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事実と真実 ~同じ景色、異なる想い~【ビジネスコラム】

仕事の依頼

例えば、上司が部下に、ある仕事を依頼したとします。
上司は「部下を信頼しているから任せた」と考えています。
一方、部下は「無理な要求を押しつけられた」と感じています。

「上司が部下に仕事を依頼した」という「事実」は一つですが、そこに込められた意味は同じではありません。
上司にとっては信頼の表れでも、部下にとっては負担の押しつけと感じてしまうこともあるのです。

今回は、事実と真実について話したいと思います。

事実と真実

「事実」とは、実際に起こった事象や、現実に存在する事柄のことです。
「本当にあったこと」であり「客観的なできごと」を意味します。

これに対し「真実」という言葉には、二つの捉え方があります。
一つは、事実と同じく、嘘や偽りのない唯一の本当のこととする考え方です。
もう一つは、人の立場や価値観によって異なる捉え方が存在するとする考え方です。

本コラムでは、後者の「本人にとっての真実」という意味で扱います。
つまり、客観的な事実に対して、その人が抱く認識や感情、価値観など、本人が感じ、信じていることを指します。

事実 (fact)
 ・誰が見ても確認できる客観的な出来事
 ・データで検証できるもの

真実 (truth)
 ・その事実を本人がどう捉えているか
 ・経験、価値観、立場によって変わるもの

同じ事実であっても、人によって受け止め方が大きく異なる場合があります。
特に、人種、宗教、文化、生活習慣など、価値観が深く関わる問題では、同じ事実を見ても、異なる認識や価値観、つまり本人にとっての真実が存在することになります。
このような問題では、客観的な事実(データやエビデンス)だけでは、人が納得できないことがあるのです。

UI / UX (ユーザーインタフェース / ユーザー体験)

エンジニア的な視点から言うと、システムやアプリケーションを開発する際、「仕様上は正しい」「データ上は問題ない」と言われても、それだけユーザーが納得するとは限りません。
特にUI / UXは、客観的な仕様だけでは評価できません。利用者がどう感じるかという主観にも大きく左右されます。
何ができれば良いかだけでなく、どのような画面なら直感的に理解しやすいか、どのような操作ならストレスなく使えるか、といったことも重要になります。
つまり、システムを作る側は「事実」だけでなく、「ユーザーにとっての真実」を理解する必要があるのです。

人間を相手にするなら、その人にとっての真実も理解する必要があります。
「合理的であれば相手は納得する」とは限らないのです。

ハンバーガーの新商品

ただし、「感情を優先しよう」という話をしたいわけではありません。
ユーザーの不満を聞いたからといって、必ずしも仕様変更すべきとは限らないのです。

あるハンバーガーショップで新商品のアンケートを取ったところ、「健康的なメニューが欲しい」という声が多く集まりました。
しかし、実際の販売データを見ると、売れているのは高カロリーでボリュームのある商品でした。

「健康的なものを食べたい」という消費者の想いも、その人にとっての真実です。一方で、「実際に何が選ばれているか」というデータも事実です。
大切なのは、どちらか一方を否定することではなく、それぞれが示している意味を理解した上で、何が最善なのかを判断することです。

事実と真実は対立するものではなく、一つの出来事を理解するための二つの視点なのです。

より良い判断へ

私たちは問題が起きると「何が事実なのか」を調べようとします。それはもちろん大切なことです。
しかし、人と仕事をする以上「相手にとって何が真実なのか」を理解しようとする姿勢も同じくらい重要です。

上司は「信頼しているから任せた」と考えて仕事を依頼しました。しかし、部下は「無理な要求を押しつけられた」と感じていました。
どちらも本人にとっては真実です。その人の立場や経験によって、同じ景色でも抱く想いは変わるのです。

事実だけでは、人は納得しません。

真実だけを見ていては、正しい判断はできません。

だからこそ、一つの事実だけで判断せず、それぞれの真実にも目を向ける姿勢が、より良い判断につながるのです。


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