NASAで言われた『宇宙飛行士はオワコン、エンジニアになれ』。SFC受験に7回挑んだ西田翔平が、今『名前』という課題に人生を賭ける理由
今回は、総合政策学部3年の、西田 翔平(にしだ しょうへい)、通称まっくす。
葉山生まれ、ノルウェー・アメリカ育ち。未踏イノベータでありながら、現在は宇宙スタートアップの社長室でインターン中。そして何より、SFCに合格するために計7回も受験をしたという、とんでもない執念の持ち主です。
なぜそこまでSFCにこだわったのか? そして今、彼が人生を賭けて解こうとしている「ある課題」とは?
竹細工とスクラッチ、ものづくりの原体験

「厳密には生まれは川崎だけど、心は葉山」と語るまっくすさん。彼のエンジニアとしての原点は、意外にもアナログとデジタルの両極端な体験にありました。
一つは、葉山の自然の中で培った竹細工。
祖父の家の裏にある竹林から竹を切り出し、自分で研いだ包丁で削って箸や水筒を作る。「作る楽しさ」を肌で感じた幼少期でした。
もう一つは、小学3年生から6年生まで過ごしたノルウェーでの体験。

インターナショナルスクールでは、小4の時点で授業に「Scratch(プログラミング)」が導入されていました。さらにお父様からiMacをもらい、「壊してもいいから触ってみろ」という環境。
家ではゲーム禁止だったんです。
マイクラも買ってもらえなかった。だから、自分でパソコンのファイル構造をいじったり、体験版をハックしたりして遊んでいました。
あの頃の『制限の中でなんとかする』経験が、今のエンジニアとしての検索力(ググり力)に繋がっています。

時には、映画『アイアンマン』に憧れてAIアシスタント「J.A.R.V.I.S.(ジャービス)」をWindowsで再現しようと試みたことも。
「ないなら作る」という精神は、この頃から既に始まっていたのです。
NASAで言われた「エンジニアを目指せ」
日本に帰国後、公立中学でのカルチャーショック(「男女別ルールへの違和感」を日本国憲法を印刷して先生に抗議したというエピソードも)を経て、中2の時に渡ったのはアメリカ・フロリダ。
そこは、銃乱射事件やドラッグが身近にあるリアルなアメリカ社会でした。

しかし、ここで彼は運命的な出会いを果たします。学校の選択授業で「ロボティクス」に没頭し、ロボコンで入賞。その流れで参加したNASA(ケネディ宇宙センター)のサマーキャンプでのことです。
当時、宇宙飛行士に憧れていた彼に対し、火星ロケットを作っていたエンジニアはこう言いました。
『宇宙飛行士はやめとけ、これからはロボットの時代だ』って言われたんです。
世の中にはサイエンティスト、エンジニア、テクニシャンの3種類がいる。
社会に変革を起こせるのはエンジニアだと。
そこで明確に、エンジニアを目指そうと心に決めました。

実力主義のアメリカで、言葉の壁を超えてプログラミングとロボットで自分の居場所を勝ち取った経験は、彼の大きな自信となりました。
「7回受験」の末にたどり着いたSFC
アメリカから帰国後、「日本の教育を受けて受験に勝つ」と決意したまっくすさん。
猛勉強の末、IB(国際バカロレア)認定校の高校へ進学。そこは男子が全校生徒の5%しかいない元女子校という特殊な環境でしたが、ここで彼は水を得た魚のように活動します。

文化祭のパンフレットをアプリ化し、全校生徒+教職員の9割にあたる1000人にダウンロードされる大ヒットを記録。
高校生ながらNTT子会社でiOSエンジニアとして働き、起業家育成プログラムにも参加。出場したビジコンでは経済産業大臣賞も受賞しました。
まさに順風満帆に見えますが、大学受験では大きな壁にぶつかりました。
SFCに行きたかった。でも、AO入試で2回落ちて、一般入試もダメだった。
現役では行けず、法政大学に進学しました。

