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Impulse buy

An impulse buy、衝動買いのことである。ちょっと前に車を買った。というか、買うことになった。車などというものはホイホイ買うものではない。常識である。別に新しいものが欲しかったわけでも、特別欲しいタイプがあったわけでもなく、オイルチェンジと車検に行ったら、夫アルゴが『車、トレードしよ!』と前振りも、脈絡も何もなく言い出したためである。

でたよ!!でたよ!今年、2回目。半年ぶりに出場です!!!」と私は心の中で叫び、顔に出ないようにしつつ、めちゃくちゃげんなりしていた。

アルゴは一度、思いつくとこだわる。欲しいと思えば、すぐ手に入れる。我慢を知らぬ人なのである。たとえ、私の説得が成功して「わかった。我慢する」とか「そうだよね、今は必要ないよね」そう言っても、すぐに「やっぱりさぁ…」とか言い出すか、私には何も言わずに勝手に買ってくる。説得したりする時間が無駄なのである。聞きやしないのだ。

大体の場合において、私も本人もすっかり忘れているけど、この人、双極性障害・躁鬱だって診断されているのだ。

​『躁状態では、気分が高ぶって誰かれかまわず話しかけたり、まったく眠らずに動き回ったりと、活動的になります。ギャンブルに全財産をつぎ込んだり、高額のローンを組んで買い物をしたり、上司と大ゲンカして辞表を叩きつけたりするような社会的信用や財産、職を失ったりする激しい状態になることもあります。』

あ~ん、これじゃん。めっちゃこれじゃん。若い頃はお金もなく、ローンを組むような信用性もなかったが、大学を出て自分で商売をしたりしていた時期あたりからしでかし始めた。大体、半年周期でしでかしてくる。

躁状態では、自分は何でもできると思ったり、ほとんど眠らなくても平気だったり、一晩中しゃべり続けたりします。
また時には周囲が驚くような高額な買い物を簡単にしてしまったり、口論になって暴言を吐いてしまったりすることもあります。

典型オブ典型。これ、まんま、アルゴ。全部当てはまる。寝てる時でもしゃべってるもの。寝言とかではなく、ハキハキしてるレベルで。因みに、彼はRapid Cycle Bipolar と言って、躁と鬱のサイクルが早いんである。双極性障害の感情の揺れは、ジェットコースターのような、とよく言われるけれど、アルゴの場合は富士急ハイランドにでもある「ものっそい」ジェットコースター、「超ものっそい」ジェットコースターレベルなのである。

私は大学院で心理学を専攻していたし、臨床のクラスも取っていたので、そんなことは理論としてはわかっているのだが。実際に一緒に生活していくなかで、これらの感情の揺れに巻き込まれるのは結構、というか、かなりしんどいのである。いささかの慣れはあるものの、むき出しの感情やこんなわけのわからん衝動行動をいきなり、全力投球されたら受け止める側の私だって傷ついたり、落ち込んだりするわけで。仕方のないことと納得するようにはしているけれど。

で、アルゴの華麗なる衝動買い履歴。

最初のでかい買い物は、ものすごく赤い、彗星のシャア(ガンダム)ばりに赤いベンツ。中古だしね?いいじゃん?見た瞬間に欲しくなったの。ものすごくなんというか、成金というか悪目立ちというか。「何コレ?スカーフェイスかな?(映画スカーフェイス)」色の具合が1980年の裏社会、マフィアでのし上がるあの映画のゴッテゴテで露悪的なアレであった。真っ赤のベンツは真っ白のレザーシートだったので私は真顔でアルゴの趣味を疑った。

その次は、シビックSIなる高出力化されたターボエンジンや専用装備などを装着したモデルのシビックを買いに行った。買いにいったというのは、大都会までである。当時、出たばかりで生産数の少なかったこのレース系の車。どうしてもこれが欲しいと泣いた(文字通り)ので4時間かけて買いに行った。最悪だった。

そもそも、車のレースとかする人でもなければ、メカニックというわけでもない。やたらうるさい車で、しかもマニュアル車であるため私は触ることすらできない。今でもなんでこんな車が欲しかったのか私には謎だが、どうしても欲しいと泣き続ける(文字通り)ので下世話な中古ベンツを売って、買い替えた。

だが、この車はその1か月後、盗まれた挙句、(盗んだ犯人が)真夜中にどこかの家に追突し家を半壊させるという事件が起こった。最悪の最悪であった。その最悪の車だが、盗まれた後、また同じものが欲しいと泣いたので、再度、今度は大都会よりももっと遠いよその州にまで出向いて買うことになった。

そして、GSX1300Rハヤブサ。アホみたいにでっかく、とにかく速いバイク。日本円にすると200万円くらいすると知って、私は夜中に寝ているアルゴの首を絞めてやりたかった。

