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「飛び出し感」vs.「安定感」

最近のコンパウンドボウをみると、これにリカーブのリムを付けて引いたなら、簡単に折れてしまうことが想像できます。それなのに60ポンドの滑車の付いた弓は、なぜ折れないのでしょうか?
リカーブはアーチャーによって引き絞られて、その反発で矢は前に飛ぶのですが、コンパウンドのベクトルは滑車によって上下に向いているので、ハンドルは縦方向に圧縮されるため、コンパウンド棒のようなハンドルになるのです。そのため、コンパウンドはリカーブのように前方に飛び出す反動はなく、手の中に納まります。

そして、近年のコンパウンドボウを見ていると、Vバーではなく片側だけのサイドバーをエクステンションロッドは使わず、非常に重くセッティングしています。言葉を変えれば、「手の中重心」にセッティングされているのです。そのため発射時、弓は傾くことなく、手の中に真っ直ぐ残ります。
コンパウンドはリリーサーという機械的発射装置を含め、すべてが「機械」なのです。

それに対してリカーブは人間が使い、人間が射つ「道具」です。リカーブボウは発射時に前方に飛び出すことを前提に、重心はピボットポイントより前方に置かれ、どんな射ち方をしても、弓は前に倒れるように、方向性を出してセッティングされています。どんなミスをしても、弓は的に向かってくれるというわけです。
この弓が前に倒れる方向性は、アーチャーの感覚に言い換えれば、弓の「飛び出し感」です。ところが的中精度を求める時、もう一つ大事な感覚があります。「安定感」です。安定感は飛び出し感とは相反する手の中に残る感覚です。しかしこの2つの感覚は、どちらかだけでいいというものではありません。

我々のリカーブボウの弓のセッティング(スタビライザーやウエイトの配置)は、必ず弓が前に倒れるようになっています。しかし転倒するような動きはしません。アーチャーは弓が前に飛び出すように感じるはずです。その理由は、重心位置がグリップより前方にはあっても、グリップより上にはないからです。誰の弓でも、ピボットポイントから的側下方45°の範囲に、無意識に重心を置いています。

そこで「安定感」と「飛び出し感」が分かる2つの弓のセッティングがあります。1975年にダレル・ペイスが用いたVバー(Pスタイル)と、飛び出し感を重視した1977年のマッキニースタイルと呼ばれる、エクステンションロッドと水平Vバー(Mスタイル)です。

実際にはロッドの長さや重さが違うため、重心位置は異なりますが、大体この範囲に重心は配置されます。どちらのスタイルもセッティング方法によって、飛び出し感と安定感を両立させることも可能ですが、おおむねMスタイルは安定感が欠け、Pスタイルでは飛び出し感が欠如します。
例えば、Mスタイルでハンドル上部にウエイトを持ってくると、より飛び出し感が増すように思うでしょうが、弓が倒れる方向性は不安定になります。またPスタイルでVバーを極端に重くしたり、上のロッドをはずすとコンパウンドのように、弓は安定しても飛び出してはくれません。

では、どちらがいいのかですが、ここからは個々のアーチャーのシューティングスタイルやシューティングイメージの世界になります。しかしこのことは非常に重要な問題です。
例えば現在、多くのアーチャーがMスタイルのセッティングをしています。1977年以降でも、あれほど多かったPスタイルがなぜなくなったのか。それはカーボンアローやマッチ形式の試合の登場が原因しています。多くのアーチャーは早く射つことや思い切って射つことが好結果につながると考え、前重心の弓の飛び出すイメージを選んできました。しっかり正確に狙うより、早くクリッカーを鳴らし、早く射とうというのです。
ところが近年、再びPスタイルや上側のロッドやエクステンションバーを使わないセッティングが登場しだしています。

道具やルールがひと段落して、早く射つことによる好結果だけでなく、高得点が必要になりだしたのです。それには、「飛び出し感」だけでは正確性に欠けるため、より精度の高いエイミングやシューティングのために、「安定感」に重点を置きだしたのです。より正確にエイミングし、真っ直ぐに弓を押し出そうというのです。

ただし、注意しなければならないのは、「安定感」も「飛び出し感」も、どちらかだけでいいというものではありません。リカーブボウにとっては、どちらも必要で重要です。アーチャーが何を求めるか、それが自分のアーチェリーのスタイルやイメージに合っているのかで、重点を置くバランスが変化するのです

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亀井 孝のアーチェリーノート 貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。 きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。