法政大学在学中も未踏事業に採択されるなど実績を積み上げながらも、「SFCへの執念」は消えませんでした。
法政大学在学中に仮面浪人を決意。SFC受験は、通算でなんと7回。
合格画面を見たときは信じられなくて、飛び跳ねました(笑)。
入学して3年生になった今でも、キャンパス内を歩くたびに『夢の中にいるみたいだ』と思います。
宇宙よりも解くべき課題。「名前を覚えられない」
念願のSFCに入学後、彼は迷走します。
「推しの鼓動をiPhoneのバイブレーションで感じるアプリ」でスタンフォードのプログラムに参加したり、日テレやリクルートのインターンに参加したり。

しかし、何でも作れる技術があるからこそ、「自分が本当に人生をかけて解くべき課題(イシュー)は何なのか」が分からなくなってしまったのです。
転機となったのは、SFCの安宅和人教授の授業での言葉でした。
色々なことを試すのは犬の道。
一つの、人生を懸けられる課題を見つけて、その解き方を磨け。
自分にしか解決できないインパクトのでかい課題をやれ。
自分にしか解けない、人類にとってインパクトのある課題とは何か。
考え抜いた末に行き着いたのは、「人の名前が覚えられない」という自身の切実な悩みでした。
外交官の父の影響で、人と話すのは大好きなんです。
でも、名前が覚えられない。
SFCですれ違っても、名前が出てこないから声をかけられない。それが本当に辛い。

現在、彼は宇宙スタートアップの社長室でインターンをし、衛星打ち上げに関わる仕事をしています。
「宇宙」は仕事として面白い。しかし、彼が「人生を懸ける」と決めたのは「名前」の課題解決です。
宇宙は僕がいなくても誰かがやる。でも、『名前を覚えられない』という課題に本気で取り組んでいる人はまだいない。
AR(拡張現実)が普及する未来、これは必ずキラーアプリになるはずです。
地元・葉山で、地元の人と外から来た人を繋ぎたい。そのための障壁となっている「名前」の課題を、テクノロジーで解決する。それが今の彼のミッションです。
どんな人とKamoTalkしたい?
最後に、まっくすさんに聞いてみました。
誰でもいいと言えば誰でもいいんですけど……平たく言うと、『自負できる人』ですね。
世の中には、命を燃やしている人がいます。ただ燃えているだけじゃなくて、自分で自分にガソリンをぶっかけて、燃やしにいっている人。
そんな風に、自分の人生や課題に対してガソリンを注いでいる人と、ぜひ話してみたいです。
特に、『名前を覚える』という僕の課題に共感して、一緒に人生賭けてくれるエンジニアがいたら、最高ですね(笑)。
もし、あなたが「命を燃やしている」と感じるなら、あるいは「名前が覚えられない」という課題に共感するなら、ぜひキャンパスでまっくすさんに声をかけてみてください。(※名前を忘れられていても、懲りずに自己紹介してあげてくださいね!)
編集後記

まっくすとは同じ武田研に所属していて、SFCではレアなSwiftが書けるエンジニア!技術的な苦労や楽しさを共有できる、本当に頼もしい友人です!
そして今回話を聞きながら、彼の取り組む「名前記憶」と、僕の「KamoTalk」は、すごく相性がいいなと確信しました。 KamoTalkは「相手の内面を知って繋がる」ためのプロジェクトですが、その最初の一歩には必ず「名前」があります。「顔はわかるけど名前が出てこないから話しかけられない……」という見えない壁をまっくすが技術で壊してくれれば、僕が目指す「誰もが気軽に話せる世界」にまた一歩近づくはずです。
7回の受験を経てSFCに辿り着いたその執念、そして「宇宙よりも名前」という独自の視点。まさに自分で自分にガソリンを注いで走る彼と、これからエンジニアとして、そして友人として、一緒にSFCを面白くする「企み」をしていけたらと思っています。
まっくす、これからよろしく!
(杉山丈太郎)
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