件のシビックにしろ、このバイクにしろ、アルゴはスピードに身を任せてレースのようなことをしていた。鬱の時期で希死念慮がひどくの強い時期だったので、死にに行くためにスピードに身を任せているのだろうなぁってそんな風に思っていた。衝動的に危険行為に身を晒す、ってのも双極性障害の特性みたいなものだし。私はこの人が死んでしまうのではないかと車で出かける度、バイクで出かける度に何度も何度も眠れない夜を過ごした。

ちなみに希死念慮とは、自殺願望と同義ともされるが、疾病や人間関係などの解決しがたい問題から逃れるために死を選択しようとする状態を「自殺願望」、具体的な理由はないが漠然と死を願う状態を「希死念慮」と使い分けることがある。

さらに、ロレックスのなんちゃら限定のやつ。音楽の機材も阿呆のように買っていた。ビートマシーンだとか、ものっそい高価なマイクとか。言っておくが、うちは貧乏である。びっくりするほどに!(いばることでもないが)ぎりぎり日々の生活を保つ感じで、有り余る財があるわけではない。

あと、家。そう、家もほぼ、ほぼ、衝動買いみたいなもんだった。ああ、そだ!愛犬、りんご🍎とまめも同じ経緯(詳しくはこちら)も。改めてこうして書き出してみるとひどい!本当にひどい!

家以外は、ローンを組むのも、毎月の支払いをするのもアルゴゆえ、私はやりたいようにやらせていた。つきあってられんのである。君が幸せならいいよ……そんな域に達するのである。

基本的に我が家の家計は完全折半なので、自営業の時のアルゴの収入とか私は全然、知らない。住宅ローンだとか月々の支払の分をもらうだけであった。ちなみに現在は、過去の衝動買いを反省したらしく、給料日に全額、私の口座へと移し、私が管理している。それでもいまだにやってくるのである、このクソ衝動買い周期。

前回の衝動買いは、半年前。『院生活が始まったので、完全無敵スペックのパソコンが欲しい』という馬鹿みたいな理由で(今持ってるApple Proでよかろうが!と500回くらいは言った)ぐだぐだ、ぐだぐだ言い出して、もう勝手にしなよと私がムキムキしながらそう言うと、カーブ型になっているでかいモニター、何かしらんけど異様にピカピカ光るゲーミングコンピューター、すごい高そうなパソコンチェア、アクセサリー諸々。欲しいと思った瞬間には、アルゴの脳内ではイコール買う、ということなので、一応の抵抗はしてみるけど、大体が時間と労力の無駄に終わるのだ。

は?!なんでゲーミング?学校用なのでは?!私は怒りのあまり、鼻血まで出たが、アルゴはしゃーしゃーと「いやでもゲームしたくなるじゃん?」「いいじゃん。俺が払うんだから」と言い出し、喧嘩になりそうだったので私は、深呼吸しながら、う~さ~(Woosa)う~さ~(Woosa)と、唱えることになった(注:映画BADBOYSにて、マーティン・ローレンスがキレそうになったりする時に、耳たぶつかんで、う~さ~~って言って落ち着いて!と言われるのである)

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というわけなので、パソコン事件から半年。そろそろ何か言い出す頃だとは思っていたので覚悟はしていたのだが、それが車だったのである。

「あのさぁ、今の車だってまだ5年くらいで大した走行距離、いってないからね?今日は車検とオイルチェンジにきただけ。他に予定もあんのよ。わかる?聞いてる?」

説得し始めた私を完全スルーで、まるで磁石に吸い付けられるようにフラフラと新車の並べられている駐車場に行く始末。ちなみに屋内ではなく、屋外駐車場にある車は「今日!もう、今日!契約終わったら、これ!乗って帰るんだよね!」という車なのである。ちなみにアメリカの車検は、25ドルくらいで終わる(お値段は州によりけり)上に、日本の車検のように厳しくないので、大体なんでも通ってしまう。ゆえに、日本では考えられないようなおんぼろの車が走っていたりもする。

で。我が家にやってきたよ、新車。その日のうちに全部、手続きを済ませ帰宅は新車だった……

私は運転がド下手なので通勤や日々の買い物くらいにしか使わない。渋々というか、アルゴの勢い(躁状態)に巻き込まれてしでかしたでかいお買い物ではあったけど、新車は素敵なのでまぁ、いっか、ということにしようと思う(そして、私のこの『まぁ、いっか』という態度がアルゴのわがままを付けあがらせるのだ、とおば達に叱られるのである)

ちなみにアルゴが選んだのはSUVで、「よりSUVらしさ」を強調したグレード「トレイルスポーツ」の設定。つまりは山だの川だのオフロードもじゃんじゃんイケるぜ!というような車なのだけど、山に行く予定もなければ、川を走る予定もない。『キャンプ行けるじゃん!車で寝れるじゃん!』とワクワクしていたアルゴであるが、インドア派の我々なのでキャンプに行く予定も当然、ないのである。



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