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タブとカントピンチのルーツ?

「タブ」(tab)のことを考える時、いつも「ドリーン・ウィルバー」が思い浮かびます。1972年ミュンへンオリンピックゴールドメダリスト、女子として初めて1200点台の世界記録、全米選手権優勝、、、数え上げたらきりがないのですが、これらはすべてタブの時代のできごとなのに、彼女だけは「グローブ」を使い、これらの栄冠を手に入れているのです。タブがグローブに勝る証ではないことを、見せてくれています。

なぜ世の中は1960年代に入り、「グローブ」を初心者教室の道具、「タブ」は競技者用と使い分けるようになったのでしょうか? 最大の理由はタブ表面の摩擦係数がグローブの鹿革の表面よりはるかに小さく、滑りやすく、雨にも強かったからでしょう。しかし、グローブには長所があります。リリースでは滑りが遅くても、アンカー時にはしっかりとストリングを毎回同じ位置に掛け、エイミング時も変化のない安定したフックを実現してくれます。これが初心者にグローブを使わせる最大のメリットであり、タブを使わせない理由です。

アーチャーはリリース時のストリングの滑りやすさと、そこから生まれるストリング開放の安定を第一に求めます。そのため、タブの表面には最初、「ハラ子」(unborn calf)や「カーフヘアー」(calf-hair)と呼ばれる毛の生えた革が多く使われていました。滑りが良く、雨でもそれは変わりませんでした。ところが欠点があります。表面の毛が結構早くで抜けてしまうのです。
そこでアーチャーは、滑りと安定の両立を求めて、今の「コードバン」(cordovan)を見つけました。コードバンは馬の尻の部分の革で、滑りと耐久性を併せ持っています。多分、他の皮革や「合成皮革」で、コードバンの性能を超えるものはないでしょう。

カーフヘアーとコードバン

もうひとつ、グローブとタブには違いがあります。タブには、人差し指と中指の間に挟む「カントピンチ」(kantpinch)や「フィンガースペーサー」と呼ぶパーツが付いています。というか、今のアーチャーはカントピンチが必ずタブとセットになっていると思い込んでいます
1990年代カーボンアローと韓国の選手が台頭するまで、カントピンチはグローブと同じようにほぼ100%初心者用の道具でした。競技者はタブを使っても、カントピンチを使うことはほとんどありませんでした。ところが、カントピンチだけがカーボンアローという「軽い」矢の登場で、競技者に使われるようになったのです。カーボンアローはアルミアローより圧倒的に軽いため、簡単にシャフトを指で跳ね上げてしまうのです。

ところで、今皆さんが使っているタブのルーツを知っていますか?
今のタブはすべて1960年代後半にウィルソンブラザースが作った、Black Widowの「Wilson Tab」が原型になっています。

Wilson Tab

表革が合成皮革で裏皮がフェルト生地という特徴がありましたが、形状はここから始まりました。途中、プレート(皮革)の形が変わり、1970年代には金属製のアンカーパットが取り付けられ、その後樹脂のプレートに変わりました。
そして、1980年代後半にジェイ・バーズがこれを真似て商品化したのが「Cavalier Tab」で、現在のタブはすべてこれをコピーしたものです。

Cavalier Tab
Jay Barrs

金属製プレート、アンカーパット、ネジ止めと、プレートの形は違っても、今あなたが使っているタブとほとんど同じはずです。
しかしこのタブにも原型があります。1970年代後半にダレル・ペイスをはじめとするトップアーチャーが、ウィルソンタブを真似て「自作タブ」を作り、使い始めました。この時新しく使われたのが「金属製プレート」と「ネジ止め式」です。金属製プレートになった理由は「アンカーパット」を取り付ける必然からでした。アルミアローをより長く引くために、当時サイドアンカーが流行りました。当然アンカーがサイドに来れば、人差し指が顎骨にかぶさります。それを避けるためにタブの内側に出っ張りをつけたのです。

Darrell Pace

このように、近年大差のない市販のタブですが、メーカーも独自性を出そうと最近では「ピンキーレスト」などと呼ぶ、小指を掛けるフックが付いたものまで出してきました。
しかし、上の写真を見てください。ジェイ・バーズもダレル・ペイスもアンカーパットは使っても、カントピンチは使っていません。そしてもっと大事なことは、トップアーチャーは必ず小指を首に触らせているのです。それによってアンカーの正確さと安定が得られます。決して小指はタブの上で休むものではありません。

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亀井 孝のアーチェリーノート 貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。 きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。