ダンパー」に騙されることになるので注意しましょう。

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亀井 孝のアーチェリーノート 貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。 きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。